作家の田中慎弥氏の 芥川賞受賞後初のエッセイ集。といっても、受賞前に様々な新聞や雑誌で発表していたのを単行本化したもの。
田中氏は、同賞受賞時のユニークなコメントで、作品以外の部分で話題になったが、同賞に何度も候補になったこと自体、その実力を証明している。
たしかに文章の「密度」は高い(内容は別にして)。原稿用紙のマス目に鉛筆で1字書き込むのに30分はかけてる・・みたいな文章
この本で、
私は書く以外に仕事をしておらず、する気もない。
書くことを書いた作品によってしか責任を取れない
それができないとなれば、生きてゆく資格がない。
他の仕事をする気がないので
水準が下がれば、冗談抜きで
小説ではなく遺書を書くハメになる
死にたくなければ
一流の小説を書くしかない
そしてそれは 私にとって
死ぬほど難しい行為なのだ
と言っている。
自分には、小説を書く以外に 生きるすべがない。そう思えるのは、それにふさわしいだけの「田中ワールド」を持っているとの自負があるのだ思う。というか、そう覚悟を決めざるを得ないところに、あえて自らを置いているというか・・。でもそれって、本当は、どの仕事でも言えるはずのことなんだけどね。
妙に芸能人化した「作家」が氾濫する昨今、この上もなく作家らしい作家だと思う。受賞後は周囲の環境も激変するんだろうが、『これからもそうだ』を貫いてほしいものです。