振り向くと女性が立っていた。はじめてであった時とおなじ服装だった。
「ごめんなさい。ほんとうにごめんなさい。でも、怖かったの。ほんとうに怖かったの。」
ヒロムには女性がおびえる小動物のように見えた。
「昨日も、おとといも、その前の日も、あなたが・・・・・、私も、・・・・でも怖かった。私、あなたの姿が見える場所まで来たの。でも、あなたに見られるところにはいけなかった。怖かった。ケビンを離して、あなたがケビンを撫でてくれなかったら、と思ったら、怖くてケビンをきつく抱きしめていました。振り向いて、走っていました。
昨日も来て下さった。雨の中で、ずっと・・・・・あなたが見えて、あなたに気付かれない場所で、そこの繁みで・・・・私も待っていました。あなたが私に気付いてくれることを・・・・・、でもね。今日ね。いけないと思ったの。ほんとうに勇気を出さなくてはいけないと思ったの。だから、だから・・・・・・。あなたはケビンを撫でてくれた。あなたは来てくれた。私は、私は・・・・・。」
そう言うと女性はフラフラ揺れて、しゃがみこんでしまった。ヒロムはケビンを手放し、女性のところに駆け寄った。
「どうしました。」
「すこし、めまいが・・・・。」
ヒロムは女性を抱きかかえ、女性の家に向かった。ケビンは二人についてきた。
「ケビンは夫にも慣れていないのよ。そのケビンが・・・・、手を離したら、あなたのところに駆け出すわ。もし・・・・もし、あなたがケビンを撫でてくださらなかったら・・・・・。」
女性は震えていた。
「でも、でも、あなたは撫でてくれた。ケビンを、ケビンを。」
「しゃべらないほうが・・・・。」
「ごめんなさい。」
ヒロムは女性が女性の家に向かっていることについて何も言わないのが不思議だった。
女性の身体は華奢だった。ヒトミとは違っていた。ヒトミはもともと、肉感的な身体だったが、金をかけ、トレーナーとエッステシャンに磨かれた身体は出ることころが出て、しまるところがしまり、力強い美しさを身につけていた。その力強さは、かつてのヒトミとは違う人格も生み出したようだった。手の中の女性は柔らかかった。
「もう、もうだいじょうぶです。」
「お家までお送りします。」
「ほんとに、ほんとに、」
というだけで身体には力は入らず、ヒロムに身を任せていた。玄関に着くと、パンツのポケットに手を入れ、ヒロムに鍵を渡した。
「ごめんなさい。ほんとうにごめんなさい。でも、怖かったの。ほんとうに怖かったの。」
ヒロムには女性がおびえる小動物のように見えた。
「昨日も、おとといも、その前の日も、あなたが・・・・・、私も、・・・・でも怖かった。私、あなたの姿が見える場所まで来たの。でも、あなたに見られるところにはいけなかった。怖かった。ケビンを離して、あなたがケビンを撫でてくれなかったら、と思ったら、怖くてケビンをきつく抱きしめていました。振り向いて、走っていました。
昨日も来て下さった。雨の中で、ずっと・・・・・あなたが見えて、あなたに気付かれない場所で、そこの繁みで・・・・私も待っていました。あなたが私に気付いてくれることを・・・・・、でもね。今日ね。いけないと思ったの。ほんとうに勇気を出さなくてはいけないと思ったの。だから、だから・・・・・・。あなたはケビンを撫でてくれた。あなたは来てくれた。私は、私は・・・・・。」
そう言うと女性はフラフラ揺れて、しゃがみこんでしまった。ヒロムはケビンを手放し、女性のところに駆け寄った。
「どうしました。」
「すこし、めまいが・・・・。」
ヒロムは女性を抱きかかえ、女性の家に向かった。ケビンは二人についてきた。
「ケビンは夫にも慣れていないのよ。そのケビンが・・・・、手を離したら、あなたのところに駆け出すわ。もし・・・・もし、あなたがケビンを撫でてくださらなかったら・・・・・。」
女性は震えていた。
「でも、でも、あなたは撫でてくれた。ケビンを、ケビンを。」
「しゃべらないほうが・・・・。」
「ごめんなさい。」
ヒロムは女性が女性の家に向かっていることについて何も言わないのが不思議だった。
女性の身体は華奢だった。ヒトミとは違っていた。ヒトミはもともと、肉感的な身体だったが、金をかけ、トレーナーとエッステシャンに磨かれた身体は出ることころが出て、しまるところがしまり、力強い美しさを身につけていた。その力強さは、かつてのヒトミとは違う人格も生み出したようだった。手の中の女性は柔らかかった。
「もう、もうだいじょうぶです。」
「お家までお送りします。」
「ほんとに、ほんとに、」
というだけで身体には力は入らず、ヒロムに身を任せていた。玄関に着くと、パンツのポケットに手を入れ、ヒロムに鍵を渡した。