象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

バベッジは暗号の上に卵を産む〜暗号の仕組み”その5”

2024年09月07日 14時06分22秒 | 数学のお話
 前回「その4」はRSA暗号の仕組みと起源について詳しく述べましたが、今回は少し寄り道して、エニグマやRSA暗号以前の暗号について紹介します。 まずは暗号の前に、数表と計算機のお話からです。 4000年前の古代エジプトに始まる三角法の歴史は、三角関数表作成と共に発展した。 古代ギリシャのプトレマイオス(83-168)、15世紀ドイツの天文学者レギオモンタヌス(1436-1476)、16世紀オースト . . . 本文を読む

カードマジックと素数時計の謎〜暗号の仕組み”その4”

2024年09月05日 16時14分51秒 | 数学のお話
 前回「その3」では、RSA暗号の秘密の鍵である2つの素数pとqからなるN(=pq)時間の時計計算機について、まず説明しました。  一方で、RSAアルゴリズムの起源となる「フェルマーの小定理」はオイラーが一般化した事で、「オイラーの定理」とも呼ばれます。 その後1977年に、RSA暗号の発見者の1人であるリヴェスト(R•L•Rivest)が、時計計算機を使ってRSA暗号を完成さ . . . 本文を読む

数字と統計は平気でウソを付く〜エビデンスやリテラシーという言葉に騙されない為に

2024年09月03日 08時38分24秒 | 数学のお話
 一時、大衆の間でもワイドショーを賑わす専門家被れが過ぎたせいか、リテラシーやエビデンスというウケのいい言葉が大いに流行った。更に、この2つの言葉を知らないと、SNSではバカにされるかの様な錯覚に陥ったもんだ。 まず、エビデンスとは元々医療用語で根拠との意味があったそうだが、今では、証拠や根拠や裏付けの意味で、SNS上を独り歩きする陰謀説やデマを検証する時に大きな武器となる。 一方で、リテラシーだ . . . 本文を読む

サルでも解る?バーゼル問題”その9”〜オイラーの和公式について

2024年08月31日 04時24分19秒 | 数学のお話
 前回「その8」では、バーゼル問題の完璧な証明となる”オイラー・マクローリン法”の詳細を述べましたが、少し判りにくかったでしょうか。 1734年の最初の証明は、非常に画期的なものでしたが幾つかの問題があった。が、その10年後にオイラーは、無限解析を用いて完璧な証明を与えます。 この完全なる”バーゼル問題”の証明(1745、1748)では、オイラーはま . . . 本文を読む

高木貞治とその時代”その5”〜クンマーとノルムと理想数

2024年08月24日 14時01分49秒 | 数学のお話
 イデアルの概念に慣れ親しんで頂く為に、前回「その4」の最後の補足とその続きを見ていきますが、イデアル類群Cₖ={Pₖ,P₀Pₖ}の計算をK=Q(√(−5))と言う2次体の例を使って説明しました。 更にその応用として、xとyの2元2次形式のx²+5y²で表す事のできる素数pについては、以下の「ラグランジュの定理」が有名でした。 つまり、”素数 . . . 本文を読む

高木貞治とその時代”その4”(更新)〜類体論とイデアル類群と、そのノルム

2024年08月14日 08時22分53秒 | 数学のお話
 偶然にも、この記事のタイトルと同じ著書「高木貞治とその時代:西欧近代の数学と日本」(高瀬正仁著、2014)があった。同じ様なタイトルに、「アーベルとその時代」(Aストーブハウグ著、2003)があるが、前者は”時代”をEraと書き、後者はTimesとしている。 例えば、Eraは元号などで区切られる時代を指し、江戸時代以前はPeriodを使ったという。一方、Timesは一般的 . . . 本文を読む

高木貞治とその時代”その3”(更新)〜クンマーからデデキント、そしてクロネッカーからヒルベルトへ

2024年08月06日 11時30分43秒 | 数学のお話
 前回「その2」では、初回の補足を兼ねたおさらいと、類体論の元となる代数的整数論の歴史(前半)を述べました。 そこでまずは、代数的整数論の基本の基について簡単に復習します。 代数的整数αを有理数体Qに添加して得られる体をQ(α)で表すが、代数的整数とは通常の整数(有理整数)とは異なり、有理整数を係数とする代数方程式で最高次の項の係数が1となる様な方程式の解となる複素数(実数 . . . 本文を読む

暑さ指数と湿球温度〜数学は熱中症から人類を救えるのか

2024年08月03日 04時48分10秒 | 数学のお話
 連日、バカみたいに暑い。こんなに暑いのは何時以来だろう?熱中症という言葉がこれほど賑わったのも何時以来だろうか? 我が柳川市も、熱中症警戒アラートの対象になってしまった。因みに、柳川市近郊の久留米市では”暑さ指数”が33度を超え、熱中症の”危険”地域になった。 暑さ指数(WBGT=湿球黒球温度)とは、人間の熱バランスに影響の大きい”気温 . . . 本文を読む

高木貞治とその時代”その2”〜ガウスの代数的整数論と、その歴史

2024年08月01日 06時09分45秒 | 数学のお話
 前回「その1」では、高木貞治氏の研究の中核をなす”類体論”と、その基本定理である「高木の存在定理」について述べました。 自分では、結構掘り下げて書いたつもりですが、見れば見る程に穴がある。寄せられたコメントにも、それらを補足するものが目立つ。 そこで、前回のおさらいを兼ねて、「数の概念」と「近世数学史談」(共に高木貞治著)の解説を参考にし、類体論とその「存在定理」を振り返 . . . 本文を読む

高木貞治とその時代”その1”〜”クロネッカーの夢”と類体論

2024年07月20日 04時50分10秒 | 数学のお話
 Gooブログの「今日のテーマ」に”今週の予定は”ってのがあるが、仕方なく”類体論について纏めたい”と偉そうに書いた。だが実は、既に大半を書き上げていたから、何もやる予定はなかったのだ。 つまり、仕事以外では何の予定も入ってない。そもそも仕事自体は予定ではないし、嫌々ながら仕方なくやってるだけの事である。もっと言えば、暇潰しにもならない。 一方で、ブ . . . 本文を読む