”本書はおそらくリンカーン弁護士のシリーズ中ベストの作品となるだろう。ベストでなくても最も印象深い作品であるのは間違いない”との評価に思わず手が伸びた。
バリー・ランセット著の「ジャパンタウン」でレイモンド・チャンドラー以来の探偵ミステリーの虜になってしまったが、マイクル・コナリーという探偵小説の巨匠が存在する事を知った。
彼に関しては、ネット上でも数多くの評価がなされてるから詳細は譲るとして、「潔白の証明」(2020)はリンカーン弁護士シリーズの最高作との呼び名も高い。だが、”巨匠”とか”最高傑作”とかの期待を極端に抱くと、意外にも肩透かしを食らうかもしれない。
因みに、法廷で”有罪か?そうでないか?”は証明されるが、無罪である事の証明はなされない。つまり、(有罪ではない)潔白の証明がなされるだけである。
ただ、いきなりケチをつけるのも気が引けるが、前半は法律用語のうんちくを延々と聞かされてるみたいでウンザリもするし、読むのを諦めようとも思った。しかし、後半の1/4程の所から展開が一気に急加速し、濃密なドロドロ劇になる辺りは、流石に法廷サスペンスの巨匠ではある。
ストーリーテラーの真骨頂
全体を通じて振り返ればだが、上下巻の長編にする必要がどこにあったのだろう?と思わなくもない。勿論、法廷モノだから法律の専門知識や法廷周りの独特の仕組みや空気を理解する必要はある。
「潔白の証明」という展開的にはシンプルであっただけに、前半を大胆に縮約し、後半の1/4を長めに掘り下げても良かった。つまり、384×2=768頁の半分でも十分に表現できたと思う。少なくとも、長編にする必要はなかった様にも思える。
事実、私がコナリーの世界に埋没できたのは最後の1/4だけである。だた、それら不満を持ってしても、リンカーン弁護士シリーズの醍醐味は十二分に享受できたように思える。
法律用語のオンパレードで、嫌気が刺しそうな時もあったが、これこそがリーガル・サスペンスの王道を突っ走るストーリーテラーの真骨頂と言えるのかもしれない。
理屈っぽいという点では私のブログも偉そうな事は言えないが、こんな濃密すぎる小難しいサスペンス巨編を次々に送り出すマイクル・コナリーの文才には頭が下がる。
展開そのものは、タイトル通りに至ってシンプルである。このリンカーン弁護士シリーズの第6弾では、主人公のミッキー・ハラー刑事弁護士が殺人容疑で逮捕され、法外な保釈金を要求された事から、収監された身でありながら自ら弁護人となり、自身の潔白を証明しようとする。
ハラーを真犯人と信じて疑わない検察側により不利な証拠が次々と提示され、看守の嫌がらせや収監者からの殺戮的な驚異に晒される。
こうした絶体絶命のピンチに、リンカーン弁護士チームが一丸となり、(異常なまでにハラーの殺害容疑を追求する)検察側に立ち向かっていく様は圧巻だ。更に、リアルで臨場感ある法廷劇が終盤まで延々と繰り広げられる。
裁判は素手の殴り合いみたいなものだ。
どちらも相手を潰す為には何でも利用する。検察はハラーをブタ箱に入れ、殆ど動けなくしてから彼の論証を弱め、時間を稼ぎ、公平さを欠いたインチキめいた闘いに勝利しようとする。
つまり、正義を掛け金にして検察が行う”インチキ博打”に対し、ハラーはどう立ち向かうのか?弁護士側が主張する真実の追求は認められるのか?
一方で、検察側も立証責任がある。大陪審が認めた起訴理由を遥かに超えるレベルでの有罪の証明を裏付ける責任がある。故に、弁護側が背負う危機と同じ重さを背負う。
再び勾留され、獄中内で何者かに襲撃されるハラーだが、ハードボイルド小説みたいにチンピラを蹴散らす訳でもない。また、ハラーを支える弁護側は民主主義の公平さと真実の追求の重要性を語り、”全てを疑う事こそが真実の追求だ”と主張する言葉には、異様なまでの説得力を陪審員らに植え付ける。
検察側はハラー有罪のシナリオを延々とまくし立てるも、挽回の為のストーリーテラーは尽く裏目に出て、陪審員らを次第に退屈にさせていく・・・
最後に
裁判はギャンブルと同じで、検察が胴元でゲームのカードを配り、陪審員らはあらゆる可能性を考えてカードを切る。つまり、富と力の及ぶ範囲だけなら検察は圧倒的な力を持つが、裁判所では陪審員の判断が大きな影響力を及ぼすのだ。
結局、弁護士側が掴んでいた、FBIがLA市警から引き継ぎ、極秘で捜査を進めていた一連の詐欺事件に関するフィルムが大きな決め手となり、ハラーの潔白が証明される。
つまり、陪審員のいない所で潔白は証明されたが、無実が証明された訳でもない。だが、FBIの陰謀と無実の罪で投獄されたハラーの孤独で不条理な戦いは終わりを告げる。
警察や法廷のやり方を正確に把握し、司法制度の複雑さや矛盾に精通してるコナリーだからこそ、濃密で深遠なる物語が描けるのだが、それを持ってしても著者の知識の豊富さと深さには頭が下がる。
それに加え、時計の様に正確な文章と推進力溢れるプロットを組み合わせたストーリーテラーは、リーガルサスペンスの極致を渡る。
弁護士転じて被告になった事で、リンカーン弁護士ことミッキー・ハラーを通じて、監獄内に屯する囚人らの絶望を見事にあぶり出し、公判前の証拠開示プロセスに焦点を当てる。
強力な引力と魅力が我ら読者を包み込むコナリーの手腕は、何度読み返しても病みつきになりそうだ。
詳細な展開や感想は数多くの書評やレヴューで紹介されてるから、そちらの方に譲るが、ハラー弁護士が窮地に立たされる動機が長編モノにしては意外と単純で、マンネリ化した連作系に見られる”出来ムラ”の様なものを感じてしまったのも事実だ。
更に”話から逃げた感が残る”との声もあるが、なる程だとも思った。
勿論、ボッシュ・シリーズの大ファンなら、こうした些細な事は気にもならない筈だが、そういう後味の微妙さと展開のくどさが不思議と心に響く長編傑作ミステリーでもある。
山本選手の大型契約も
後から色々とイチャモンが出てきますね。
故障条項に
2段階契約に
2度のオプトアウト
転んだサンご指摘のように
全ては球団に有利に出来てるんですよ。
3年目までは低く抑えてることから
山本も3年でポシャると踏んでるんでしょうか
という事で
今年もよろしくお願いします。
それはともかく、旧年中は色々とお世話になりました。今年もよろしくお願いします。
言った通りですよね。
もう、球団の言いなり的契約でした。
でも、こうした球団側に絶対有利な契約は、1994年のストライキを期に起きたんでしょうか。
判ってるだけでも、これだけの不条理な契約ですから、実態はもっと酷いでしょうか。
ドジャースも無理して大型契約を結ぶよりも早々と球団経営から足を洗った方がずっと未来は明るいと思うんですが
今年はどーなるんでしょうか。
ミッキーの元妻を
あのネーヴキャンベルが演じてるのよね
もうそれだけで
でもリンカーンの存在が薄くなってそー
まあ〜いいかぁ
アマプラではボッシュシリーズだけなので少し残念ですね。
ボッシュ(全シーズン7)の方もかなり充実してます。シーズン2の途中を見てるんですが、ボッシュ演じるタイタスウェリヴァーが実にハマってます。
ただ、元妻や娘役がパッとしないのが残念ですが・・・
昨年同様、今年も宜しくです。