象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

普通に面白い欧州サスペンス〜「ザチーム、ヨーロッパ大捜査線」(2018)

2024年08月21日 11時06分37秒 | 映画&ドラマ

 ”シリアの至宝”とも言われ、権力を象徴する芸術品“イシュタルの庭”を巡り、ヨーロッパを震撼させる殺人事件が発生する。デンマーク警察を筆頭に、ドイツ警察、ベルギー情報機関らによる合同捜査チームが、数十億円の価値がある芸術品を狙う国際テロ組織と難民襲撃殺人事件の真相を追う!
 ”国境を越えた捜査チームの活躍を大スケールで描く緊迫の・・・”とあるが、結論から言えば、チームワークはバラバラで、凡ミスの連続である。
 更に、チームの主力格の男女2人(写真)が捜査中に性行為に溺れるなど、不可解な点も多い。最初からこの2人には期待しなかったが、(俳優とは言え)外観と質感が大切なのを今更ながら思い知らされる。が、この2人以外のキャストは質的には揃ってた様にも思えたのだが・・
 一方、ヨーロッパ全土を”大スケールで描く”とは言っても、日本で言えば隣接する県境を跨ぐレベルで、クライム・アクションと言うより、北欧系ヒューマン・サスペンスに近い。

 それでも見入ってしまったのは、そんな中にも昨今のヨーロッパの複雑なリアルが凝縮されてたからだ。それに、不法移民らの見苦しくも微妙な描き方も気になった。
 事実、シリア移民らの信心深くも身勝手な行動が捜査を撹乱し、混乱させる。やがて彼女らを庇い救う者たちをも犠牲に巻き込み、事件をよりややこしくする。
 お陰で、ストレスやイライラを募るシーンも多々あったが、これこそが日頃から欧州の人々が、シリアを始めとした不法移民らに抱いてる複雑な感情であろう。
 他方、このドラマに登場する不法移民らの姿に見る居心地の悪さには、欧州白人が有色系移民に対して抱く苦悩と鬱憤が見え隠れする。そういう点では、重苦しくとも欧州の現実を忠実に描いたドラマではあった。

 確かに、欧州白人と茶色を基調とするシリア系移民のコントラストは、見苦しさ以外の何物でもない。アメリカ白人が奴隷船で連れてこられた黒人をあからさまに差別する程でもないが、中東諸国から次々と押し寄せてくる不法移民に対する明確な苛立たしさが、日本人の私にまで伝わってくる。
 事実、不法移民であるマルー親子のロンドン(英)の大邸宅での再会には、大きな違和感と嫌味を感じた。
 確かに、我々日本人には不法移民に処遇する欧州白人の真意は分からないし、不法移民の苦悩と屈辱を理解するのも不可能だ。
 このドラマには地味でありながらも、日常のミステリアスな現実に加え、そうした微妙な民族間同士の違和感が充満されている。

 最後は、合同捜査班が4枚のフリーズを殺人の容疑者から取り戻し、シリア不法移民のマルーが大英博物館に“イシュタルの庭”を寄贈した事で、問題はめでたく解決したかに思えた。
 だが、元々“イシュタルの庭”はシリアの至宝であり、英国の所有物ではない。ただ、シリアに所蔵しとけば、血みどろの争いが繰り返されるだけで、犠牲者は更に増える一方だ。
 勿論、ある1つの財宝が民族間の争いを生み、数多くの犠牲者を出すというのは、歴史上で見ても不思議な事ではない。

 ここら辺の解釈は微妙だが、たかが金の延べ板如きに命を狙われ、運命を翻弄される不法移民の母娘と、それに群がる資本家の欧州白人や中東テロらの殺し屋の対立と欲望と駆け引きも嫌味に映る。更に言えば、信仰も度が過ぎると吐き気がする。
 それでも、刑事モノにありがちな警察内部の所轄争いや派遣争いが皆無なのは、有り難く感じた。展開もシンプルでフラグも登場人物も少なく、見てて損はない秀作のサスペンスでもある。


女優はヤッパリ見た目〜「殺人の輪廻」(2016)

 女優の見た目に惹かれ思わず見入ってしまった。特に、殺人鬼の娘(キジョン)で、美しく成長した養女チョンヒョンを演じるキム・ユジョンの美貌は圧巻で、私は彼女の演技に最後まで翻弄される事となる。
 多分この映画は、子役出身の美少女キム・ユジョンから逆算して作られた作品に思えた。が故に、脚本的には最初から無理があった。
 事実、観客動員は5万人ほどで興行的には惨敗である。それでも、ノーギャラで出演したとされるサンウォン刑事役のソン・ドンイルの心意気は等身大に伝わってきたし、婚約者を殺された教師チョルン役のソン・ホジュンの肉薄した演技は見ごたえがあった。

 結婚を控えたチョルンは、婚約者とドライブ中にケンカをし、彼女を車から降ろしてしまう。その後、冷静になった彼は道を引き返して探し回るが、何とか再会した時の彼女は殺人鬼に襲われ既に死体となっていた。犯人は逮捕され、悲しみに暮れるチョルンは姿を消す―。 
 事件から10年後。刑事のサンウォンは、身寄りの無い殺人犯の娘キジョンを養子(チョンヒョン)として育てる。平和な日常が続く中、娘が通う学校に新しい教師が赴任した。その男こそ婚約者を殺された男チョルンだった。そして、犯人の死刑執行日が決まる中、再び事件が動き出す・・・

 実は、サンウォンが殺人犯の娘を幼女にしたのには訳があった。というのも犯人を逮捕する際に乱闘となり、興奮し我を忘れたサンウォンは間違って母親を撃ち殺してしまったのだ。
 勿論、幼い娘は母を殺したのがサンウォンである事を、目の前で目撃していたから、忘れる筈もない。10年後、15歳になったキジョンの前に新任教師のチョルンが現れるが、彼は彼女が婚約者を暴行殺害した犯人の娘である事を知っていた。
 婚約者を放置し、彼女が死に至る原因を作った後悔と娘を殺したいとの殺意で、チョルンの心は大きく揺れ動く。一方で、サンウォンは男が娘に殺意を抱いてるのを見抜く。
 こうして、刑事・殺人犯の娘・殺人犯に婚約者を殺された男という3つの運命が交差しながら動き始める。

 最後は、チョルンがサンウォンに密かに恨みを抱くキジョンに、椅子に縛り付けた”義理の父”を殺すよう仕向けるが、娘は”私も誰も悪くない。でも、こういうやり方は間違っている。私が死ねばそれで済む事だわ”と、持ってた銃を自身の頭に突きつける。
 アテが外れ、後悔の淵に沈むチョルンは、キジョンの自殺を防ごうと止めに入るが、銃弾はチョルンの胸を貫く。
 結局、サンウォンは娘の母を故殺した罪で服役し、その数年後に出所する際には、すっかり大人になったキジョンが迎えに来ていた。
 特に、エンディングで見せるキム・ユジョンの魅惑的で官能的な背中には、これまでの鬱積を重ねた悲しくも不条理な過去を浄化し、自らを開放する強烈な幻影を発してたようにも思えた。

 その一方で、殺された1人娘の後を追う様に自殺した老夫婦と、婚約者の後を追う様に銃弾に倒れたチョルンだが、婚約者を殺された教師と婚約者を殺した男を父に持つ教え子の、運命のコントラストもユニークで鮮やかに映る。
 評価と評判は低いが、見てて損はない作品である。 

 


2 コメント

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普通の美少女 (tomas)
2024-08-28 04:35:49
少しだけご無沙汰してました。
殺人の輪廻>>>見ましたよ。
キムユジョンは個性に乏しい美少女ですが
こんなキレイな子も韓国にはいるんですね。
男優陣も結構期待入ってましたけど
逆に空回りしちゃって>>

最後は何だかな〰でしたが
美少女だけがひとり目立っていた映画でした。
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tomasさん (象が転んだ)
2024-08-28 13:03:33
ご無沙汰でもないんですが(笑)
この映画はキム・ユジョンの為の脚色で作られた様に思えました。
作品の出来としては悪くはないんですが、最初と最後が余計だったと思います。
婚約者を殺された教師チョルン(ソン・ホジュン)の物語を中心に据えてでも良かったと思う。
韓国映画にしては珍しく、中途にミーハーっぽく映りましたが、それでも映画としての体を成していたのは、さすが映画大国韓国のなせる技ですよね。
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