王さん､そこまで言うか(追記)〜山川を獲得した不可解なその理由

　2023年は近藤健介外野手やオスナ投手ら､大補強を行いながらも3位に終わった。
　昨年12月には山川穂高を獲得。昨年5月に強制性交等の疑いで書類送検され､8月には不起訴処分となった山川の獲得には”色々と批判をいただきましたけど”と背筋を伸ばしながら､球団としての思いを語った。
　”野球界で生きていく力を持っている人が､その世界で生きられないような世界を作ってはいけないと思う。かなり社会的な制裁も受け､本人も反省している。挽回するチャンスを与えていくべきだと思います。チームとしても左バッターばかりですから､右のホームラン王を取っている山川くんが入ってくれる。チャンスがあるなら､それを手にするのは当然の事だと思う”
　王会長は､昨年の鏡開きの場で”今年は10ゲームぐらい離してゴールするんだというぐらいの強い気持ちを持って戦いたいと､そんなふうに思っています”と､チームに対して大号令をかけていた(FullCount)。

王さん､お前もか？

　聞いてて”ヘドが出る”とはこの事だ。
　これじゃ､囚人を戦場に送り込むプーチンと同じ様な理屈に思えなくもない。
　読売V9時代の勝利至上主義の王さんなら言い出し兼ねない言葉かもしれないが､今やコンプライアンス全盛の時代にである。
　しかし､王さんのこの一連の発言は､一見だが合法なようにも思える。

　事実､性加害者の責任として､①雇用契約上の責任②民事的責任③刑事的責任がある。
　①は雇用上の責任で､プロ野球選手の場合は球団をクビになるかどうか？である。
　②は金銭的な責任追及で(精神的損害に対する)慰謝料などの損害賠償を請求する責任追及。③は法律上の責任で､強制性交等罪､強制わいせつ罪､名誉棄損罪､侮辱罪などの法定刑が課される(労働問題弁護士ガイドより)。
　山川のケースでは､検察側が不起訴処分とした為に③は一応は免れている。②に関しても(不起訴処分にする為に)相当額の金銭が渡ってる事は確かであろう。①に関しては､元所属の西武球団側が事件の詳細を知った時に無期限出場停止処分を下した。

　つまり､ルール的には何ら問題はない。
　しかし､事はそんなに単純であろうか。
　まず､性加害という犯罪については何ら解決はしていない。推測に過ぎないが､大金を積んで被害者の口(告訴)を封じ込んでるだけだろうか。ま､それだけの女といえばそれまでだが・・・
　事実､”悪い事は悪い”と､五ノ井さんが言い続けた事で､元自衛官3人の有罪が確定した。山川だってその例外ではなかった筈だ。
　王さんは”かなり社会的制裁を受けた”と山川を庇うが､真の意味で制裁を受けるのはこれからだろう。”当然の事”との言葉も引っ掛かるが､山川の行為は”起訴されて当然”とも言えるのではないか。
　更に､”野球の世界で生きられない世界を作ってはいけない”と語るが､そういう世界を作ったのは紛れもなく山川本人である。
　”本人は反省している”とも弁明するが､入団会見での山川の親指を立てたサムポーズ(写真)を見れば､反省とは程遠いのは明らかだろう。
　一方で､”10ゲームぐらい離して・・”とも語るが､そんなペナントレースを誰が楽しめるのだろう？勝負事は戦乱の世と同じで､競り合うから盛り上がるのだ。

最後に

　SNS上でも色々と異論･反論が飛び出してるが､あまりピンとこなかった。
　コメント返しでも書いたが､4年で12億と”安く買い叩けた”事が大きかったのだろうか。もし例の件がなければ､ソフバン史上最高額の可能性もあった訳だから・・
　更に球団側が発言すれば､大きな騒ぎになったであろうし､世界の王さんが言えば､国民も渋々納得するだろうと考えたのだろうか？
　ともあれ､”苦肉の発言”であった事は間違いない。

　ハリー･ボッシュは被害者の声を弁明する為に(バッジがあろうがなかろうが)真実を追求する。しかし､その被害者に真実を告白する覚悟がなければ､全ては無に終わる。やがて､第二の第三の山川を生み､性加害は当り前の如く頻発し､今回の王さんみたいな苦し紛れの発言が拡散する。　
　勿論､王さんも悪気で言った訳でもないのだろう。だが､現役時代の王さんなら”悪い事は悪い”と襟を正すべく言った筈だ。
　そんな人格者の王さんだったから､我ら日本人はみな王さんを応援し､”世界の王”と持てはやした。
　しかし今やその王さんも､球団側の事情があるとは言え､性加害者を暗に養護する様になった。全ては目先の勝利の為であると思われても仕方がない。
　戦争は人類とその時代に虚無と喪失をもたらす。だが､目先の勝利や数字に拘る人間ってのも､これまた虚しいもんである。