4/18以来、約1ヶ月ぶりの”鏡張りの部屋”です。正直どういう展開にしようか迷ってます。先ず最初に誰を犠牲にするか?当初は若いカミーユ嬢を最初の犠牲者にと考えたんですが。伊藤野枝の悲劇と重なるみたいでね。彼女に関しては、”伊藤野枝”ブログを参考にです。
前回の”その19”では、敵と見なしてた若い女カミーユが再訪し、自ら過去を全て白状します。心が揺れ動く男ダーレムは、密かに信じてた中年女のサビオレを、今度は疑う様になる。一体誰が黒幕なのか?その真相とは?
ダーレムは自分の過去を白状する番だと思った。
実は俺にも、アンタと同じ様に
複雑な過去がある、嫌な過去があるんだ
誰かに打ち分けようと思ってたが
中々信用できる奴に恵まれなくて
この時まで黙ってたんだ。
もうアンタに話す番だな
カミーユ、君は真っ直ぐな人間だ
でも権力に刃向かっては、絶対にダメだ
俺みたいに殺されそうになるからな
俺はアンタの旦那と違って
運が良かっただけさ
あれは死んでもおかしくない様な事故だった
アンタも事故の現場を見たろう?
誰が見ても即死だろうよ
俺もアンタと同じ、一度は死んだ人間さ
その時、話を遮る様にカミーユが立ち上がる。
あら、もうこんな時間だわ
ああ、今日はそこまでにしてね
早番だから、もう仕事に行かなくちゃ
私がここにいる事がバレたら
このホテルの皆が、私を疑うわ
そうなったら、あの中年女に殺されるかもね
メキシコのカルテルと
何処かで繋がってるという噂だから
とにかくあの中年女には気を許しちゃダメ
命さえ持っていかれるわ
ではまたね、
今日の様に、早朝にお邪魔するわ
カミーユは軽く唇を重ね、何事もなかったかの様にフロントに降りていく。
男は女を抱きたかった。再びあの快楽を味わいたかった。ここで別れたら一生会えない感じがした。
男は時計を見た。朝の7時だ。カミーユの声が聞きたくなった。朝食を持ってくる様にフロントに電話すると、カミーユではなく何処かで聞いた事のある男の声だった。
あ、ダーレムさんですね
私です、マーロウです
実は少し、厄介な事が起きまして
ダーレムは危険を察した。もしかしたらカミーユが?まさかカミーユが?
探偵サン!
カミーユに何かあったんですか?
彼女は無実ですよ!
彼女はなんにも悪くない!
疑うなら私を疑って下さい!
マーロウは少し戸惑った。タバコを吹かす余裕もなかった。
ダーレムさん、少し落ち着いて下さい
何もカミーユ嬢を疑ってる訳ではないんです
彼女ではなく、支配人が刺されたんです
あいにく、命には別状はないんですが
ただ、ヤバい事に、刺された推定時刻が
貴方が支配人さんと会ってた
その時間帯とちょうど一致するんです
今から部屋に伺います
それと朝食はまだですよね
食事も持っていきますから、
部屋で待ってて下さい
とにかく今は落ち着いて!
男は少し安堵した。支配人には悪いが、カミーユじゃなかった事にほっと胸を撫で下ろした。今朝のキスの感触がまだ残ってたのだ。
マーロウはすぐにやってきた。部屋が若い女の匂いで充填してる事に咄嗟に気付いたが、敢えて気を遣った。
すみません、眠たい所を起こしてしまって
早速ですが、ダーレムさん、
貴方は昨晩遅く、支配人の部屋に行きましたね
そこで、支配人に何か変りはなかったですか?
何か何時もと違う様な仕草とか?
何か引っかかる様な言葉とか?
男は少し腹がたった。
探偵サン、はっきりと仰って下さい
私だってバカじゃない
私を疑ってんなら、
そう言えばいいじゃないですか
そういう回りくどい言い方は、
マーロウさんらしくない!
それに、カミーユの事も勘付いてますよね
はっきり言えばいいじゃないですか
全くアナタらしくない!
確かに私は、
カミーユともサビオレとも寝ました
でもそれは一時の情欲で
こんな狭い所にずっと閉じ込められてたら
何かはけ口がないと、頭おかしくなりますよ
探偵さんだって男でしょ
依頼人が美人で情欲的だったら
関係を持ちたくもなるでしょう?
そういう噂も結構聞くんですがね
探偵は笑った。そして頭を垂れた。
すみません、少しワザと過ぎましたか?
いや、悪く思わないで下さい
最初から、貴方を疑ってる訳ではないんです
支配人を刺した人間は、大方予想はついてます
それに、さっきまで若い女と一緒にいた事も
私も長く探偵をやってます
そういった日常的な情欲を考えると
殆どキリがないんですね。
捜査の邪魔にしかならない
故に、顧客の個人的感情は全く無視するんです
勿論、私だって男です。
顧客と性的関係を結ぶ事だってあります
2つの生の肉体が絡み合ってる時は
愛情すら抱いてしまいます。
でも仕事は別です。
関係を持った女でも、犯罪者であれば
平気で警察に突き出します
すると女は決まった様に言いますね
”貴方は私の事愛したんじゃなかったの”って
だから私も言うんですよ
”アンタだって楽しんだだろ”って
結局、情欲も個人的感情も
捜査に関しては、全く当てにはならない
悪く思ったのなら、誤ります
男はたじろいだ。マーロウの冷徹さと洞察に恐れをなした。
こっちこそスミマセンでした
アナタの事を何にも知らないで
好き勝手なこと言ってしまいました
でも誰が支配人を刺したんです?
支配人は刺される様な人じゃない
あの人はホントいい人だ
私とカミーユの関係を責めなかった
むしろ彼女の事を庇ったんです
そんな人が何故、刺されたんです?
それに別段、変わったような所は
殆ど見受けられませんでしたが
誰が犯人なんですか?
マーロウは首を左右に降る。そしてゆっくりとタバコを蒸し始めた。
一応、顧客の守秘義務がありますので、
誰が犯人かは、申し上げられません
ダーレムさんも一応は
勘付いてられる様ですが、
こればかりは推測に過ぎません
推測で行動する事ほど、愚かな事はないのです
それはダーレムさん!
貴方が一番お判りになってる事でしょう
でも支配人に、
何ら変わった事がなかったとすれば
推測はまんざら外れではない、
という事でしょうね。
今日は朝早くから、
色々と迷惑をお掛けしました
閉じ込められたホテルでは
こういった物騒な事が起きるもんです
戸締まりはしっかりとして
何事にも気を許さない事ですね
では失礼します、ダーレムさん
いやローガンさんだったかな
探偵は何事もなかったかの様に、その場を去っていった。男はマーロウの凄みをここに来て理解した。
”彼はやはりタダもんじゃない”
やっぱり俺とカミーユとの関係を、
最初から見抜いてたんだ
そして、中年女のサビオレの事も、
俺やカミーユを疑うふりをして、
サビオレをマークしてたんだ
そして、痺れを切らしたサビオレが、
とうとう行為に走った
あの探偵は、その瞬間を待ってたんだ
犯行が未遂に終わる事も、想定内だったんだ
ああ何という図抜けた観察眼なんだ
俺にマーロウの様な洞察力があれば、
今回の事件には巻き込まれなかった筈だ
家族を危険な目に遭わせる事もなかったし、
この狭い部屋の中に閉じ込められる事も、
命を狙われ続ける事もなかった
思いを巡らす内に、ダーレムは深い眠りについた。カミーユとマーロウが味方になったと思うと、少し安堵した気分になった。お陰で男は安らかな眠りに就いた。
ようこそ、
我がホテルカリフォルニアへ
🎵ここは素敵な場所でしょ🎵
🎵ここは素敵な人達でしょ🎵
そろそろと思ってたんですが、とうとう支配人がヤラれましたか。でも大事には至らなかった
んですよね。確かに殺せばいいってもんでもない。
でもお陰でマーロウが再びお出ましということで。やはり彼がいないと始まらない。
で、やはり犯人は中年女ですか?少し可哀想な気もしますが。自然とそういう展開になりますか。
ホテル内の登場人物が少ないんで、少し迷ったんですが。ここで誰かを殺すと、マーロウと主人公の男を除いて2人だけになる。
実はこれもネタバレになりますが、もう一人ホテルに呼び込もうと。女が3人になれば男を含め4角関係になりますかね。
ここまで言えば誰かは想像は付きますが。多分予定でして、どうなるかは気分次第です。
全く気まぐれなショートショートですが、これからも宜しくです。
ひょっとしてレオニーの事ですか。ああ言っちゃった。
でも登場人物は多い方が盛り上がる。それに老支配人は殺してほしくない。
丁度、”鏡張りの部屋”の続編を書いてた所でした。ただレオニーが参戦する事で、tomasさん言う様に、4角関係が出来上がるので、多少はオモロイかなと。
一応、予定ですが、変わるかもです。