象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

「ライス回顧録」に見る、コンドリーザ•ライスの通信簿(2/7更新)〜苦悩と後悔と無力の間で揺れ動いた激動の2920日

2019年05月31日 03時52分28秒 | 読書

 ライス女史に関しては、優等生というイメージしかない。全く進展しないイラク戦争について問われた時、”現場なんて知る筈もないわ。私達はエアコンのついた所で仕事してんだから”と切り替えした。
 つまり、”何をやるかではなく、どう思われるか”が、ライスの全てだった。
 結局、彼女は何をやる事もなく、どう思われる事もなく、ホワイトハウスを去った。
 
以下、”ライス新国務長官の無能”からの抜粋です。


ライス国務長官の無能?

 ”究極のイエスマン、相手が何を言うかの前に、それを察して答えを用意する”
 彼女を最初見た時に、どことなくR•S•マクナマラ(アメリカの実業家で元世界銀行総裁)風な印象を持ったんです。日本で言えば、辻政信や東條英機の女版でしょうか。
 官僚としてペーパー業務を申しつければ、完璧な仕事をこなすが、それだけの人物。少なくとも彼女は、この政権で何かをしたい訳でも、何かの解決能力を持っている訳でもない。

 政権内では、彼女は”Unsticker”(剥がし屋)として親しまれてるとの事。実際に彼女が何を剥がしてきたか?つまり、テロの脅威を大統領の周囲から剥がして来ただけという事らしい。彼女は元々ソヴィエト問題の専門家だから、この手のテロ問題に関する見識は持っちゃいない。
 彼女が無能と思うのは、この4年間、アメリカが外交や安全保障政策で実のある成果が出ていないからだ。フセインを駆逐し、カダフィが恭順の意を示した事くらいだ。お陰で中東は混迷を深め、北朝鮮は手詰まり、チェチェンは泥沼、そしてロシアはますます腐敗と汚職が酷くなる。
 しかしロシアやチェチェン問題は、ロシアの内政問題だし、北朝鮮を巡る問題は複雑で、中東情勢にしても彼女一人の責任に帰するのは気の毒だ。

 でも少なくともこの4年間、彼女の業績と呼べるものは何一つ無いし、今後の4年間もそうでしょう。期待できる理由は何もない。
 彼女はピアノが得意だそうだが。多分、楽譜を完璧に弾きこなして先生に誉めて貰うタイプなのだろう。少なくとも芸術としての音楽が彼女の頭にあるとは思えない。
 以上、大石英司の代替空港コラムからでした。2014年11月の記事でかなり旧いですが、殆ど同じ意見を持ちました。


ライスは単なる飾りだった?

 結局ライスは、ブッシュファミリーに可愛がられただけの、単なる”秀才女”という飾りに過ぎなかった。
 ブッシュ政権では、チェイニーに逆らえる人物は誰一人いなかった。結局ライスもチェイニーの影に怯え、最初の4年間(その後の4年間も)は何も出来ずに終わった。
 事実、アメリカを代表するジャーナリストの一人ボブ•ウッドワードは、著書「ブッシュの戦争」の中で、”ライスは政権内の強硬派であるチェイニーやラムズフェルドに軽く見られ、相手にされておらず、イラク戦争をはじめ重要な政策の決定において、殆ど影響力を行使できなかった”と批判してる。

 確かに、彼女の忍耐と苦渋を評価する女性も多いけど、ブッシュ親子に支えられ、単に居心地が良かったんでしょうか。でもブッシュの”ベビーシッター”としては、最高の任務を果たしたとも言えなくもない。
 アフリカ系という事で、アフリカの反米政権からは軽蔑の対象とみなされる事がある。ジンバブエの独裁政権を非難すれば、ムガベ大統領からは”白人の奴隷”と軽蔑され、また同じアメリカの黒人歌手であるハリー•ベラフォンテからも”白人に媚びる奴隷”と侮蔑された。先述のカダフィ大佐からは、”アフリカのプリンセス”と揶揄された。

 しかしその評価とは裏腹に、彼女の経歴は表向きだけは凄いものがある。大統領J•W•ブッシュの元で黒人女性初の大統領補佐官(2001)や国務長官(2004)を歴任した。政治学の博士号をもち、スタンフォード大学教授でもある。
 因みに、彼女のIQが180または200であると大騒ぎになった事がある。これは裏付けの無い風説で、ライス本人は自伝にて、6歳時に受けたIQテストが136だった事を明かしてる。何だ私よりも低いのか。見た目は頭良さそうだが、ごく普通の知能だったんですな。
 ただ政治家としての無能?な手腕に比べ、ピアノの腕前はプロ並みだったと言われる。

 ”民主主義こそ平和の礎であり、楽観と忍耐で切り開いて行く、アメリカの持つリアリズム(現実直視)が世界に繁栄をもたらす”というニュアンスのライスの発言(2008年タボス会議)には、博士ライスというよりは陳腐な詭弁屋に成り下がった感は拭えない。


”ライス回顧録”の真相と

 彼女のドキュメント本としては、「ライス回顧録 集英社」が有名で、彼女の評価もごく一部を除いて非常に高いですね。でも回顧録というより”悔後録”に近いか。
 でも私は「策謀家チェーニー」とは全く異なり、ライスは秀才ではあるが、政治家としては何も出来なかったと見る。つまり、”秀才の限界”

 事実、それに近いプロのコラムがある。
 以下、「ライス回顧録のススメ〜」から抜粋です。
 読み終えて、ライスという”優等生の限界”が透けて見えたのは収穫です。米国の大統領とか、国務長官のポストは、およそ(ライス自身の)個人の能力を超えた過酷な仕事なのかもしれない。
 マキャベリの”運”と”徳”の間に残る、政治の割り切れなさの世界に、ライスも苦しみ呻いたのだろうと。

 コンドリーザ•ライスの経歴自体は、ハーバード大教授からニクソン政権に入り、米中接近とベトナム戦争終結を果たした”冷戦外交の鑑”キッシンジャーに匹敵?する。
 しかし彼女の輝かしい軌跡と実績は、苦渋に満ちている。”9•11テロ”の惨事を防げなかった国家安全保障の元締めとして、またアフガニスタンとイラクの泥沼に苦闘した外交の元締めとして。

 「ライス回顧録」の原題「No Higher Honor(これ以上の栄誉はない)」からも、”されど”という灰色の後悔音が聞こえる。”歴史の一回性の元で下した決断が、是だったか非だったか?”自伝を執筆しながら彼女の唇を噛んでいた問いは、それ一つだったに違いない。
 絶対の規範のない政治の世界では、相対的な物差ししかない。結果が全ての政治においては、人がなし得るのは”タラレバ”しかない。
 ”ブッシュの戦争”が壮大な失敗だとしたら、どこで誰が何を誤ったのか?事ある毎に内部対立したブッシュ政権の4人〜チェイニーやラムズフェルド国防長官らネオコン派と、パウエル国務長官やライスらハト派の死闘から、それが窺える筈だ。

 ”私は国務長官として、世界の現状が課してくる制約に常に自覚的だった。「可能性の技術」を実践しようと肚を決めていた”
 これは本書の末尾にあるライスの言葉だ。19世紀ドイツの鉄血宰相ビスマルク”政治とは可能性の技術である”を踏まえている。


ライスの限界

 しかしそこに限界が見える。彼女は複雑に絡み合った難題に直面すると、数多くの可能性の中から忍耐強く、ベストの解を探しあてようとする。
 こんがらがった結び目を一刀両断にしたがる、ラムズフェルドにはこう映った。
 ”ライスは、省庁間の意見の違いを大統領に解決してもらうのは、自分の個人的落ち度になると思っていたのだろう。勝者と敗者が生まれる様な、明快な決定を強要するのを彼女は避けた”

 この予定調和は、”角の立つ問題の後回し” と辻褄がピタリと合う。しかしライスの回顧録では、口出しを嫌がるラムズフェルトの独善と狭量を批判し、責任転嫁を指弾している。
 ”ラムズフェルドとブレマー(イラク連合暫定施政当局)の関係がうまくいっていないのは、ラムズフェルドが戦後イラクの事を傍観していたからだ”と。

 2006年彼女はバグダッドを視察、深い絶望を覚えた。”大統領!私たちが今やっている事はまるで機能していません。本当に、失敗しようとしているんです”。当然チェイニーは沈黙していた。
 以上、安倍重夫氏のブログからでした。


ライスの苦渋と後悔と

 勿論、ラムズフェルドにもライスにも何らかの落ち度はあったろう。しかし、イラク戦争の実質の主導者はチェイニーである。彼は自らの計画を秘密でガチガチに固め、少しでも反発する者は徹底して排除した。勿論ライスも例外じゃない。
 つまり彼女は8年間じっと我慢するしかなかったのだ。イラク戦争が大失敗と判り、大量破壊兵器が存在しなかった事が全世界に知れ渡ると、チェーニーは沈黙し、ブッシュはグーの声も出なかった。
 最後の最後でライスは自らの本音を叫んだが、時既に遅すぎた。

 つまり、チェイニーの胸ぐらを掴み、ホワイトハウス内でのクーデターを起こす位の気概がないと、イラク戦争は止められなかったし、”問題を直面する事なく逃げた”と責められても仕方ない。しかし、”秀才上がり”の黒人女性にそれができる筈もない。”彼女の限界”とはそういう事だ。

 チェーニーはそういう事を知り抜いてて、自分に反発する人選を用心深く避けた。ブッシュもラムズフェルドもパウエルも、勿論ライスも所詮は、チェイニーの”物を言えぬ駒”に過ぎなかった。
 そんな軟禁状態に置かれたライスが、今更自叙伝を出し自分を正当化しようとする事自体無理がある。これはラムズフェルドにもブッシュにも、そしてチェイニーにも言える事だ。
 優等生のライスは、家でおとなしくピアノを引いてればよかったのだ。チェイニーが策謀した政治という無法地帯に、彼女が生きる場所はどこにもなかった。唯一存在したのは、ブッシュの横にいた時だけだったろう。


最後に

 そこで彼女は、親愛なるブッシュの耳元にため息を漏らしたろうか。
 ”何よ、あの白豚やろう!好き勝手にホワイトハウスを仕切り、イラク戦争まで仕出かしやがって!これで私たちの面目は全て丸潰れだわ。そう思わない?”

 ”しょうがないさ。この戦争はオレのアメリカの戦争じゃない。ヤツの戦争なんだ。好きにさせとこうぜ、すぐに失脚するさ。コンドリーザ!俺たちはここで温々と時間を過ごそうぜ。下手に反発したら、全て俺たちの責任にされる。最初からこの8年間のホワイトハウスは奴の手中にあったんだよ”

 そこでチェイニーの登場だ。”何二人でブツブツ言ってんだ?ジュニア!アンタら親子は湾岸戦争とイラク戦争でたんまり稼いだろう。そして、ライス嬢アンタもだ。誰のお陰で国務長官になれたと思ってる?”
 という罵声が聞こえてきそうだ。

 つまり、”No Higher Honor”(これ以上の栄誉はない)は、ひょっとしたら、策謀家チェーニーが哀れなライスに与えた、精一杯の温情いや恩情だったのかもしれない。



8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2019-05-31 06:08:43
飾りかもしれないけど、無能はどうかな?
無力というのは理解できるけど。
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Unknownサン (lemonwater2017)
2019-05-31 07:06:49
厳しい言い方をすればですが。
無能も無力も同義ですかね。

コメントどうもです。
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Unknown (Unknown)
2019-05-31 11:36:41
結局、イラク戦争をする金と口実が欲しかっただけで、
ライスも知ってて何も出来なかったんだから、無能と言われて当然でしょう。
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Unknownサン (lemonwater2017)
2019-05-31 14:51:23
ライスの言い訳も優等生にしては虚しく響くだけです。無能な叫びとはこの事ですかね。

コメントどうもです。
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飾りなのよ (HooRoo)
2019-06-01 11:45:38
ライスも所詮は飾りに過ぎなかったのよ。女性初のオルブライド国務長官も同じね。鉄の女サッチャーもぬいぐるみにすぎないわ。

女性が無法者が集まる政治の世界で生きていける筈がないわ。チェイニーに対抗するにはスターリンくらいのワルじゃないとね。

でも彼女にとっては、これ以上の栄誉はないし、これ以上の屈辱はないという事よね。可愛そうだけどこれが現実なのかな。

ではバイバイね🐭。
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飾りじゃないのよライトは? (lemonwater2017)
2019-06-01 13:49:05
Hoo嬢、お久しぶりです。

結構政治には詳しいんですね。若いのに関心感心。サッチャーもオルブライドもかなりの好戦的な女ですが、結局は飾りみたいなもんですかね。

アメリカの富は捏造した戦争がもたらすもので、ライスさんの給与もその戦争から捻出されるから、どうしようもないですね。

栄誉と屈辱の2文字がライスの政治家としての宿命だったんでしょうか。恵まれながらも可愛そうな女性です。
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格好の無能補佐官 (#114)
2020-02-07 00:55:36
ロシアの専門家を
中東問題にぶつけ
ライスの手足をもぎ取られた

元々優等生タイプだから
チェイニーらの強硬派には好都合
でも黒人女初の大統領補佐官と
聞こえはいい
9-11を仕掛けるには
格好の無能補佐官だったのよ

つまり無能も能力の1つ
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#114さん (象が転んだ)
2020-02-07 04:33:49
トランプの無罪と同様に
法の番人も上院議員もトランプ寄りが多すぎます。
チェイニーの時も周りは殆ど彼の息が吹き付けられてましたから、やり放題でした。
お陰でライスはバカブッシュの単なるベビーシッターで終わりました。

今のトランプ政権と全く変わりはないですね。アメリカも大英帝国崩壊と全く同じ道を歩んでます。
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