象が転んだ

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太平洋戦争の真実と”失敗の本質”

2023年08月13日 09時46分35秒 | 戦争・歴史ドキュメント

 ”80年前の1943年、敗北を重ね、戦力を消耗していった日本。際限なき戦争動員が市民の暮らしを一変させ、戦火から遠かった若者や子どもが巻き込まれていく。海軍はパイロット養成機関である予科練の募集を強化し、中学生ら3万人が名乗りをあげた。
 一方で、ノルマに応じ、志願を呼びかけた学校で教師や親は苦渋の決断を迫られる。秋には学徒出陣が決まり、大学生も学業半ばで戦場へ向かった。勿論、その先には過酷な運命が待っていたと言うのに・・・”

 先日放送されてた、NHKスペシャル「新ドキュメント太平洋戦争1943」(後編)のプロローグだが、これだけでも太平洋戦争が如何に常軌を逸した戦いだったかを理解できる。

 日本人は本質を見抜くのが大の苦手である。日清戦争に勝利し、日露戦争に勝利した(と錯覚した)旧日本軍は、その場の勢いに乗り、無謀にも無策なまま太平洋戦争に突入する。
 正確に言えば、日清戦争(1894~1895)は混乱し弱体化してた清政府の弱みに乗っかっただけで、とても勝利とは呼べないものであった。事実、日本軍と戦った清軍の中核をなす北洋軍は李鴻章の私兵にすぎなかった。一方、日露戦争(1904~1905)では、ロシアが渋々と休戦協定に応じたが故の結果(勝利)であり、当時の外相だった小村寿太郎の巧妙な外交がなかったら、(戦費が底をついてた)日本は延々と続く終りの見えない戦いに敗れ去っていたであろう。
 また、太平洋戦争直前のノモンハン戦争(1939)では、旧ソ連を追い込めず、逆に休戦協定と言う名の敗北を味わった。もし、日本が極東側からソ連を追い込み、西側からドイツがモスクワを攻撃してたら、ソ連は呆気なく陥落したであろうか。いや、そうする事で少なくとも、日本やヨーロッパが戦場になる事はなかった筈だ。更には、原爆投下をも防げたのではないか。

 つまり戦争の本質とは、どの国を戦場にするか。もっと言えば、どの国を仲間外れにし、悪の枢軸に吊し上げ、血祭りに上げるか。
 そういう視座で見れば、太平洋戦争の本質は”日本に原爆を投下するか否か”にあった。
 500%あり得ないタラレバだが、日本がアメリカに勝利してたとしても、最後には(自暴自棄になったアメリカに)原爆を落とされ、日本列島は丸焦げになってたであろうか。つまり、原爆投下の惨劇は、トルーマンの無能やチャーチルの策謀によるものも大きいが、戦争の本質を見誤った旧日本軍幹部の思考の欠如でもあった。
 こうした旧日本軍の極めて曖昧な作戦決定や失敗の責任を取らない体質は、今の政府や企業にもしっかりと受け継がれ、現代日本の致命的な病巣となっている。
 しかし、そういう事が判ってても多くの日本人は、権力に脅されて何も言えないメディアやジャーナリズムがそうである様に、”お上様がやった事で仕方のない事だ”と、反省する素振りすらない。
 更に、麻生副総裁の発言を思うと、今の日本の内閣府の思考も戦時と同じ様なレベルではある。全く、バカと内閣と企業幹部とビッグモータースは叩いても治らない。
 愚痴はここまでにして、太平洋戦争の真実を語りたいと思う。


太平洋戦争の悲しくも愚かな真実 

 「新ドキュメント太平洋戦争1943」の前身となる「ドキュメント太平洋戦争」(全6回)は、1992年12月から1993年8月にかけ、NHKスペシャルで放送された。このドキュメント映像では、膨大な資料の綿密なリサーチと分析を元に、日本の敗因と現代に通じる教訓を導き出している。

 簡単に概要を説明すると、第1回「大日本帝国のアキレス腱」では開戦直後の勝利で、思わぬ広大な勢力圏を手中にした日本軍だが、軍幹部は補給・輸送・海上護衛に無関心で、充分な輸送船や護衛艦艇を用意していなかった。
 勿論、国力上準備出来なかった点もあるが、明確な目的もなく漫然と戦線を拡大していった大本営の無能と、その結果として通商破壊で商船の撃沈が相次いた悲劇を描く。
 第2回「敵を知らず己を知らず」では、太平洋戦争最大の激戦地であるガダルカナル島の戦いを軸に、自らの実力と敵国の分析に積極的だったアメリカ軍と、一方で全く無関心で日露戦争と同じ用兵思想で、精神論から脱却出来なかった大日本帝国陸軍。
 両国の比較を通し、ノモンハン事件と同じ失敗を何度も繰り返し、教訓に学ぼうとしなかった大本営の傲慢さを描くと共に、現代の官僚機構や企業体質への警告としている。
 第3回「エレクトロニクスが戦を制す」では、連合艦隊が大敗し、特攻が始まる契機となったマリアナ沖海戦とサイパン攻防戦を舞台に、レーダー・ヘルキャット戦闘機・VT信管を例として、日米の用兵と兵器開発思想を比較。
 科学技術を結集し防御装備にも重きを置いたアメリカ軍に対し、精神力と正面兵力の攻撃力のみを重視し、防御や最新技術を軽視した日本軍の姿を通し、売れる商品の開発に予算や人員を集中する現代の日本企業が本当に戦争から学んでいるのかを問いかける。

 第4回「責任なき戦場」では、太平洋戦争で最も悲惨な戦いとなった”インパール作戦”における司令官・牟田口廉也と上官達との行動を軸に、無策で無謀な作戦が強行された実態と日本軍幹部の無責任体質がもたらした悲劇を描く。更に、責任の所在が曖昧な現代の日本型組織の危うさも問うた。
 第5回「踏みにじられた南の島」では、マッカーサーのフィリピン・レイテ島上陸と共に、現地住民は米軍を解放軍として歓迎し、多くの抗日ゲリラが決起。その姿を軸に、現地の風習を無視し、住民を敵に回してしまった日本軍統治の拙劣さと、他国を戦渦に巻き込む事で生じる悲劇を描くと共に、現代日本が他国へ経済進出する際の教訓を問う。
 第6回「一億玉砕への道」では、日本はソ連と日ソ中立条約を結び、連合国との仲介役として期待したが、ソ連はヤルタ会談で米英と密約を結び、中立条約を破棄して日本に宣戦布告した。その日本政府の思惑と終戦交渉の舞台裏を通し、国際感覚・現実感覚に乏しく、自らの都合でしか物事を考えない政府や軍部の姿を浮き彫りにし、日本人は太平洋戦争の悲劇を忘れ、戦争を反省したのかを問う。
 因みに、当時の佐藤駐ソ大使の日誌を紹介し、ナチスドイツの劣勢やソ連側の不穏な動き等に危険を感じ、再三にわたり報告し警告を発するも、外務省の返電は国際情勢を理解しない的外れな訓令に終始し、それを嘆く様子が描かれている。また、既に大日本帝国の外交暗号がパープル暗号により解読され、内容が連合国側に筒抜けになり、帝国政府や大本営の現実感覚に欠ける様子を”幻想”と表現する(笑えない)アメリカ側文書も紹介されている。
 日本軍幹部は、相手がアメリカではなく幻想と戦っていたのであろうか。全く悲しい限りである。

 以上、ウィキから一部抜粋しましたが、これだけでも旧日本軍の幹部が無能で無策だった事が完全に実証された事になる。そして、これら致命的な欠陥が現代の日本政府や企業幹部にもしっかりと受け継がれてる事も容易に理解できる。
 冒頭でも言った、麻生発言やビッグモータースの件でも判るように、日本人は本質を見抜けない”叩いても治らない”農耕島民の典型でもある。
 バカと言えばそれまでだが、ここまで無能だと、バカに失礼にも思えてくる。


失敗の本質

 そこで、もう一歩踏み込んで、太平洋戦争の敗北の本質を探ってみたいと思います。
 以下、「ドキュメント太平洋戦争」のトップレビューを参考にまとめます。

 当時、世界を席巻したメイドインジャパンや金余りのバブル絶頂期に積極化した海外M&A投資等に対し、欧米からの怨嗟の声が高まっていた時期。経済に自信を深め、慢心を呈し始めた国民意識に危機感を感じたNHKが、太平洋戦争の敗戦を社会学的アプローチで考察した「失敗の本質」(野中幾次郎共著、1983)を題材に、日本人が忘れかけてた”性質的弱点”が、現代社会にも受け継がれてるのでは?と問い掛けた力作である。
 まずは、兵站確保や海上物資輸送ルート維持の軽視に科学技術応用や情報戦の遅れ、更に国際政治に対する現実主義の外務省とご都合主義の軍部の見解相違からの敗戦受諾の遅れなどが敗戦の本質とも言える。
 次に、情緒的で楽観的な意思決定と合議制による曖昧な責任回避体質、そして民主制議員が干渉できない統帥権に基づく天皇直属の大本営や陸軍省・海軍省の組織設計上の過ちが敗北の本質を後押しする。
 作戦で見れば、ガダルカナルでの戦力逐次投入で3度失敗した夜間突撃作戦に、兵站破綻が判ってて止められなかったインパール作戦。更に、アウトレンジ作戦を暗号解読とレーダーで読まれて罠に陥ったマリアナ沖海戦と、本土決戦の時間稼ぎに国民を楯とした沖縄戦。
 そこには、本来の目的を忘れて戦術主義に走りやすい悲しい国民性が滲み出る。

 一方で、大東亜共栄圏の理念と南方資源確保の実利に揺れる戦略性の曖昧さは、植民地支配を糾弾し、フィリピンから追い出した筈の米国と変わらない傲慢な支配体制を敷いて知識層を弾圧し、ゲリラ蜂起を促した。このフィリピンへの弾圧の歴史は日本人なら知っておくべきだ。
 日露戦争の成功体験から生まれた大艦巨砲主義は陳腐化し、機動艦隊や潜水艦と駆逐艦による戦術で後手を踏んだが、それは現代でも“モノ作り”に拘り、IT産業で遅れをとった日本産業界にも重なる。

 また、強気一辺倒で過去の成功者の声が絶対の軍部の独走は、所有と経営の分離が進まず、既存役員による意思決定が慣習的で変化を嫌う現代の国内企業体質に重なる。
 科学と統計を無視した精神主義と敗戦を認めない終わり方の不在。国際政治への無理解と机上の空論を形容詞で修飾しただけの戦術により、最も従順で弱い立場の軍属と民間人併せて100万人以上の犠牲と国土・産業の壊滅と言う破滅を残した。
 新型コロナ渦も”民度の高い”国民性なら何とかなると言う内閣府の言い分と戦術は、無能・無策という他ない。
 そんな日本人の奥底に横たわる慢心と曖昧さ、その反省を“外圧でしか変われない”DNAと知能の低さを今は思い知るべきだろう。

 特に、第1話の「大日本帝国のアキレス腱〜太平洋・シーレーン作戦」は、 特に政治・外交・国防に携わる人たちは必見で、事実、現在も太平洋戦争当時も、日本を取り巻く地政学的な条件は何も変わっていない。
 つまり、日本は元々周囲を海に囲まれた島国であり、シーレーンの確保が不可欠である。
 次に、石油・鉄鋼・食料などの資源の自給自足ができず、外国に依存している。更に、狭い国土に1億を超える国民が暮らしている(戦争当時は約7000万)。
 以上より、日本を攻撃する側からすれば、日本本土や日本国民を武器をもって直接攻撃する必要はなく、日本のタンカーや貨物輸送船を沈めるか、海上封鎖すれば事足りる。又は、外交的に日本への燃料や資源や食料などの供給を停めてしまえば、日本は簡単に自滅する。
 この状況は、今も70年前も殆ど変わってないし、今後も変わらないだろう。

 つまり、日本という国は軍備を増強した所で、国防上ではあまり役に立たないとなる。また、シーレーンを確保する為に護衛艦を配備するにしても、例えば、中東から日本に至るまでの距離を防衛しきれるのか?
 結論として、日本の平和と安定は周辺国や利害国との円満な関係が維持できてこそ成り立つものであり、軍備増強にあるのではない。
 そういう意味でも、軍隊の保有・増強より外交の方が遥かに重要だと言える。

 つまり、国防の本質は”外交”にあると言える。
 がしかし、今の岸田政権を見てると、所詮は無能無策の集団に過ぎない事は明らかで、彼らにとって最大の防御はアメリカに依存する最大の攻撃力である。少なくとも、周辺国との調和を図る最高の外交ではない。



6 コメント

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絶望の本質 (paulkuroneko)
2023-08-14 08:39:18
それだけ勢いがあったんでしょうね。
その場の空気が、日本人の全てを変えたとも言えます。
アジアの眠れる獅子である清王朝を打ち負かし、大国ロシアにも勝利したと思い込んだ。

こうした勝利の錯覚はやがて神風という幻想に膨らみ、アメリカも恐るるに足らずと思い込んだ。そこは絶望が待ち構えてるというのに
特に陸軍幹部は条件反射的に物事を考え、脊椎反射的に行動しました。
勿論、冷静な判断を下す知識人層もいましたが、彼らも情で流されました。
情に脆い日本人の”性格的弱点”が露呈した事は不幸の本質でもありました。

データにはっきりと現れてるのに、過去の慣習や伝統を優先し、不幸は更に絶望へと変わります。
明治維新後の軍隊改革から第二次世界大戦の終戦までの約70年で培われてきた官僚制度や企業理念は、戦後80年近く経っても殆ど変わりません。
まさに、これこそが絶望の本質とも言えますね。
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paulさん (象が転んだ)
2023-08-14 11:42:58
まさに、性格的弱点ですよね。
日本人の性格的な弱さが致命傷になる。
精神的には辛抱強い民族なので、実に残念な所ですが、島国特有のお行儀の良さや人の良さも性格を曖昧に弱くしてる要因かもです。

そう言えば、私もそんな所があり、追い詰められると性格の弱さが出る。
運命を決する時や冷静な判断が必要な時ほど、”意見を合わせなければけない”とか”先輩や上司には逆らってはいけない”とか・・
また、人の上に立つ人間ほど、情けに脆いし、権力や派閥や脅しに弱い。

こればかりはどうしようもないんですかね。
コメント勉強になります。
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日本は戦争できない国 (平成エンタメ研究所)
2023-08-14 11:51:31
戦線拡大と兵站は反比例するんですよね。
戦線が延びれば延びるほど兵站は乏しくなる。
太平洋戦争の日本軍はそれをやっていました。
そして、おっしゃるとおり、精神主義と日清・日露で勝ったという幻想。

現在の日本も何をやってるんでしょうね?
食料自給率、エネルギー自給率はとんでもなく低い。
どんなにご立派な武器があっても、食料やエネルギーがなければ簡単に負けてしまいます。
原発は50基以上ありますし、年寄りばかりですし、「日本は戦争できない国」なんですよね。

この現実を為政者たちはどう考えているのでしょうね……。
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エンタメさん (象が転んだ)
2023-08-15 05:48:00
言われる通り
日本は戦争をしないと約束した国であるし、戦争できない国です。
勿論、戦争をしたら500%の確率で負けるし、万が一戦争になったとしても、戦地に向かうのは貧しくも若い国民だし、犠牲になるのも我ら民間人です。
これは今までもこれからも変わらない。

つまり、戦争をけしかける周辺国から如何に戦争を巧みに回避するかを、我々日本国民も真剣に考える必要があります。
今こそ”小さな巨人”と当時のロシア政府に畏れられた小村寿太郎の高度な交渉術を日本政府は学ぶべきですよね。

いつもコメント参考になります。
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Unknown (水仙)
2023-08-16 01:05:20
第二次世界大戦で南方で戦った戦士の大半の死が餓死だったと聞いたことがありますが、こんな残酷なことはありません。今度また戦争が起こっても、同じようなことが起きるでしょう。日本人は優秀だとよく言われますが、いったいどこが?と聞きたくなります。もっと賢くならないと日本は生き残れないと思います。
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ビコさん (象が転んだ)
2023-08-16 14:58:34
”日本人は優秀だ”というのは
に日本人だけが勝手に抱いてる思い込みで、世界中で日本人が優秀だと思ってる人は殆どいないでしょうね。
特にアジアの国々では、(敗戦の真相も暴露され)日本人は特に低く見られてるようです。

南方で戦った兵士の大半の死が餓死だった事は明確な事実で、こういう事が世界中に知られる度に、日本人は更に低く見られる。
その上、自民党はアメリカの100%傀儡政権なので余計に低く見られる。
何だか考える度にブルーになりますね。

いつもコメント頂いてありがとうです。
それと台風は大変でしたね。無事であったことは何よりです。
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