リーマンの”解析接続”も5回目で、思った以上に複雑ですね。関数等式1つ1つに固有の解析接続方法がある。
エニグマと同じですな。1つ1つのUボートに固有の暗号が用意されてる。ドイツ人らしい実直な手堅いやり方です。
さてと、”1の4”(Click)で述べたリーマンの"第二の積分表示”をそのまま用いて前回行った様に、x→0における挙動を詳しく調べ、第二の解析接続を行う事も当然出来ます。
しかしリーマンは、敢えて自ら見出した、”完備ゼータの積分表示”から第2の解析接続を始めます。
これはテータ関数の変換公式からリーマンゼータの完全対称等式を導くのですが、テータθの対称性がゼータζの完全対称性に繋がるのも興味深いです。
そこで、”1の3”(Click)にも述べた様に、”リーマンの第2の積分表示”である事にまず注目します。
リーマンの第二の積分表示
前回”1の4”の第一の解析接続では、リーマンゼータの”第二積分表示”の分子(テータ関数)の広義積分f(x)の収束性を利用したんですが。
”リーマンの第二積分表示”とは、ζ(s)=1/(π^(−s/2)*Γ(s/2))∫ₓ[0,∞]{f(x)−f(∞))/2}*x^(s/2)*dx/x、f(x)=Σₘ[−∞,∞]e^(−πm²x)でした。
因みにゼータ関数に関しては、第一の非対称型関数等式ζ(1−s)=ζ(s)2Γ(s)cos(πs/2)/(2π)ˢまでは、オイラーが見出してました(1749年)。
リーマンはこの等式の正当性の証明し、テータ関数を使い、”第2の積分表示=完備ゼータの積分表示”を独自に作り、第2の解析接続に利用したんです。リーマン予想の運命の半分がここで決まるんですが。
当時は複素関数論も解析接続もなく、オイラーの非対称型関数等式の”正確な意味づけ”は、誰も成し得なかった。
それでもオイラーは、ζ(n)とζ(1−n)の間に”日と月の双対性”を見出してたんです。お日様はζ(n)で収束、お月様はζ(1−n)で発散ですね。”4の3”(要Click)です。
しかし、リーマンの”完備ゼータの積分表示”から、完備ゼータ関数ξ(s)の完全対称等式ξ(1−s)=ξ(s)を得る事が出来る。
”1の3”でも述べましたが、完備ゼータ関数とは”完全(コンプリート)なゼータ関数”の事で、ζの上に^を載せた形で表されますが。スマホでは表示出来ないので、”ξ”という記号を使います。
リーマンの完備ゼータの積分表示
リーマンは独自に編み出した”完備ゼータの積分表示”を使い、”第2の解析接続”を始めます。
この完備ゼータの積分表示は、ξ(s)=∫ₓ[0,∞]φ(x)x^(s/2)*dx/x、(Re(s)>1)で示され、これを使って上述の完全対称等式を導き、同時に”2番目の解析接続”も行います。
但し、φ(x)=(θ(x)−1)/2とします。この第2の解析接続では、このθ関数(テータ)が肝になるんです。
θ(x)=Σₙ[−∞,∞]e^(−πn²x)、x>0。このテータ関数θ(x)は、x>0を満たす右半複素平面上で定義されるので、”重さ1/2の保型形式”と言われます。故に、”テータの変換公式”θ(x)=1+2Σₙ[1,∞]e^(−πn²x)が成立し(”1の4”イラスト参照)、φ(x)=(θ(x)−1)/2=Σₙ[1,∞]e^(−πn²x)と表せます。
リーマンはテータ関数の専門家でもあり、この第2の積分表示にて、テータの保型形式とゼータを結び付けたんです。θ(テータ)関数がなかったら、リーマンの第二の積分表示もリーマン予想もなかっただろうし、Γ(ガンマ)関数がなかったら、オイラーの第一積分表示もなかったかもです。
つまり、ゼータζにはガンマΓとテータθが絶対必須だったと言えます。
リーマン完備ゼータの創出
まず、”完備ゼータの積分表示”の変形ですが、φ(x)=Σₙ[1,∞]e^(−πn²x)を完備ゼータの積分表示ξ(s)=∫ₓ[0,∞]φ(x)x^(s/2)*dx/xに代入すると、ξ(s)=∫ₓ[0,∞]Σₙ[1,∞]e^(−πn²x)*x^(s/2)*dx/x
=∫ₓ[0,∞]Σₙ[1,∞]e^(−πn²x)*x^((s−2)/2)*dx―①と変形出来ます。
ここで、ガンマ関数Γ(s)=∫ₜ[0,∞]e⁻ᵗtˢ⁻¹dtに、
t=πn²xを代入し、s→s/2とすれば、Γ(s/2)=(πn²)^(s/2)∫ₓ[0,∞]e^(−πn²x)*x^((s−2)/2)*dx、
を得る。
①にこの式を代入すると、ξ(s)=Σₙ[1,∞](πn²)^(s/2)Γ(s/2)=π^(−s/2)Γ(s/2)Σₙ[1,∞]1/nˢ
=π^(−s/2)Γ(s/2)ζ(s)と、完備ゼータのゼータ表示式を得ます。
ここで注意ですが、sは1、0、−2n以外で、ξ(s)は解析接続可(収束)。つまり、ζ(s)の極はs=1で、Γ(s)の極は、s=0,−nでした。故に、Γ(s/2)もs=0,−2nで極になります。
因みに、π^(−s/2)Γ(s/2)を”ガンマ因子”と呼びます。つまり、ゼータ関数がガンマ関数と結び付いた歴史的瞬間です。
次に、ξ(s)=∫ₓ[0,∞]φ(x)x^(s/2)*dx/x
=∫ₓ[0,∞]φ(x)x^(s/2)*dx/x+∫ₓ[0,1]φ(x)x^(s/2)*dx/xと完備ゼータξ(s)を2つの積分に分けます。
ここで、後半の積分をx=1/tとおくと、
∫ₓ[0,1]φ(x)x^(s/2)*dx/xとなり、∫ₜ[∞,1]φ(1/t)t^(−t/2)*(−dt/t)=∫ₓ[1,∞]φ(1/x)x^(−x/2)*dx/x、と変形。
これは、tをxに戻し、−∫[x=∞→1]=∫[x=1→∞]より明らかですね。
故に、ξ(s)=∫ₓ[1,∞]φ(x)x^(s/2)*dx/x+∫ₓ[1,∞]φ(1/x)x^(−x/2)*dx/x―②と書ける。
ここで、θ(x)の変換公式:θ(1/x)=√xθ(x)を使います。
これは、g(x)=e^(−πtx²)のフーリエ変換G(ξ)=∫ₓ[−∞,∞]g(x)*e^(−2πixξ)*dxと、ポアソンの和公式(∑ₙg(n)=∑ₘG(m))から、θ(1/x)=Σₙ[−∞,∞]√x*e^(−πn²/x)を得て、テータの変換公式(xと1/xの間の変換等式)を導きますが、ポアソンの和公式の証明はここでは省きます。
故に、φ(1/x)=(θ(1/x)−1)/2=(√xθ(x)−1)/2と変形され、φ(x)=(θ(x)−1)/2により、φ(1/x)=φ(x)x^(1/2)+1/2*x^(1/2)−1/2を得る。
これを②に代入し、φ(x)で括る所とsの定積分とに分けて計算します。以下少し見辛いですが、少しの辛抱です。
ξ(s)=∫ₓ[1,∞]φ(x)x^(s/2)*dx/x+∫ₓ[1,∞]{φ(x)*x^(1/2)+1/2*x^(1/2)−1/2}x^(-x/2)*dx/x
=∫ₓ[1,∞]φ(x)x^(s/2)*dx/x+∫ₓ[1,∞]{φ(x)*x^((1-s)/2)+1/2*x^((1-s)/2)−1/2*x^(-x/2)}dx/x
=∫ₓ[1,∞]φ(x)*(x^(s/2)+x^((1-s)/2))*dx/x
+∫ₓ[1,∞]{1/2*x^(-(1+s)/2))−1/2*x^(-(2+s)/2)}dx
=∫ₓ[1,∞]φ(x)*{x^(s/2)*dx/x+x^((1-s)/2)}dx/x+1/(s-1)−1/s。
故に、ξ(s)=∫ₓ[1,∞]φ(x)*{x^(s/2)+x^((1-s)/2)}dx/x−1/s(1-s)となる。
以上より、s=0と1では、1/s(1−s)は発散し、故に、s=0、1以外の複素数で、上式は有理型関数(微分可能)となり、第2の解析接続が得られ、同時に、ξ(1−s)=ξ(s)も明らかです。つまり、完備ゼータ関数ξ(s)の極は、0(Γ(s)の極)と1(ζ(s)の極)になります。
ここに、テータの変換公式を用い、全ての複素数sへの”第2の解析接続”と”完備ゼータの完全対称等式”が一挙に得られました。
まさに一石二鳥です。上記の見苦しい計算式ですが、実際書いてみると、そこまではややこしくはないですがね。
ここで、”リーマンの第二積分表示”と”完備ゼータの積分表示”が同義である事の証明ですが。もし同義でないと、リーマンが完備ゼータの積分表示から第二の解析接続を始めたのがおかしくなります。
最初に述べた第二積分表示のζ(s)=1/{π^(−s/2)*Γ(s/2)}∫ₓ[0,∞](f(x)−f(∞))/2)*x^(s/2)*dx/x、f(x)=Σₘ[−∞,∞]e^(−πm²x)で、f(x)=θ(x)と置き換えると、”重さ1/2の保型形式”のテータ関数θの定義、θ(x)=1+2Σₘ[1,∞]e^(−πm²x)を満たす。
故に、ζ(s)=1/{π^(−s/2)*Γ(s/2)}∫ₓ[0,∞](θ(x)−θ(∞))/2)*x^(s/2)*dx/xに、完備ゼータのξ(s)=π^(−s/2)Γ(s/2)ζ(s)を代入すると、完備ゼータの積分表示のξ(s)=∫ₓ[0,∞]φ(x)x^(s/2)*dx/xが得られる。
よって、”第二積分表示”と”完備ゼータの積分表示”が同義である事が証明できました。
こんな精密な解説が欲しかったです。
温かいコメント有難うです。
数理系のガチなブログに、情熱的で深い愛情とは、女性ならではの柔らかな優しい視点ですね。とても勉強になります。
ただ、この情熱的という面で言えば、オイラーもリーマンも”半端ない”です。素数やゼータ関数に深い愛情を感じてたかもですね。
リーマンの接続解析もいよいよ佳境に入って来ました。テータ関数を使ってゼータの解析接続に入り込み、ゼータとガンマを見事に結びつけたんです。そして、第二接続解析と完備ゼータの完全対称式を得た。
まさに、リーマンの引き出しの多さには頭が下がります。転んださんが言うように、リーマン予想で一番美味しい部分の接続解析を、最初に持ってきたのは大正解だったと思います。実に分かりやすいです。
ゼータとデータとガンマの結び付きがリーマン予想の半分を支えたんですね。何だかチャンドラーの推理小説を読んでるみたいです。これからが凄く楽しみです。
ゼータからテータへとは、見事な言い回しですね。テータの変換公式を使って第二の解析接続と完備ゼータの完全対称等式を得るんですが。全くの出来過ぎとも言えます。
でも、この接続解析は書いてて疲れます。1の4のローラン展開辺りが大きなヤマなんですが、それを乗りこえても、テータ関数やガンマ因子や完備化が待ち構えてる。
まさに、リーマンとオイラーの二人三脚で出来上がったゼータなんですね。でも書いた後振り返ると正直、頭痛いです(笑)。
リーマン連チャンですか。
リーマンの謎で検索したら、転んださんの独り舞台でした。画像もですが。
でも、リーマン予想は証明されたとの事ですが、真相のほどはどうなんでしょうか?
2018年に、マイケルアティヤが証明したとされてますが。しかし多くの専門家は懐疑的に見てるとか。
転んださんはどう思われます?
リーマンの謎に関しては,単にGoogleBotが引っ掛けてるだけですよ(笑)。
リーマンブログに関しては、Googleくらいですかね、興味示してんのは。後はpaulさんの鉄壁のアドバイスとコメント、もう博士レヴェル。
それとリーマン予想が証明されたという噂にては、ホントだとしたら、大事ですな。専門家の診断を待たなあかんのですが。地球上に一体、どれだけ超難解なゼータを理解してる人がいるのやらです。
むしろ、リーマン予想が正しくない事を証明した方が近道と思える程に難解ですね。
ラマヌジャンやカントールに匹敵する超天才の登場を待つしかないのかもです。それでも無理かも。
これをイメージとして捉えるにはどんな感性が必要なんでしょうか?
その1も進むほどにチンプンカンプンですが。これがリーマン予想の基本という、転んださんの感性が理解できません。
ひょっとしたら、転んださんも宇宙人だったりして。この解析接続をクリアすれば楽になるとの事ですが。ほんとかなです。
とにかく、辛 抱強くついていきます。
頭だけで常識的な感覚で捉えようとすると、おかしくなりそうかなです。
発明は99%の努力と1%の閃きとですが。数学は99%の感性と1%の努力といった漢字でしょうか。極論を言えばですが。
でも、hitmanさんも何とか付いてくる当り、感性があるかもです。これからも宜しくです。
解ったような解かんないような
コメントにあるように
リーマンが精力的に取り組んだのだけは
なんとか理解できそう
でもブログを書いたアンタも情熱的だ
ゼータ関数をガンマ関数で表示する所まではオイラーも気付いてたんですが、リーマンは完備ゼータの表示式に置き換え、テータ関数だけでなく、コーシーの積分定理やポアソンの和光式などを総動員し、ゼータの完全対称公式を導き、同時に第二の解析接続を導きます。
コーシーやポアソンに関しては、”天才リーマン”のブログでも少し触れてるかな。