
”ゼータ関数の謎”こそが、リーマン予想の核であり、”素数の謎”を解く筈だったリーマン予想が、ゼータの謎を伴い、あらゆる方向に拡張&展開していくんですが。
おいおい、”リーマンの謎”は”素数の謎”じゃなかったのか?話は違うじゃないか?って言われそうですが。それ以上の謎を含んでたのです。
つまり、”リーマンの夢”は”ゼータ関数”にあったのです。ゼータの謎に比べれば、素数の謎なんてホントちっぽけなものだったんですよ。でも、ガウスによって初めて予想された”素数定理”を、”虚零点に関する和で表した”素数公式に結び付けた偉業は計り知れないんですが。
ゼータ関数の創始者であるオイラーを引き継ぎ、それらを確実な基盤(解析接続)の上に乗せたリーマンは、オイラーが考えもしなかったゼータの虚零点の重要性に気付き、素数公式とリーマン予想を生み出したのです。リーマンのゼータ論文は10ページ弱の1編のみですが、現在に至るまで、計り知れない程の大きな影響を与えてるのです(6/14追記)。
という事で、”その9”からゼータ関数の謎にシフトしてんですが、戸惑ってるお方も多い事でしょうが、悪しからずです。ホント私めは寄り道が好きなんですよ、人生と同じく(悲)。
ところで、”その10”で述べた様に、ゼータ関数は何にでもひっつきますから、黒川博士は、このゼータ関数を、”ひっつき虫”(オナモミの実)に例えてます。表面にはトゲみたいな毛が50本程生えてて、その内2本は立派なツノ状です。
実の内部は、隔壁で2つの部屋に別れてて、種が一つずつ入ってると。
このトゲみたいな毛が”保型形式”(位相群上で定義された複素数値関数)で、種が”ガロア表現”(群を行列で表現)であると。でも、全く理解に苦しむ表現ですな。
前回では、この”保型形式”(トポロジーフォーム)の説明が抜けてましたな。ここで、位相(トポロジー)と、どこかで聞いた事がある様な言葉が。
このトポロジーとは”柔かい幾何学”と言われ、ある図形からある図形に変換する時の”連続的な変形”の事です。有名な例では、コーヒーカップとドーナツの関係ですね。位相変換を使えば、この2つは同じなのです。
この保型形式を発見したポアン・カレ風に言えば、”位相とは、連続かつ閉じた空間”であると。コーヒカップをドーナツに変形する為には、2つの条件を満たす必要があるのです。
故に、位相群(topological group)とは、この位相を、群として代数的操作を行ったり、空間として連続写像について扱ったりする事ができる数の集合であると。
そういった位相群上で定義された複素数値関数を”保型形式”というのですが。この保型形式がautomorphic(保形性を保つ)と言われるのも、”極めて高い対称性を持った複素数値関数で良い性質を満たす”事から来てるのでしょうか。全く説明になってませんが、非常に柔らかい変形性を持った関数(接着剤)とイメージしてください。
この柔らかい”保型形式”が接着テープの役目を果たし、ゼータ関数という”ひっつき虫”自体が”超ラングランズ対応”を示してると。障壁に関する左右対称性は、ゼータ関数の関数等式ですと。これまた何の事やらですが。
因みに、”ラングランズ対応”とは、ロバート・ラングランズ(カナダの数学者 1936〜 写真右)が、この保型形式がガロア群と繋がってる事を見抜き、その名が付いてますが。”その10 ”では、”ガロア表現”のゼータ関数と”保型表現”のゼータ関数を結び付ける予想だと述べましたが。大体同じようなもんですかね。
このラングランズ対応とは、ラングランズ・プログラムと言われてて、非常に有名な予想です。ウィキ的に言えば、”代数整数論におけるガロア群の理論を、代数群の表現論および保型形式論に結びつける、非常に広範かつ有力な予想網”であると。何だかこっちの方が判り易いですかな。
つまり、このラングランズ博士は、数学の様々な分野が、実は”地続き”で、1つの大きな島(体系)に統一できるのでは?という大胆な予想をしたんです。
これは、”世界中の言語が1つの言葉に統一される”ようなもので。事実、世界中で世界的な権威の下で、真剣に討論され、解決に向け討議されてるという事で。全く凄い予想なんですよ。やってくれますな、ラングランズ先生。
これも、ゼータ関数の無限の結び付きが、大きく影響を及ぼした結果ですね。
つまり、大学以降で扱われる数学という学問は、奥が深すぎて、更には横にも延々と広がり、それが研究だけでは終わらず、現代社会にも絶大なる影響を及ぼしつつあるのです。ある意味人類が生み出した、”神をも支配する最強の学問”なんです。
話を元に戻しますが。この偉大なるゼータ関数の”ひっつき虫”が持つ大きい2本のツノは、ゼータ関数の極(0と1)で、隔壁と表面の接触面こそが2本のツノ(極)を通る中央線(実部=1/2)で、ゼータ関数の虚零点(自明でない零点➔ζ(s)=0)が、この中央線上に乗ってると。
因みに、s=1が極(無限遠点又は特異点)である事は、”その4”でも述べたが。s=0が極とはどういう事か?厳密に言えば、s=1は1位の極(正当な極)であり、s=0は0位の極、つまり正則点(特異点以外の点)又は、除去可能な特異点であり、”高々極”と呼ばれます。
黒川博士は、こういう風にゼータ関数をイメージする事で、ゼータ関数の関数等式、零点、極、リーマン予想の関係を判り易く説明しておられるが。私めには何の事やらですな。
何だか、トポロジーとラングランズのお話で終わってしまいましたが。今日はこれでお終いです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます