象が転んだ

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リーマン予想と素数の謎と”旧4の1”〜ゼータ関数の謎と3種の解析接続

2018年06月21日 21時34分58秒 | リーマンの謎

 上の図は、複素数平面(xy座標)におけるリーマンゼータ関数を色で表現(白いほど発散し、黒いほどゼロに)してます。
 横軸xが複素数sの実部Re(s)で、縦軸yが虚部Im(s)です。色軸がリーマンゼータ関数ζ(s)の値です。つまり、この図は複素平面とζ(s)値の3次元空間を表してます。
 よく見ると、x=1/2の縦軸上(虚部軸)に、朧気な黒い点、つまり、ζ(s)=0なる”零点”が並んでます。
 この縦に並んだ飛び飛びの黒い点列"自明でない"零点であり、x<0(負)でy=0の横軸上(実部軸)の明らかに黒い点群(負の偶数)が"自明な"零点(ζ(−2)=ζ(−4)=· · ·=0)です。

 ここで、"自明"とか"自明でない"とか出てきますが、実数部の線上(横軸)に存在するのが"自明"で、虚数部の線上(縦軸)に存在するのが"非自明”です。
 英語では、自明なゼロを"the trivial zeros"と言います。因みに、自明な零点(ζ(−2)=ζ(−4)=· · ·=0)を実零点(実根)非自明な零点(ζ(s)=0)を虚零点(虚根)とも言います。
 また、s=1における白い点は(無限遠)で、ゼータ関数を零点と極に関する無限積に分解した結果、ゼータ関数には素数に関する分解と、零点と極に対する分解という2つの表示が得られました。 
 右下の小さな図にある様に、自明でないx=1/2上の虚零点はζ(s)=ζ(1/2+yi)=0となり、y=±14.13...、±21.02...、±25.01...、±30.42...、±32.93...である事が判ってます。


与えられた数より小さい素数の個数

 1859年、33歳のリーマンは、手書きの僅か8ページの論文で、「与えられた数より小さい素数の個数について」を発表する。
 この短い論文中に、"ζ(s)の自明でないゼロ点は、全ての複素平面上で、実部が1/2の直線上に存在する"と予想する(結果だけで証明はしていない)1行を含んでいた。 
 そして、その論文の中に非常に興味深い記述があった。
 ”実際、この領域内に、ほぼこれと同じ位多くの実根があり、しかも、それらの根が全て実根である事は極めて確かだと思われる。
 勿論、その厳密な証明が望まれるが。私の粗雑な計算をしてはみたが、期待した程の成果は得られなかった。よって、この証明には触れないでおく事にした。
 何故なら、私のこの素数定理を作る為には、その証明は必要ないと思えたからだ”

 この論文の記述こそが後に、多くの数学者を悩ませる事となる「リーマン予想」であり、これこそが”リーマンの謎”なんです。この”粗雑な計算式”の証明を論文の中で紹介してたら、ひょっとしたら今頃はリーマンの謎が解けてたかもです。
 リーマン予想を有り体に言えば、ζ(s)=0となるゼータ関数の”自明でない”全ての零点sの実部Re(s)は1/2となるですね。


3種の解析接続

 この論文中でリーマンは、”x以下の素数の個数”を導く明示公式(素数公式)を導出した。素数の個数関数π(x)をゼータ関数ζ(s)を用いて表示する精度の高い解析公式で、リーマンの主張は不完全でしたが、フォン・マンゴルドにより証明されます(1895年)。
 それ以外にも、”2種類の解析接続”も発表した(本当は3つ)。1つ目は、”1の3”でも述べたガンマ関数Γを用いた”オイラーの第1積分表示”で、これを使い、リーマンは第1の解析接続を進めます。
 2つ目は、”1の4”と”1の5”でも詳しく述べてますが。テータ関数θを用いた”リーマンの第2積分表示”を使い、第二の解析接続を進めます。因みに、この第2の積分表示は、完全対称な関数等式が保型性から得られるもので、保系形式•保型表現のゼータ関数へと大きく発展します。

 そして3つ目。これが凄い事になるんです。”リーマン-シーゲル公式”というもので、1932年、リーマンの大学の後輩であるシーゲル(Carl Ludwig Siegel、独、1896-1981)が、ゲッチンゲン大学に保存してあった、リーマンの計算メモを発見。ゼータ関数の第3の積分表示から、解析接続を行った
 リーマンは、このゼータの第3の表示と解析接続には相当の自信を持ってた様で、零点の詳細な研究が出来ると見込んでました。
 実際、リーマンはゼータ関数の幾つかの虚零点にては、実部が1/2となるのを手計算で求め、リーマン予想の確認をしてた程で、最初の零点が、1/2+i*14.134725141734...という超精密なものでした。


ゼータの完全対称等式

 この短い論文に含まれてるはこれだけじゃない。
 リーマンが、この論文の中で発表した非対称型関数等式ζ(s)=2ˢπˢ⁻¹sin(πs/2)Γ(1−s)ζ(1−s)に、ガンマ因子”(√π)⁻ˢΓ(s/2)”を掛け、完備ゼータ関数”ξ(s)=(√π)⁻ˢΓ(s/2)ζ(s)”を作ると、完全対称型の関数等式”ξ(s)=ξ(1−s)”を満たす(”1の6”参照)。
 このガンマ因子を補った完備ゼータ関数がゼータ関数の本来の姿である事を提示しました。そして、この完備ゼータ関数に完全対称な美が伴ってる事が、数学史上初めて証明されたんです。
 そして、この関数等式こそがありとあらゆるゼータ関数に結び付き、大きく拡張されていく。

 ゼータ関数の日本の第一人者でもある黒川信重氏は解説する。"リーマンが知りたかったのは、素数そのものを精密に求める素数の解析公式(明示公式)だった。これを成立させるには、素数の情報を内蔵するゼータ関数がどこでゼロになるか?という根の分布の研究が必須だった"

 リーマンの1859年の論文の真の貢献はその結果ではなく、その方法にある。
 リーマンの明示公式に関する最も重要な結果は、その主要項が対数積分”∫[2,x]dt/logt”であると主張した。しかし、この主張に関するリーマンの証明は不十分だった。
 一方でリーマンの方法には、ゼータ関数ζ(s)を複素関数として扱い、ζ(s)の複素数に関する(虚)零点の研究、フーリエ反転公式やメビウス反転公式、素数定理π(x)の解析公式としての提示が含まれており、こうした全ての研究は、リーマン予想の解決よりも大きな成果をもたらしました(「ゼータ関数とリーマン予想」より)。



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