ボクシングのIBF世界ミドル級王座決定戦が6日(日本時間)、NYで行われ、元世界同級3団体統一王者のゲンナジ―•ゴロフキン(写真左)が、IBF3位のセルゲイ•デレビヤチェンコ(同右)に3−0で僅差の判定勝ち(115−112、115−112、114−113)を収めた。
昨年9月に、サウル•アルバレスに判定負けして王座陥落。今年4月に37歳となったスーパースターが、苦戦の末に約1年1か月ぶりに世界王座へと返り咲いた。
ゴロフキンの劣化が見えた激戦と
初回はゲンナジーの強打がいきなり火を噴いた。強引にプレッシャーをかけると、左右の連打が炸裂した。呆気なくセルゲイは尻もちをつき、早々にダウンを喫す。試合はこのままゲンナジーが圧倒するかに思えた。
2回は、セルゲイが左フックを連発するも、ゴロフキンはガードを固め、冷静に対処する。
3回、ゲンナジーの高速ジャブと左フックで、セルゲイの右まぶたをカットさせる。
しかし、相手も果敢に距離を詰め、打ち合いに応じ、ゲンナジーを慌てさせた。このラウンドはややセルゲイ有利に思えた。
4回に入ると、セルゲイの圧力が強くなり、ゲンナジーは上下にパンチをもらい、珍しく後退する場面が目立つ。この回もセルゲイ有利と見た。
5回、ゲンナジーは距離を詰める相手に左ジャブから右アッパーを入れる。しかし、左ボディのクリーンヒットでゲンナジーの動きが止まり、会場はどよめく。
6回から7回は、一進一退の攻防が続いたが、明らかに力で押してるのはセルゲイだった。
8回は、セルゲイの右まぶたの傷が大きくなり、ゲンナジーは圧力をかけ、相手の傷口にパンチを集中する。セルゲイは必死にガード。ドクターチェックも入り、初回以来のゲンナジー優勢だ。
9回、ゲンナジーの右目尻から出血。圧力をかけ手数を出すのは相変わらずセルゲイ。反撃するゲンナジーにも疲れやダメージが見え始め、パンチを出せず被弾するシーンが増える。
10回も相手の上下のコンビネーションブローに苦戦し、ダメージが蓄積した。しかし、ゲンナジーも的確なパンチで応酬するも防戦が目立つ。
最終12回も、距離を詰めて押しまくるセルゲイに、ゲンナジーが細かいパンチで傷口を狙うという流れに変りはなかった。
ゲンナジーも力の限りを振り絞るが、数々の破壊的シーンを生んできたKOマシーンには、明らかに劣化が見られた。もし、セルゲイの右瞼の傷がなかったら、ゲンナジーは倒れてたかもしれない。
結局、仕留めきれず。最後は何とか相手の攻撃をしのぎ切り、ゲンナジーが際どい判定で辛勝した。しかし、最強の名をほしいままにしてきた姿からはほど遠い内容だった。
新王者のゴロフキンは40勝(35KO)1敗1分。負けたデレビヤチェンコは13勝(10KO)2敗となった。
以上、THE ANSWERを参考にでした。
カネロとの再々戦は無理っぽかも
ゴロフキンは、最大のライバルとされるカネロ(サウル•アルバレス)と2017年9月に疑惑の引き分け、昨年9月の再戦では判定負けで屈辱のプロ初黒星を喫し、長く君臨した世界王座から陥落した。
今年6月の再起戦でスティーブ•ロールスに豪快な4回KO勝ちし、完全復活を証明したが。今回の際どい試合内容では、来春にもカネロとの3度目の決戦が実現する可能性は全くの不透明だろう。
カネロ陣営はこのゴロフキンの劣化を見て、どう動くのか?
元々、このIBFミドル級王座は、昨年ゴロフキンがデレビヤンチェンコとの指名試合を回避し、王座剥奪されたもの。
その後、王座決定戦でダニエル•ジェイコブスがデレビヤンチェンコを下し、IBF世界王者となった。
しかし、ジェコブスはカネロとの3団体統一戦で敗北。統一王者となったカネロがデレビヤンチェンコとの防衛戦をしなかった為、IBF王座剥奪となり、今回の一戦が組まれた。
デレビヤンチェンコがそんなに警戒する程の挑戦者とも思えないが、ジェイコブスとゴロフキンとの激戦を見る限り、要注意ボクサーである事には変わりはない。統一王者のカネロでさえもグラつかせる事が出来なかったこの2人を、まさかの所まで追い詰めた功績は評価に値するだろう。
デレビヤンチェンコというボクサー
ただ、アマ戦歴410戦390勝の”苦労人”デレビヤンチェンコには悪いが、彼は非常にアグレッシブでタフな選手だ。しかし”当て勘”が悪すぎる。ジェコブス戦でもそうだったが、折角いいパンチをヒットさせながら、その先が続かない。
”いい試合はするが勝てない”典型のファイターだ。
左のショートボディは一級品だが、コンビネーションが雑すぎて、距離が近すぎる。お陰でジェコブス戦でも”強打の持ち腐れ”に終わった。
今回のゴロフキン戦でも同じだった。明らかにゴロフキンは、デレビヤンチェンコのボディブローを嫌がってた。顔を狙って当たらないのであれば、ボディに集中すべきだった。
至近距離から放つ破壊力のある右だが、踏み込んで放つ分、全くの不発に終わった。得意の右を軽くフェイクにし、左をメインブローにしてたら、ゴロフキンは確実に倒れてた。
事実、あわやというラウンドが幾つかあった。しかし、ゴロフキンは小刻みで的確なパンチで応酬し、辛抱強くポイントを稼いだ。
私の採点では、2P程デレビヤンチェンコ有利かなと思えたが。試合後のデレビヤンチェンコの腫れ上がった顔面を見れば、それだけでもゴロフキンの勝ちではある。
ゴロフキンの危うい現在と未来
一方、ゴロフキンは明らかに劣化を露呈した。前日の計量時の身体を見ても、下っ腹が張ってるのが判った。その瞬間、ボディを攻められたら終りかなと思った。事実そうなった。
デレビヤチェンコに、もう少し冷静さとテクニックがあったら、ゴロフキンの時代は昨日で終わっていた。
全盛期の頃は、クルーザー級のスパーリングパートナーたちが、防弾チョッキを身に着け、ゴロフキンのパンチの衝撃からあばらを守っていたという。
ライトヘビー世界王者のアンドレ•ウォードやセルゲイ•コヴァレフが、ゴロフキンとリングに上がったら負けるかもしれないという噂まで出ていたのだ。
確かにゴロフキンは強いボクサーだ。戦歴も見た目も、強さを全面に押し出すファイターでもある。しかし、策がなさすぎる。セコンドがバカなのか?ゴロフキン本人が一本調子なのか?
ボクシングは、頭脳を使って殴り合うスポーツである。勿論、本能で闘う部分もあるが、今はそれだけでは勝てない。
”カネロVSジェイコブス”でも書いたが、ゴロフキンは本能で戦いすぎる。それはカネロとの2試合でハッキリと露呈していた。
しかし、ゴロフキンが昨日の試合を反省し、対策を十分に練ってカネロに挑めば、ひょっとして番狂わせが起きるかもしれない。いやそう思わないとやりきれない。
二人共距離が近いからゴロフキンの圧倒的有利と見てたけど。ジェイコブス戦でもデレビヤンは最初ダウンを奪われ後半追い上げていいとこまで行ったのにあと一歩だった。
でもお陰で、ゴロフキンと村田とのマッチメークが近くなった。カネロは老いたゴロフキンを避けるだろうから。でも今の村田で勝てるのかなぁ〜。
ミドル級もカネロに代わるスーパースターが登場してほしい気もする。ハグラーやハーンズみたいに、往年のような質の高いKO劇を見たいもんだ。