日米通算170勝を挙げ、日本のエースとして君臨した”平成の怪物”松坂大輔(40)が、23年間の現役生活に静かに幕を閉じた。
昨年から古巣の西武に復帰も同年7月に脊椎内視鏡頸椎手術を受け、今年5月上旬のブルペン投球では、右手中指の感覚がないまま球が右打者の頭部付近に抜ける症状が出た。
この1球が決断への引き金となったのは想像に難くない(スポニチ)。
しかし、そんな事は単なる結果論である。
横浜高3年の98年に春夏連覇を果たし、夏の甲子園の準々決勝のPL学園戦で延長17回を一人250球を投げ抜いた。決勝では京都成章戦でノーヒットノーランを達成した。
松坂はこの時点で”平成の怪物”と称された。しかしこの時、投手としての生命線の半分は絶たれてた様にも思う。
怪物といえど、所詮は人間である。
肩や肘を酷使すれば、必ずしっぺ返しを食らう。怪物の豪腕が神から与えられたものなら、大事に使うのが神への礼儀じゃなかったか?
失われた10年
しかし、怪物の酷使された筈の肘と肩は、甲子園でもシドニーとアテネ五輪でも、そして2度のWBCでも連覇の原動力(連続MVP)となり、日本国民に計り知れない勇気と感動をもたらした。
31歳での2011年のトミージョン手術以降は怪我と苦悩の連続だった。以降10年は怪物とは程遠く、見てる私からすれば、目を覆いたくなるシーンの連続だった。
松坂は、この時点で辞めるべきだったのかもしれない。
そうすれば、松坂大輔の”失われた10年”は存在しなかった筈だ。
今から思うと、ポスティングで60億の値がついた時が絶頂期(28歳)で、かつ急落の危機だったようにも思える。
西武時代の肘を痛めた時(2002年=22歳)に、トミージョン手術をしてたら、とも思うが後の祭りである。
そういう私は高校野球の精神論が大嫌いである。甲子園を湧かせたスターたちがプロに入り、面白い様に次々と潰れていく。しかし、”怪物”と呼ばれた甲子園のヒーローは、プロ野球でもメジャーでも輝き続けた。
しかし、所詮は生身の人間である。一度綻びた肘と肩は元に戻る筈もなかった。
松坂は日本でもメジャーでも速球が抜ける事が多く、甲子園で肘を酷使したのは明白だった。
それでも”平成の怪物”は何も言い訳せずに投げ続けた。怪物とは彼の為にある。
私は小学校の低学年の時に、硬式の野球ボールを投げた事がある。真っ直ぐに投げたつもりでも、か細い腕が反対方向に歪み、大きく右側にシュートしてしまうのだ。いくら投げても右側に大きくずれてしまう。
この時点で野球選手になる夢は諦めた。
大人になって太くなった腕で硬球を投げてみた。軟球よりかはずっと力が伝わり易く、とても投げやすかった。力を入れれば入れるほど速い球が放れた。
正直、”何だこんなもんか”と思ったが、これまた後の祭りである。
プロ野球選手は、その大半が小さい頃から石の様な重く堅い硬球に慣れ親しんでいる。
ベーブルースが語ってたように、野球は小さい頃からマスターしないと急には上達しないとされる。野球の神様が言うのだから、確かにそうかもしれない。
江川卓は、中学2年まではソフトボールの選手だった。作新学院に入り、数々の神話と伝説を遺した”昭和の怪物”は、投手生命の大半を高校野球で費やした。
松坂も甲子園では肩を酷使したが、1年時から孤軍奮闘で大活躍した江川は遥かにそれ以上だった。
大学(2年)では肩を骨折し、以降本来の肩に戻ることはなかった。
江川の伝説はウィキでも圧巻のボリュームで紹介されてるから省くが、江川の全てが高校野球に凝縮してる事が伺い知れる。因みに、拙者ブログの「江川の真実」も参考です。
投げ過ぎが怪物を潰す?
僅か32歳で引退した”昭和の怪物”江川のプロでの実働年数は時は9年である。大学時に骨折した肩を再び痛めたのが、プロ入り5年目の28歳の時だ。
同じく”平成の怪物”松坂が最初に肘を痛めたのがプロ入り4年目の22歳の時だ。日本プロ野球での実働年数は8年だが、メジャーでは実質5年である。それもまともに投げれたのは最初の2年だけだ。
BOS時代の2012年が実質の引退年だとすれば、江川と同じ32歳での引退となる。
かつて、”神様仏様”と謳われた”鉄腕”稲尾和久(1937-2007)も彼らと同じく僅か32歳で現役を引退したが、実働14年でプロ入り9年目に肩を壊した。
こうして見ると、怪物と恐れられた大投手の肩や肘が、如何に壊れやすく脆いかが理解できる。
今では、高度に進化したケアや科学的トレーニングの登場で、多少は投手の選手生命は伸びてはいるが、靭帯移植手術は後を絶たないどころか、若年層化し、大きく増え続けている。
因みに、松坂が靭帯移植手術をした当初は靭帯の断裂と診断されたが、実は靭帯そのものが消失してたとも噂されている。
その松坂も”投げる度に血管が切れるから負荷がゼロという事はないが、沢山投げてるからって痛めるものでもないと思う。
ケガをする、しないはその人次第という所もあるけど、ケアが足りなかったという考えはない”と語る。
しかし、肘の故障の原因に明確な答えが存在するのかどうか?その松坂も明確な答えを出せなかった。
以下、「靱帯手術、日米意識の差」から一部抜粋です。
アメリカでは投げすぎが肩や肘を痛めるとされ、日本では(投げ込みが足りなく)不安定なフォームで投げるから故障するとされる。
しかし、稲尾も江川も松坂も非常に理想的な投球フォームであった。にも関わらず、若い時点で肩や肘を壊したのだ。
”アメリカは34.4%で日本は4.4%”という2013年MLB開幕時のロースター全投手の靭帯手術割合のデータがある。
”うちの16歳の息子は、プロに行く為にトミージョン手術を受けたんだよ”
これには、流石の松坂も驚いたという。
”投げ込むのは当り前”という日本と、”肩や肘は消耗品”というアメリカ。しかし、投球制限については、アメリカでも意見が分かれる。
つまり、日本投手の靭帯移植がアメリカの1/8以下なのは、日本人が”正しいフォームで投げてるからだ”との声もある。
”球数制限よりも怪我しない理想のフォームを教える事が、投手を守るという視点で言えば、よほど効果的なはずだ”と。
最後に〜手術か?治療か?
1つ明白なのは、治療やリハビリに重点を置く日本に対し、米国では手術が主流で、その数は年を追う毎に倍々に増加する一方だという事。
幼少期からの投げ過ぎが指摘され、すぐに手術に踏み切るアメリカの現実は留まりそうにもない。
その上、手術の高い成功率も背景にある。
スポーツ医学誌が1986年から12年までにトミージョン手術を受けたMLBの216人のその後を調査した所、83%がメジャーに復帰し、97%が少なくともマイナーのマウンドに立った。更に、手術前の2年と手術後の2年を比較した場合、手術後の方が防御率が良くなっている。
高い成功率に加え、成績が上がるのだから、将来のメジャーを目指す子供たちでさえ、迷わず肘にメスを入れる。
しかし、リハビリに約1年を要する大手術にかかる大金を、親がどう工面するのか?
松坂の執刀医だったヨーカム氏は、子供たちの靭帯移植手術に僅か1000ドルしか請求しなかったという。つまり、激安の手術費用も含め、そういう諸々の事情を子どもたちは知ってるのだ。
”日本の場合、プロに入る為にトミージョン手術を受けるという考えはないと思う”と松坂は語る。一方で、”長く投げたいならば、手術した方がよいとは思う(いい状態に戻れるかどうかは別として)”とも語る。
以上、日本経済新聞からでした。
私見を述べれば、やはり”投げ過ぎ”が怪物たちの肩や肘を破壊したとも言える。
投げ過ぎが全てではないが、壊す確率は確実に高くなる。特に靭帯は筋肉とは異なり、一度硬くなると急速に脆くなる。
骨格や筋肉はたとえ怪物だとしても、モノを投げる様には出来てはいないのだろうか。
冒頭で述べたように、神から授かった大切な生身の肩や肘は、労りながら使うのが理想かもしれない。社会も組織もそうだが、痛めつけ酷使すれば、すぐに壊れる。
それでも我々立場の弱い庶民は、ヒーローや怪物に憧れ、夢と勇気を授かる。一方で怪物たちはそれに応えようと、自らの才能と能力を極限にまで奮い立たせる。
やがて怪物は壊れ、現実の壁に打ちのめされ、栄光に飾られた生涯を静かに閉じる。
松坂大輔の”失われた10年”は、我ら庶民の失われた10年でもある。
私達の記憶にしっかりと焼き付いた怪物たちの実像と虚像は、次世代の怪物たちに再び焼き付けられ、彼らによって新たに増幅させられ、現代の奇跡として再現させるだろう。
”昭和の怪物”江川が去り、”平成の怪物”松坂が去った今、我らの失われた空白を埋めてくれるのは誰になるのだろうか?
言われる通り、ここに来てNHKはメジャー中継を流さなくなったね。
毎晩、五輪アスリートの番組で、流石に吐き気がします。大谷を流してた方がずっと儲かるのに、IOCに支払う660億のTV権がよほど惜しいんでしょうか・・・
少し悪球打ちが目立ってきました。
こういうのも疲れからくる焦りでしょうか
たまたまHRになったから良かったものの
後半はトーンダウンするかもしれないです。
今日の登板は後半の大谷を占う大きなバロメーターになりそうです
NHKはここに来て
MLB放送を流さなくなりました。
大谷に人気が集中すると誰もオリンピックなんて見ないと踏んでるのでしょうか。
たった2週間の歓迎されない祭典をどれだけの日本国民が見るんでしょうか
これが日本メディアの悲しい現実と未来です。