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私たちの環境は守られているか?国内の環境法5・鳥獣保護法

2010年07月02日 | 環境保護
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 国連生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が名古屋市で10月に開かれる。生物多様性とは地球上の生物がバラエティに富んでいること。開発や乱獲、外来種の侵入によって、絶滅の危機に瀕し保護される生物もいる一方、農作物を食い荒らし増加する動物もいる。これも生物多様性の問題のひとつだ。

 鳥獣被害とは野生鳥獣による農林水産業等への被害のこと。現在、シカやイノシシなど野生鳥獣の生息域が広がり、山では希少な植物が食い荒らされ、ふもとでは農作物被害が深刻化している。捕獲数は年々増えているのに被害は減らず、生物多様性の悪化が懸念されている。鳥獣被害防止特別措置法に基づき、市町村の被害防止対策を財政的に支援する事業は、政府の行政刷新会議の仕分けで予算縮減となり、市町村が頭を抱えている。

 シカやイノシシなど増加しつつある動物に対して我々はどう対処していけばよいのだろうか?調べてみると、野生鳥獣を保護する目的の法律は多いが、野生鳥獣を駆除する法律は少ない。駆除に関する法律とは何だろう?

 昔は「狩猟法(1918年成立)」があったが、1963年より「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護法)」に名称が変わった。この法律は、日本国内における鳥獣の保護と狩猟の適正化を図るのが目的である。

 しかし、この法律は、野生動物を保護するのが前提。鳥獣被害に対して、迅速な対応ができないとして、2008年2月には「鳥獣被害防止特別措置法」施行されている。今日は鳥獣被害に関する法律を調べたい。

 鳥獣被害の現状
 どんな動物が農作物を食い荒らすのだろう?

 正解はスズメ、カラス、ヒヨドリ、ムクドリなどの鳥類とイノシシ・ニホンジカ・ニホンザルなどの哺乳類である。鳥獣による農業被害は、1940年代後半から1980年代後半までスズメ、カラス、ヒヨドリ、ムクドリなどの鳥害が多く、獣害は山間地などで散発的に報告されていた程度だった。

 しかし、近年はイノシシ、ニホンザル、ニホンジカなどによる被害が全国規模で発生し、山間地に留まらず平野部にも被害が拡大している。また近年は、マグースやハクビシンなど移入種による被害も増えつつある。

 林業被害はカモシカ、ニホンジカ、ツキノワグマ、ノウサギ、ノネズミなどによる食害、角こすりなど。1950年代から1970年代まではノネズミ、ノウサギが多かったが、1970年代後半からカモシカによる被害が目立つようになり、1980年代終わりからニホンジカによる被害が増加してきた。クマ類の人身被害や恐怖感を与える精神的被害も問題になっている。
 
 では、なぜこれらの生物は増加したのだろう?

 正解は、天敵の不在、開発による生育場所の減少、農地の荒廃、狩猟者の減少などである。1905年にニホンオオカミが絶滅し、以後天敵が不在になった。また、開発の進行による野生動物の生息地の分断・縮小や、中山間地域の衰弱に伴う森林や農地の荒廃など環境変化に伴う影響が大きいとされる。

 事業仕分けで、対策予算は縮減
 「地方の切実な状況を(国は)本当に分かって予算を切ったのか」。長野県の村井仁知事は4月23日の会見で不満をあらわにした。シカやイノシシなど野生鳥獣による農業被害防止の施設整備費として、国に10年度の交付金3億2000万円を要望したが4分の1しか認められなかった。昨年11月の事業仕分けで予算が縮減された。

 県の農業被害額は2008度9億8000万円で、北海道に次ぎ2番目に多い。レタス生産量日本一の川上村では、畑に入り込んだシカが出荷直前のレタスを食べるなど、被害は年1億6000万円にのぼる。シカの侵入を防止するため高さ2メートルの柵を16キロにわたって整備する計画を作り、3800万円を要望した。同様に鳥獣被害に悩む28市町村が計画を作成し、県は約3億2000万円を要望した。しかし、認められたのは約7600万円だった。川上村は県と調整し、何とか別の事業を利用して柵を作ることになった。

 担当者は「柵は切れ間なく一気に設置しなければ効果は上がらない。道路のように毎年少しずつ作るわけにはいかない」と話す。

 鳥獣保護法と鳥獣被害防止特措法
 鳥獣保護法に基づき国内で有害鳥獣として捕獲された野生動物は10年前と比べるとイノシシは4.5倍、シカは2.2倍、ニホンザル1.6倍、カワウは4倍に達している。それにもかかわらず、農作物被害は年間200億円と高止まりで、樹皮を食われる森林被害は年間5000~7000ヘクタールで推移している。世界自然遺産の知床(北海道)では希少な高山植物のシレトコスミレが食べられ、屋久島(鹿児島県)では固有のシダ類が激減した。

 鳥獣被害防止特措法は農業被害に迅速に対応するため、自公連立政権時代の2008年2月に施行された。狩猟免許講習会や生息状況調査、野生動物の侵入防止柵設置など市町村の被害防止の取り組みを財政支援する。全国で約1000の市町村が被害防止計画を作成した。10年度は全国で47億円の要望があったが、予算は2009年度当初の約28億円から約23億円に減額された。担当者は「高齢化が進み、農家は疲弊している。被害対策にやっと立ち上がろうとしたのに、予算減額とは、はしごをはずされたようなものだ」と憤る。

 野生鳥獣 vs 人類
 明治時代の狩猟解禁や戦中戦後の食糧不足でシカなどの野生鳥獣は乱獲され、一時は絶滅の危機にあった。ところが、最近では雪が減って冬を越せるようになったことや、天敵のオオカミの絶滅やハンターの減少でシカは急増している。三浦慎悟・早稲田大教授(野生動物管理)は「明治以降、これほど野生動物と人のあつれきがひどい時代はなかった。被害対策のノウハウは伝承されず、捕獲は高齢化するハンターに頼っている」と話す。全国の狩猟免許取得者は1970年度に53万人だったのが、2006年度は18万7000人と3分の1まで減り、半数が60歳以上だ。

 行政にも野生動物の専門家は少ない。環境省の調査によると、全国の都道府県で約1000人が鳥獣行政に携わっているが、専任の職員は約3割にとどまっている。

 狩猟や有害捕獲の技術だけでなく、被害実態の把握や対策立案、住民との合意形成などに取り組む人材育成を目指し、日本獣医生命科学大や信州大、宇都宮大など大学が講座や研修会を始めた。日本獣医生命科学大の羽山伸一・野生動物教育研究機構長は「複雑で多様化する野生鳥獣対策に対応できる人材育成が急務だ」と強調する。(毎日新聞 2010年6月28日)

 鳥獣保護法とは?
 正式名称は「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」、2002年(平成14年)に改正。日本国内における鳥獣の保護と狩猟の適正化を図る目的の法律である。略称は、 鳥獣保護法 、狩猟法。

 この法は、「鳥獣の保護」と「狩猟の適正化」を図ることを目的としている。またそれをもって「生物多様性の確保」、生活環境の保全及び農林水産業の発展を通じて、自然環境の恩恵を受ける国民生活の確保及び地域社会の発展も目的としている。

 狩猟で捕獲できる鳥獣はシカ、イノシシ、キジなど49種類が指定されている。しかし、有害鳥獣対策としては不十分という声が上がる一方、鳥獣保護の考えを後退させレジャーとしての狩猟や安易な駆除の促進を行うための悪法という声もある。

 近年は、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)や動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)の制定・施行により、生態系の保護や、鳥獣を含めた動物保護・愛護の分野において詳細な対策がなされつつある。

 その一方で、有害鳥獣等の駆除等、狩猟等の分野について、意見の対立も見られ、今後は保護と駆除のバランスが要求されている。(Wikipedia)

 鳥獣被害防止特別措置法とは?
 農林水産省の調査によると、全国の野生鳥獣による農作物被害は2006年度が196億円で、前年度より10億円増えた。鳥獣別では獣類が6割、鳥類が4割であり、特にイノシシ、シカ、サルの被害が獣類被害の9割、鳥獣全体の5割強を占めている。

 これらの農作物への被害を防ぐための、2007年12月14日「鳥獣被害防止特別措置法」が成立した。正式名称は「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」。2008年施行。

 内容は、農漁村で広がる鳥獣による農林水産被害の防止が目的。被害防止計画を定めた市町村に、都道府県に代わって鳥獣捕獲の許可権限を出すことを認め、職員やハンターらをメンバーに被害対策実施隊を結成し、鳥獣の捕獲や防護柵の設置などを進める。捕獲した鳥獣の肉を加工する施設整備も補助対象。

 鳥獣被害防止措置法のポイントは、次の通り。
・農相が鳥獣害防止施策の基本指針を策定
・基本指針に即し市町が被害防止計画を策定
・計画策定市町に鳥獣捕獲の許可権限を委譲
・国と県は計画実施に必要な財政措置をとる
・市町が「鳥獣被害対策実施隊」を設置
・民間人の隊員は非常勤市町職員に位置付け
・隊員には狩猟税を軽減
・被害防止に必要な調査を行い、原因を究明
・鳥獣の生息状況などを定期的に調査するよう鳥獣保護法を改正

参考HP Wikipedia「鳥獣保護法」・農林水産省「鳥獣被害防止特措法

 

鳥獣保護法の解説
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Q&A 早わかり鳥獣被害防止特措法
自由民主党農林漁業有害鳥獣対策検討チーム
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