論文から見た日本の低迷
世界の主要学術誌に掲載された日本の学術論文数は、この10年間横ばい状態にあり、世界に占めるシェアも2000年の9.45%から09年には6.75%に下がっていることが、6日、国際情報企業「トムソン・ロイター」の報告書で明らかになった。
「グローバル・リサーチ・レポート日本」によると、日本の停滞ぶりを示す数字は、論文が他の論文にどれだけ引用されたかを示す平均被引用数にも現れている。例えば、英国、フランス、オーストラリアといった国々が世界平均を超えているのに対し、日本は依然、世界平均を下回ったままだ。
中国もまだ世界平均より下だが、論文数が「この4-5年間で驚くべき伸びを示している」ことに加え、平均被引用数もまた「急激に上昇し始めており、世界平均へと一気に駆け上がっていくようなペースで今後も上昇していくことが予想されている」と高い評価を得ている。
2005-2009年で世界に占める論文数のシェアが日本で一番高かったのは物理学で11.09%だった。しかし、その物理学もその前の5年間(2000-2004年)のシェアは13.86%とさらに高く、他の多くの分野同様、この5年間で論文数、シェアともども数字を落としている。例えば2000-2004年で世界の論文数シェアが国内で1位だった材料科学(14.25%)も、2005-2009年に10.29%までシェアが低下している。
レポートは「日本の研究パフォーマンスが見劣りするのはなぜか」という問いかけをしているが、著者の一人でもある研究担当ディレクター、ジョナサン・アダムス氏は次のようにコメントしている。
「日本の研究業績を低迷させている要因のひとつは、国際的な研究協力の比率が低いことにあるかもしれない。日本の研究は、急速に発展している近隣諸国と協力して技術革新の機会を追求するのではなく、国内の活動によって支えられているように見受けられる」 (サイエンスポータル 2010年7月7日)
2006 PISA調査
日本の論文の発表数が少ないのは残念なことである。その原因は協力体制ができていないから...というが、それだけだろうか?ここで、気になる話題をひとつ。
それは日本の学力低下の話題だ。OECDでは世界の15歳児童を対象に学力(学習到達度)に関して実際にテストを行う調査を3年ごとに行っている。このテストはPISAと呼ばれる。
参加国が共同して国際的に開発した15歳児を対象とする学習到達度問題を実施。
2000年に最初の本調査を行い、以後3年ごとのサイクルで実施。2006年調査は第3サイクルとして行われた調査。
読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野について調査。各調査サイクルでは調査時間の3分の2を費やす中心分野を重点的に調べ、他の2つの分野については概括的な状況を調べる。2000年調査では読解力、2003年調査では数学的リテラシー、2006年調査では科学的リテラシーが中心分野。
2006年調査には、57か国・地域(OECD加盟30か国、非加盟27か国・地域)から約40万人の15歳児が参加。なお、2000年調査には32か国(OECD加盟28か国、非加盟4か国)が、2003年調査には41か国・地域(OECD加盟30か国、非加盟11か国・地域)が参加。
日本のPISA・現状
日本の状況を分野ごと2000年から2006年について示すと、
2000年、科学的リテラシー 2位、読解力 8位、数学的リテラシー、1位であった。
2003年、科学的リテラシー 2位、読解力 14位、数学的リテラシー、6位、であった。
2006年、科学的リテラシー 6位、読解力 15位、数学的リテラシー、10位と低下。
2006年は科学的リテラシー、読解力、数学的リテラシーのずべてで順位が低下している。2006年の科学リテラシー、第1位はフィンランドであった。フィンランドの学習法フィンランドメソッドは有名だ。
公表後12月5日の新聞各紙はトップ扱いでこの結果を報じ、社説でも取り上げた。毎日新聞の見出しは「日本理数離れ深刻、「関心・意欲」最下位」、社説見出しは「順位より「低意欲」こそ問題だ」であり、朝日新聞の見出しは「数学・科学応用力日本続落」、社説見出しは「考える力を育てるには」であった。東京新聞の見出しは「日本学力トップ集団脱落」、社説の見出しは「考える力に課題がある」であった。
世界のフロントランナー
文科大臣は「今後理数教育の充実に努めたい」、原因については「中央教育審議会で授業時間を増やそうというのは(授業時間が)足りなかったからであり、活用力を上げるには基礎基本の知識が必要だ」ととして、授業時間、学習内容を削減した現行の学習指導要領が影響していたことを事実上認めた(産経新聞12月5日WEB版)。
低意欲が原因であれとするなら単なる授業時間の増加はよい結果に結びつくとは限らない。日本はフロントランナーとしてどういう独自の方法で子ども達に理数系への意欲をもたせられるかを国民全体で考えていくことが重要であろう。
自主学習時間の少なさ・テレビ視聴時間の長さ、教育費の増大が少子化を生んでいる点も含めて、抜本的な教育改革・社会改革の必要性が生じていると誰でもが感じているであろう。(2007年12月10日 学力の国際比較)
世界で1番よい国を目指そう!
今まで、よい国をめざして努力した日本。経済的には世界2位の豊かな国になった。これはもちろん、学力を磨き、努力を積み重ねてきた成果である。ところがPISAの学力検査の結果を見ると、2000年から下落の傾向が見られる。
今まで、学問的に努力をしたらこそ、許された収入だと思う。ここで、何の努力もせずに経済的繁栄を求めるならば、それは単なる金の亡者であり、許されるべきではないと思う。現在、中国の製品は正確で、きれいなものがたくさんつくられている。中国の人達が一生懸命学習し、努力した結果であると思う。
今、PISAで20位の国の年収は、日本の約半分。40位の国の年収は約1/4まで下がる。学力と年収は比例するようだ。学力が苦手な人は体力で勝負したってよい。
このまま何の努力もせずに、我々はずるずると貧しい国になるのだろうか?やはり学力や体力に磨きをかけて、もう一度世界で一番豊かな国を目指すべきではないだろうか?私も微力ながら学び続け、豊かな生活を目指したい。
参考HP 社会実情データ図録「学力の国際比較」
フィンランドの教育力―なぜ、PISAで学力世界一になったのか (学研新書) リッカ パッカラ 学習研究社 このアイテムの詳細を見る |
フィンランドメソッド実践テキスト 諸葛 正弥 毎日コミュニケーションズ このアイテムの詳細を見る |
必ず「PISA型読解力」が育つ七つの授業改革―「読解表現力」と「クリティカル・リーディング」を育てる方法 有元 秀文 明治図書出版 このアイテムの詳細を見る |