ウロコのつぶやき

昭和生まれの深海魚が海の底からお送りします。

クリエイターの本能?

2007-09-16 23:42:48 | ノンジャンル
前のエントリーで、表現者の欲求についてちょこっと書いたので、大ちゃんのバチェラレットについてももうちょっとだけ。例によってイタイので、危険を感じた人は避難して下さい。
あと、私の書いてることは妄想です基本的に。あんまり事実には基づいてないので、信じないで下さい。

表現者とかアーティストとか色んな言い方があるけど、ひっくるめてクリエイターと呼びます。師匠(仮)に言わせれば、クリエイターというのは職業ではなくて、そういう人を指すらしいので、ここではそういう定義で。

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前のエントリーで書いたのは、「クリエイターとして名声を得ること」、「自分の作品が認められ、才能を自己確認すること」という2つの欲求でした。でも本当はもっと大切な、根源的な欲求があります。
それは「創ること」そのもの。もうちょっと言うと、自分の中で「創る」という行為は自動的に出来る。創ろうとしなくても勝手に出来てしまうというのがクリエイターという「人種」であって、その自分の中に出来たものをどうにかしてカタチにしたい、自分の空想の産物に過ぎない、忘れてしまえばそれっきりのものを、何とかして現実にしたいというのがクリエイターに取って最も根本的な欲求かなと思います。

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バチェラレットを見て思ったのは、この人やっぱりクリエイターだったんだなということでした。
スケーターとして(試合ではアスリートとして、ショーではエンターティナーとして)、見る側に強く訴える表現は必要で、そう言った点では流石にモロゾフさんは非凡だし、大ちゃんもよく彼の表現を消化していたと思います。
「オペラ座の怪人」みたいな超メジャーな作品は、本来マニアックなのが好きそうな大ちゃんに取っては最初は抵抗があっても不思議はないかなと思うんですが。それでもいざやるとなると、ファントムにがっつり感情移入してやり切りましたよね。
でも多分、それだけでは彼の、クリエイターとしての本能は満たされなかったんだろうなあと。そうして出来たのが「バチェラレット」だったのかなあと。
上手く言えないんですが、「今までとは違ったカラーで」とか「他の人が余りやらない曲で」とかそういう対外的な理由ではなくて、もっと彼の内側から出て来た欲求に従った結果なんだろうなあと。
スケートそれ自体に興味のなかった私が、例外的に彼にひっかかったのは、多分彼がそういう人だったからなんでしょうね。クリエイティブ畑でガチで戦ってる人たちと同じ匂いがするから。
最初に「ノクターン」を見た時にはその感性にびっくりしたんですが、「バチェラレット」では、彼のクリエイターとしての意識の高さに驚かされたような気がします。

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ちなみに、私がバチェラレットを見てまず最初に感じたのは、何かすごく根源的というかプリミティブな踊りの表現だなということだったりします。
最初に見た時、一瞬裸足で踊っているように見えたんですよね。
舞踏が娯楽とか芸術になる前の、宗教的儀式だった時代を思わせるような踊り。
それも近代宗教のような洗練されたものではなくて、万物に精霊が宿るといったような原始的な宗教観の中で、人間に見せるためではなく神々に捧げるために踊っているような。
「人間ではないような、何かに取り憑かれているような」とは本人の言ですが、何か守護霊獣(トーテム・アニマル)みたいなものの動きを模した踊りを通して、自身の体に神霊を降ろそうという、そういう儀式的なものを連想しました。
別に特定の宗教ではなくて、日本的八百万でもネイティブ・アメリカンでも別に何でもいいんですが。ていうか、そういった信仰の根本にあるものは共通していて、その共通した普遍的な部分を表現してるのかなと思った訳です。
森羅万象、この世界に宿る、目には見えない「何か」に対する畏敬の念。人間の思う善悪では割り切れないもの。人知では理解し得ないもの。けれど同時に人間の無意識の領域に潜んでいて、理性によって覆い隠された本能を呼び起こそうとしているもの。
近代化された世界では、表向きそういう「何か」は「ない」ということになっている(キリスト教なんかにかかれば、「それは悪魔だ」と切り捨てられて終わりそう)。だけどやっぱり皆、心のどこかで「「何か」があるんじゃないか?」と思い続けてません?
だから本来科学技術の産物であるはずのビデオテープに、死者の恨みの念が取り憑いて人を呪い殺すような映画がヒットするんじゃないんでしょうか。
…という訳で、話が再び和製ホラーに戻って来ました(笑)。
要するに、入口はドコでもいいんですよね。和製ホラーでも民俗学でも。深く掘り進めて行き着く所は同じ。目を凝らして覗き込む、何も見えないけれど「何か」がそこにいる不可視の領域。

…たかがスケートでここまで思考がぶっとばせるからこの人の表現は面白い…。

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6 コメント

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Unknown (なおみ)
2007-09-17 14:38:27
虹川さん、こんにちは。
とても興味深く読ませて頂きました。
私は「何か」を信じている非科学的人間なせいか、一緒にぶっ飛んでしまいましたよ。
うまく表現できないですけど、ロングバージョンの伸びた部分のステップがね、特にそう感じるんです。アレは当然宮本さんが振付けたんでしょうが、大ちゃんが本能のままに踊り狂ってるみたいな印象でした。グルグル回りながら踏むステップもちょっと宗教儀式っていうか、トランス状態っていうか危ない感じ…。
ロングバージョンの脳内映像を消したくなくて、バチェの録画が今も見られないです。10/7にはロングバチェがTV映像で見られるはず!楽しみですねっ!
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Unknown (虹川 章)
2007-09-17 23:24:46
>>なおみさんこんにちは。
私も「何か」を信じてる…というか、世界の全てを人間が理解できる訳じゃないんだろうなーと漠然と思ってるクチです。
ロングバージョンのバチェラレット、見られた方が羨ましいです。初期型はよく見るとサーキュラーステップがないのかな?ステップ以外の部分でも踊ってるけど、やぱりステップこそ大ちゃんの真骨頂なんでしょうね。
10月7日は、ロングバージョンをテレビでやってくれるんでしょうか。
それにしても本当に勤労青年ですね。ご苦労様と言ってあげたい。
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Unknown (みどり)
2007-09-23 22:37:20
こんにちは。
お久しぶりです。
虹川さんの文章を読んでいると、「あぁそうだったのか・・」って勝手に衝撃を受けて、大ちゃんの演技を再度見直してみようという気持ちにいつもさせられてしまいます。
バチェラレットは、大ちゃんの演技を見た荻原次晴さんも「己の為に滑ってるようにみえる」とおっしゃってましたけれども、虹川さんの欲求という言葉にすごく納得してしまいました。
ここから先はちょっと私の勝手なバチェラレットの印象なのですが
ドリームオンアイスとフレンズオンアイスを見たのですが最初のドリームの時は未知なものに出合った感じで、頭が混乱したのを憶えています。善悪がつかない演技と自分は思ってしまいました。でもフレンズの時には、すっごく不思議な世界に引き込まれていって、やっぱり大ちゃんの演技は何度でも観たい、ずっと観ていたいと気づかされました。
バチェラレットはEXロクサーヌと違い、何かが気になるんです。
それを知らなくちゃいけないんじゃないかと勝手に思ってしまっている気がします。
やっぱりそれは虹川さんのおっしゃる「何か」なんでしょうか・・・。
自分の事だけど自分がわからないです(笑)
個人的な感想を長々と失礼しました。
私もロングバージョンを観れるのを楽しみにしています。
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Unknown (虹川 章)
2007-09-24 21:13:03
>>みどりさんこんばんはお久しぶりです。
バチェラレットは特に、見る側の想像力の入り込む余地が大きい分、色んな人の意見を聞いて「そういう見方もできるのか!」とうなずく楽しみがありますね。
荻原さんの件の台詞はThe Iceの時でしたっけ。真剣に演技を見てくれてるんだなあと、嬉しくなった記憶があります。ノリはゆるいけど真摯な方ですね、荻原さん。
スタンダードなフィギュアの表現からは大分離れているので、最初は戸惑った人が多かったみたいですね。私は元々「変な物好き」の傾向があるので、結構一発でツボに来ました(笑)。
>何かが気になる。
友人も言ってましたが、見ている人間の内面に直接問いかけて来るような表現だと思います。見ている私たち自身の心の中にある暗闇をひきずりだそうとしているような。そこに意識が向かない人(結構多いと思うんですが)には何も響かないかも知れない。でも少しでも反応してしまうとあとはずるずるずる~…と。
でも私、元々性格悪いんですよ。人の心の隠れた暗黒面を、その必要もないのに暴き立てるような真似を何故かしてしまう。だからこの表現はすごく好きだしツボだったりします。
ロングバージョン、見たいですよね。楽しみです。
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Unknown (みどり)
2007-09-25 23:16:32
こんばんは。
記事を書かれてから日数がかなり経ってからのコメントだったのにお返事ありがとうございます。
>荻原さんの件の台詞はThe Iceの時でしたっけ。
えぇっと確かそうです。
荻原さんって他の選手へのコメントも結構好きなんですよ。なんだか真剣に見てくれてる気がしますよね。それから大ちゃんに好意的な気がするから、私も次晴さんに好意的なんです(笑)。結構単純ですね・・・。
バチェラレットは知らなくっちゃというのと知りたいという気持ちと、実は怖そうだし知りたくもない気持ちもあるんですよ。
昔からおばけ屋敷は遊園地に行っては毎回入るけど全部を見た事がないという怖がりなので・・(笑)
目と耳を塞いでチラ見をしながらやっぱり今回もダッシュしてしまうかも。「知らなくていいから逃げろ」と本能的に思ってるのもあるのかも知れないです。
話は変わるんですが新プログラムは、モロゾフコーチの話だとヒップホップとロミオとジュリエットの可能性があるみたいですね。どんな表現をしてくれるのか今からとっても楽しみで仕方がないんです。もう少しで見れますね。
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Unknown (虹川 章)
2007-09-26 16:10:41
>>みどりさんこんにちは
昔の記事でも、コメント頂ければ嬉しいですよ。
>次晴さん
肩の力が抜けてる感じが良いですね。変に力を込めてる人に限って、「熱心に応援する自分」に酔ってて選手をちゃんと見れてない人が結構いる気がするので。こういうのんびりした人の方が安心して見れるなあ、とCSの番組を見てて思いました。
>「知らなくっちゃというのと知りたいという気持ちと、実は怖そうだし知りたくもない気持ち」
私にとっては、「ノクターン」を見た時の感覚が正にそれでした。
ちなみに私もおばけ屋敷は苦手で、途中で目を瞑って友達に引っ張って貰う迷惑なヤツでした(笑)。でも怖いもの見たさで入っちゃうんですよね。
気づかなければそのままで良かったものに気づかされてしまったから、怖いんだけど無視もできない。そういう表現をするのがこの人のある種特異な才能だと思います。
>新プログラム
7月時点での話ですよね。あれからどうなったのか、早く知りたいし観てみたいですね。
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