彼の作品を見るため、三次の奥田元宗・小由女美術館に行ってきた。NHKの日曜美術館で放送されたので、ご存じの方も多いと思う。
初期の作品は不器用そのもの、スタイルを確立するまでの苦悩が見て取れる。生真面目な彼が選んだスタイルは、驚くほどの手数を傾ける忍耐だ。近づいてみるとよく分かる。筆跡は細くなるが、筆致はやはり不器用なのだ。描くことが見ることだということがわかる。驚くべきは、これほど細部にこだわりながら全体のバランスだ。キャンバスに近づき離れる、幾万回の歩数と手数を要したのか。確立した作風を縦横無尽に振るう、後半になると絵の具の厚さは減る。苦悩が確信へと変わる様子が見て取れる。彼の円熟を見ることが出来ないのが、本当に残念だ。やっと手に入れたスタイルだったのに、その真面目さが彼を奪う。若くして山で遭難死した。現代において、画家の苦悩をこれほどに感じられる作品は少ない。ぜひ足を運んでいただきたい。
三次市の奥田元宗・小由女美術館。12月25日(火)まで。12月12日(水)休館。一般1000円。ペア券(男女)1900円。