2020/07/17 19:49毎日新聞
ハイオク「レギュラーと同じ汎用品」 石油連盟会長「品質に差ない」 混合出荷
ハイオクガソリンの混合出荷問題で、石油元売り各社などで作る業界団体「石油連盟」の杉森務会長(ENEOSホールディングス会長)は17日の定例記者会見で、「各社のハイオクの品質はほぼ同じ」と発言した。各社の独自製品とされてきたハイオクについて、業界トップが品質に違いがないことを認めたのは初めて。
会見後には「(レギュラーガソリンと同様に)今は汎用(はんよう)品の一つ」とも述べた。
混合出荷問題は、毎日新聞の報道で明るみに出た。各社はタンクの共同利用や、自社の製油所やタンクのない地域で他社製品を買い取って自社製として販売するバーター取引をしている。こうした流通体制によって、「各社の品質は同じになるのではないか」と質問したところ、杉森会長は「そのように考えた方が早い」「それほど大きな品質の差はない」などと答えた。
各社のブランドを信じて販売してきたスタンド経営者や消費者から、「裏切り行為だ」との批判の声が上がっているとの指摘に対して、杉森会長は「我々はバーターであろうが、自社の商品規格に合ったものを管理、保証している。決して裏切りにはならない」と述べた。
石油連盟が「独自ルートで供給している」と説明してきたハイオクの流通体制が変わった経緯について、杉森会長は「(元売り各社が)合併に合併を重ね、効率化を求められた」と述べた。今も各社が独自に性能を宣伝している点に関しては「昔の競争の歴史が今日まで引きずられている問題があったかもしれない」と述べた。また、現在の流通体制が始まったのは「2000年代ぐらい」とした。
消費者への説明責任については、「ハイオクに限らず、バーター取引は全てしている。そこを消費者にお知らせしなかった。必要があれば、ちゃんと開示していきたい」と述べた。
◇性能虚偽宣伝「残念に思う」
一方、コスモ石油やキグナス石油がハイオクの性能を虚偽宣伝していた問題については「消費者の皆様に迷惑をかけることになり、大変残念に思う」とし、連盟の理事会でコンプライアンスの順守を求めたことを明らかにした。【遠藤浩二】
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/mainichi/business/mainichi-20200717k0000m020222000c
割高な「ハイオク」は“混合物”だった…ガソリンスタンドと石油元売りがひた隠す虚偽商法
2020.07.20 15:40 Business Journal
https://biz-journal.jp/2020/07/post_169363.html
「ハイオク」をめぐる不可思議な業界慣習が浮き彫りになりつつある。毎日新聞は今月20日、記事『ハイオク虚偽宣伝 消費者庁がコスモ石油を調査 景品表示法違反の疑い』で次のように報じた。
「石油元売り3位のコスモ石油がハイオクガソリン『スーパーマグナム』の性能について、少なくとも10年以上、『使い続けるほどエンジンをきれいにしてくれる』などと虚偽宣伝していた問題で、消費者庁が景品表示法違反(優良誤認)の疑いで調査に着手した。関係者が明らかにした。同庁は調査を通告し、宣伝の根拠となった資料の提出などを求めているとみられる」
同記事では、スーパーマグナムが1992年の販売開始以来、汚れを取り除く添加剤が入っていないのに、「清掃剤が添加されている」「エンジン内をきれいにしてくれる」などとホームページ上で宣伝していたと指摘した。事実なら、レギュラーより割高な同商品をあえて選んで給油していたユーザーは到底納得できない話だ。
貯蔵タンクで他社製ハイオクを混合?
だが、ハイオクをめぐる問題はコスモだけではない。コスモ、エネオス、出光・昭和シェル、キグナス石油、太陽石油の大手5社のハイオクについて、毎日新聞は6月27日、記事『ハイオクガソリン、実は混合 独自開発のはずが…20年前から各地で』とスクープした。同記事を引用する。
「石油元売り5社がオリジナルブランドで販売し、業界団体が『各社が独自技術で開発した』と説明していたハイオクガソリンが、スタンドに出荷する前段階で他社製と混合されていることが毎日新聞の取材で判明した。物流コスト削減を目的に貯蔵タンクを他社と共同利用するようになったためだが、各社は公表していない。複数の関係者は『混合出荷』は約20年前から各地で行われていると証言する。高級ガソリンのハイオクは各社の独自製品と認識して購入する消費者も多く、情報開示のあり方が問われそうだ」
石油元売り各社は独自ブランドとして「スーパーマグナム」「出光スーパーゼアス」「α‐100」などさまざまな銘柄を売り出している。いったいこれはどういうことなのか。
「各社とも品質は横並びだから混合でも問題ない」
宮城県仙台市のガソリンスタンド(GS)経営者は、以前からハイオクの混合があったことを認めた上で次のように話す。
「低燃費車が増えたことや、自動車ユーザーの絶対数が減っていることでガソリンの売上が減っています。さらにリーマンショックや東日本大震災などの不況の影響が業界を追撃しました。そうしたなかで元売りは貯蔵タンクや物流の相互相乗りなどでコスト削減を図ってきました。
一方、GS側も地下タンクの設備更新なども経営の重荷になっています。仙台のような地方の中核都市では幹線道路に競合他社のGSが立ち並び、熾烈な価格競争が行われてきました。毎朝、従業員を走らせて他のスタンドの値段を偵察に行き、うちのGSだけが高値になっていないかチェックします。そんなダンピング合戦で体力を削られ続け、廃業する同業者の数はうなぎのぼりです。
レギュラーに関していえば、売上の最前線を担っているGSの絶対数が減っていることから、元売り系列のGSだけでは在庫をさばききれないという実情があるのではないでしょうか。その半面、『ライフラインを維持しろ』という政府の要請もあって、各社の製油所では実需要より多めに生産し、一層、ガソリン余りに拍車がかかっているようです。
そのため、業界で言うところの業転玉(製油所で余ったガソリンを、異なる元売り会社の系列スタンドが購入したり、系列に属さない独立系のガソリンスタンドが仕入れたりすることで、系列店より安い価格で販売する)も増えています。
一方でハイオクは売上の1割以下ですし、あまり利益になりません。うちへの配送前に貯蔵タンクで他社のハイオクが混合されていることは知らされていましたが、元売りの担当者は『混合しても基本的に各社横並びの性能なので、品質にまったく問題はない』と説明していました。
ただ、今回のコスモ石油のスーパーマグナムの件のように一部製品の品質が異なっていたとなると話は別だと思います」
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石油元売りの統廃合が進み、業界は寡占状態が続く。
ガソリンの安定供給は必要だが、消費者をだますような説明があったのなら問題だ。
業界のあり方にメスを入れる時期が来ているのかもしれない。
(文=編集部)
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