2003年6月29日(日)
#174 高中正義「アローン」(ポリドール 28CK0030)
高中正義、81年リリースのアルバム。
76年の「セイシェルズ」以降、着実にアルバムをリリースしてきた彼にとっては、10枚目にあたる作品。
彼の初期のサウンドのイメージは、「ひたすらラテンでネアカ」というものだったが、このアルバムではしっとりとした大人っぽいバラード・プレイも聴かせている。
<筆者の私的ベスト4>
4位「"SPEED OF LOVE"」
アルバムではトップに収録。タイトル通り、ひたすらスピーディでスリリングな音を聴かせてくれる。
高中の多重録音によるツイン・ギターが実にカッコよろしく、ゲストの上田正樹のシャウトが、サウンドにさらに迫力を加えている。
ドラム(渡嘉敷祐一)、ベース(高橋ゲタ夫)らのプレイも最高にノリが良い。腰にビンビン来る音ナリ。
高中のナンバーとしては、結構ハードでヘヴィー。ストイックささえ感じる辛口のサウンドで、筆者としては気に入っている。
3位「SHE'S RAIN」
これはどちらかといえば、従来の高中サウンドの中心ともいうべき、明るく軽やかな路線。
一聴してすぐストラトキャスターとわかる、カラッとしたギターのトーンが魅力的。
これを使って、パーカッシヴなプレイを聴かせてくれるのだが、ホント、心までウキウキしてくる。
バックには全面的にストリングスを導入、ギターとの相性も意外によい。
2位「THE NIGHT DELAY」
ドラマチックなイメージの一曲。「SHE'S RAIN」同様、星勝がストリングス・アレンジを担当。これがさすがの出来ばえ。
全編、ギター・サウンドとストリングスのコラボレーションにより、きわめて精緻なサウンドが展開する。
単にギター・プレイヤーとしてテクニックがあるだけでなく、コンポーザー、アレンジャー、サウンド・クリエイターとして見ても、高中正義は超一流のひとだと思う。
この曲での泣きのギター・プレイも、もちろん気合いが入っていて素晴らしいが、何より、音の全体的なまとまり、バランスがよい。再聴、三聴にもたえうる音とは、こういうのをいうのだろう。
1位「ALONE」
1位はやはり、このタイトル・チューンだろうな。もちろん、他のすべてのナンバー同様、高中の作曲。
脳天気なプレイだけが、オレじゃないぞとばかり、メロウでメランコリックなバラードを演奏しているが、これがなかなかよろしい。
ラテンのパーカッション・サウンドにのせて、ストラトキャスターを泣かせまくる高中。
若干サンタナっぽいなという感じはあるが、タメのきいたオーヴァー・ドライヴ・サウンドが耳に心地いい。
何コーラスものギター・ソロを含めて、すみずみまできちんと計算されたアレンジ。すべて高中本人が編曲しているのだが、ストリングスの使い方もうまい。
極めて「職人」的な仕事だな~と感じます。ロックの自然発生的、偶発的なサウンドの面白さとはまた違うのですが。
同年リリースのアルバム「虹伝説」と合わせて、彼の音楽の円熟ぶり(といっても当時まだ28歳という若さだったが)を示す作品といえそう。
ギタリストなら、一度はチェックしてみて欲しい。
<独断評価>★★★★