2003年9月7日(日)
#184 リック・デリンジャー「ALL AMERICAN BOY」(BLUE SKY ZK 32481)
リック・デリンジャーの初ソロ・アルバム、74年リリース。
マッコイズ、ジョニー・ウィンター・アンド、エドガー・ウィンター・グループ等を経て、ブルースカイ・レーベルからソロ・デビュー。リックの記念すべき一枚である。
<筆者の私的ベスト4>
4位「UNCOMPLICATED」
タイトルからして「単純明快」だわね。こみいったことはいらねーぜ!とばかりに、軽快なビートに乗せてキャッチーなロックン・ロールを歌い、弾きまくるリック。
そーゆー脳天気なところ、突き抜けた明るさが、筆者もけっこう気に入っている。
十代のころは、ブリティッシュ・ロックの重く、暗~い世界にハマっており、アメリカン・ロックはさほど好きでなかった筆者ではあったが、リックの音は例外的に「カッコいいな~」と思っていた。何でだろ。
いま思うに、この曲のように、余分な音を極力削ぎ落として、ごくごくシンプルにまとめたバンド・サウンドだったから、ということになるのだろうか。
ジョー・ウォルシュもゲストで参加、リック同様、ソリッドでごきげんなギター・プレイを聴かせてくれる。
とにかくシンプル、そしてパワフル。思わず体が動き出すこと、請け合いである。
3位「JUMP, JUMP, JUMP」
このタイトルだから、さしずめ激しいジャンプ・ナンバーかと思いきや、見事に予想は裏切られる。
エドガー・ウィンターのピアノに乗せて奏でられる、メロウでメランコリックなスロー・バラードなんである。
サックス・ソロもまじえて、しっとりとしたジャズィなムードで迫る。たまにはこういうのも、オツでんな~。
リックの、幅広い音楽性を証明する、よきサンプルといえそうだ。
2位「TEENAGE LOVE AFFAIR」
再びポップなロックンロール・ナンバーを。「UNCOMPLICATED」もそうだったが、この曲もその後ライヴでの定番曲になっており、「デリンジャー」というバンド名義でもライヴ録音を残している。
みょうに甲高いヴォーカルがなんとも印象的。シンプルで覚えやすいリフレイン、ひたすらノリのよいサウンドは、まさにリックの表看板だな。
またギター・ソロでは、当時流行のヴォイス・モジュレーターを使用しているのがミソ。
1位「ROCK AND ROLL HOOCHIE KOO」
1位となると、やはりこのトップ・チューンしかないだろう。リックといえば、この曲!というぐらい、おなじみのロックンロール・ナンバーだ。
そもそもこの曲はジョニー・ウィンター・アンドのデビュー・アルバム(70年)で初お目見え、エドガー・ウィンターズ・ホワイト・トラッシュのライヴ盤「ロードワーク」(72年)でも演奏するなど、リック自身、たいそう思い入れがあるようだ。
ソロ・デビュー盤でもトップに持っていたあたりに、「これがオレの看板」という意気込みが感じられるね。
で、その出来ばえも、もちろん素晴らしい。
リックはヴォーカル、ギター、ベース、タンバリンの四役をこなすという熱の入れよう。もちろん、イカしたソロもたっぷり聴かせる。
実にハードなサウンドだけど、ライト。けっしてヘヴィーじゃないので、聴いててもたれない。そのへん、実に絶妙なんだわ。
アメリカン・ハードロックの粋、ここにあり、ですな。
他の曲にも、なかなか面白いものが多い。さすが満を持して制作されたデビュー・アルバムだと思う。
たとえば、インストの「JOY RIDE」からシームレスに続く「TEENAGE QUEEN」では、12弦アコギやストリングスも交えて、大人っぽいバラードを聴かせてくれる。
また、「CHEAP TEQUILA」は、リック自身がペダル・スティール、デイヴィッド・ブロンバーグがドブロを弾く、もろカントリー調のナンバー。
「HOLD」や「THE AIRPORT GIVETH」はピアノ・サウンドといい、メロディ・ラインといい、キャロル・キング、ビリー・ジョエル、トッド・ラングレンにも通ずるものがある、MOR系ナンバー。やかましく騒ぐだけがリックではないのだ。
他にもトロピカル・ムードの「IT'S RAINING」、スピーディなアコギやシタールでフュージョン風演奏を聴かせる「TIME WARP」なんてのもあって、興味深い。
そういう風にやたら引き出しの多いリックだが、でもやはり、彼の基本はネアカなロックンロール。
彼が、頭のてっぺんから抜けるような声で「OK!!!」と叫ぶだけで、もう十分。
血わき肉躍る、最高にスリリングなロックを、約束してくれる。
ということで、30年の歳月などおかまいなしに、今もホットな一枚。ジャケットもご機嫌。
ひとつだけ欲を言えば、ブルース調の曲が一曲は欲しかったけどね。
<独断評価>★★★★