NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#181 レッド・ツェッぺリン「HOW THE WEST WAS WON(伝説のライヴ)」(ATLANTIC 7567-83587-2)

2022-05-14 05:03:00 | Weblog

2003年8月17日(日)



#181 レッド・ツェッぺリン「HOW THE WEST WAS WON(伝説のライヴ)」(ATLANTIC 7567-83587-2

レッド・ツェッぺリン、未発表音源によるライヴ盤。この5月にリリースされたばかりの3枚組だ。

今年はグループ結成35周年にあたることもあって、これまで封印されて来たお宝ライヴ音源&映像もどっと放出され、一ZEPファンの筆者としては随喜の涙にむせんでいるところだ。

本CDは、72年の全米ツアー中の、ロング・ビーチ・アリーナ、LAフォーラムでの演奏を収録。

彼らのほぼベスト・コンディションな時期のライヴを、約2時間半にわたってたっぷりとたのしめる。

DVDとはまた別のテイクなので、ファンとしては両方聴かないとダメという仕組みであります。さすが商売上手やな~(笑)。

<筆者の私的ベスト5>

5位「MOBY DICK」

本作では2枚目ラストに収録。ペイジ、ジョーンズ、ボーナムの共作。

この曲は彼らのセカンド・アルバムにて初登場。オリジナル・ヴァージョンは、わずか4分20秒というコンパクトなものだった。

それを19分20秒と、LPなら片面丸ごとにあたる大作に仕上げている。

皆さんご存じのように、この曲はイントロとエンディングを除けばジョン・ボーナムのソロなので、ずっと彼の演奏だけを聴かされるわけだが、この長時間、聴き手をまったく退屈させないというのはスゴい。

リズムだけのはずなのに、ボンゾのドラムは、もうメロディ楽器のよう。繊細な音から豪快な音まで、まさに変幻自在。バスドラ、タムの使い方などに天才的なものを感じるね。

他のどのドラマーとも異なる、独自のグルーヴを持ち、パワー、テクニック、フィーリング、すべてにおいて頂点に君臨したドラマー、ボンゾ。やっぱあんたは無敵や。

4位「SINCE I'VE BEEN LOVING YOU」

本作では1枚目に収録。サード・アルバムがオリジナル。プラント、ペイジ、ジョーンズの共作。

筆者的にはZEPのナンバー中、ベスト3に入る名曲だと思っている、マイナー・ブルースだ。

本盤でのプレイも、スタジオ・テイクに負けず劣らず素晴らしい。

プラントの最高にエモーショナルなヴォーカルもさることながら、同じくらい見事なのは、ペイジのギターだ。

彼はプレイにむらがあるタイプのギタリストで、特にクロウト筋の評価はいまイチ(平たくいえば「ヘタ」よばわりされている)だが、この曲のプレイを聴けば、そういう「けなし」が全くの戯れ言だということが判る。

この緩急自在の、気合いに満ちたソロを聴いて「ヘタ」よばわりするヤツは出てこい。オレがそいつの演奏を聴きに行ってやるぜ! そんな感じ(笑)。

ジョーンズのオルガン、ボンゾのドラムも、最高にソウルフルなグルーヴを生み出している。もう、文句なしである。

3位「DAZED AND CONFUSED」

本作では2枚目トップに収録。第5期ヤードバーズ以来のレパートリー。ペイジの作品(実際はジェイク・ホームズ)。

ファースト・アルバムで初収録。以来、80年の解散に至るまで、彼らのほぼ全部のステージで演奏されて来た、十八番的ナンバーだ。

本テイクでは25分25秒を費やして、迫力のパフォーマンスが延々と展開される。

われわれはこの曲を、既発表のライヴ・アルバム「永遠の詩」、あるいは「BBCライヴ」、そしてさまざまなブート盤で何度となく聴いて来たわけだが、それらと比べても、このLAフォーラムでの演奏は最高水準にあると言えるだろう。

プラントの喉のコンディションもまずまずのようで、超高音シャウトもバッチリと決めてくれる。

そしてもちろん、聴きものはペイジのメリハリに富んだギター・プレイ。

まずは、おなじみのヴァイオリン・ボウを駆使した幻想的なサウンド。ビデオなら視覚的にも「魅せる」ところですな。

まるでジプシー・ヴァイオリンか、はたまた中近東音楽かといったエキゾチックな音に、プラントのセクシーなヴォイスが絡む。そして、ボンゾのドラムも。

混沌としているように見えながら、オーディエンスの気を一瞬たりともそらさない。

中盤、再びアップテンポでリズムが走り出す。もう、ぞくぞくする展開だ。

乱調ながらも猛烈なテンションで疾走するペイジのギター。他の三人も負けじと付いて行く。

テンポ・チェンジして、ファンクなノリに変わる。そう、「THE CRUNGE」のフレーズである。

その後ちょっとクールダウン、プラントとの掛け合いを経たのち、いよいよハードさを増して弾きまくるペイジ。

彼らの他のいろんな曲の要素を取り込み、綴れ織りのように再構成して聴かせてみせる。

勝手気ままに弾いているように見えても、リズム隊とのコンビネーションを常に緊密に保っているのを見ると、実はすべて念入りに計算され、組み立てられているのですな。この25分は。

アレンジャーとしてのペイジの才能を再認識する一曲。ほんにお見事です。

2位「STAIRWAY TO HEAVEN」

本作では1枚目、「SINCE~」に続いてプレイされる。オリジナルは「IV(フォー・シンボルズ)」に収録。プラント、ペイジの作品。

もう説明するのが野暮なくらい、ZEPといえばこの曲!というくらいの代表曲。

個人的には決してトップではなくて、「SINCE~」のほうがずっとオキニなんだが、でもよく出来た曲だと思う。

原曲は8分超なので、それより少し長めの9分38秒にわたる演奏。

ペイジがレスポールを巨大なダブルネックSGに持ち替えて登場。もうこれだけで、オーディエンスの期待は一気に高まる。実に見事な「つかみ」のテクですな。

曲は、あの余りにも有名な12弦ギターでのイントロから静かに始まり、徐々に熱気をはらんでいく。

プラントの抑えのきいた歌も、実に説得力がある。ジョーンジーのキーボードがこれに彩りを添えていく。

12弦ギターの響きも美しく、また中間部のロング・ソロも、他のライヴ盤以上に出来がいい。

最後は、文字通り階段をのぼりつめるようにして、エクスタシーへと到達していく。まさに名演。

四人が渾然一体となったグルーヴ、これこそが世に言う「レッド・ツェッぺリン・マジック」だろう。

1位「WHOLE LOTTA LOVE」

3枚目トップ、ステージのハイライトにあたる一曲。オリジナルはセカンド・アルバムに収録。メンバー四人の共作、そして歌詞の大半はウィリー・ディクスンの「YOU NEED LOVE」に拠っている。

いうまでもなく、ZEPを全世界に知らしめた代表曲。シンプルなワンコードリフの繰り返しが印象的なナンバー。

コンサートでも当然、トリに演奏されることが多かった。そして、長年演奏しているうちに、さまざまなオールディーズ・ナンバーを取り込み、超ロング・メドレーへと進化していったのである。

もち、本作でも23分8秒の大作となっている。まずは「WHOLE LOTTA LOVE」本曲、そしてその間奏に続いてジョン・リー・フッカーの「BOOGIE CHILLUN」、ジェリー・リーバー作の「LET'S HAVE A PARTY」、ジーン・ピットニーの「HELLO MARYLOU」、ジェイムズ・オーデンの「GOIN' DOWN SLOW」と、黒人・白人、ブルース・カントリーとりまぜた多彩な選曲で、プラントの音楽的ルーツを問わず語りで教えてくれる。

筆者的には、スローでヘヴィーな「GOIN' DOWN SLOW」が面白いと思う。

原曲のイメージは見事に破壊されているが、歌もギターもちょっとオーバーな表現は、まさにZEP流。

で、最後は「WHOLE LOTTA LOVE」に戻って、見事に締めくくり。観客のノリも最高潮で、本曲のベスト・ライブテイクといって問題ないだろう。

…とまあ、長い曲ばかりになってしまった。別に短い曲が出来が悪い、つまらんというわけではないのだが、やはりZEPの本領はタフな演奏力を必要とする長尺のナンバーにあり、という気がするので、結局こうなってしまった。

もちろん、小ぶりな曲にもなかなかいい仕上がりのものがある。

例えば「IMMIGRANT SONG」「BLACK DOG」「THAT'S THE WAY」「ROCK AND ROLL」などなど。どれも実にカッコいい。明らかに「永遠の詩」ヴァージョンより、気合いの入った演奏だ。

最強のライヴ・バンドとしての証明たる一作。往年のZEPを知るひとも、そうでないひとも聴くべし。

ところで、余談だが、本アルバムのタイトルはジョン・フォードら三監督によるシネラマ映画「西部開拓史」(ジョン・ウェイン、ヘンリー・フォンダ他主演)の原題から取られたのだが、そのココロは? もしご存じのかたがいらっしゃったら、ご教示いただきたい。

<独断評価>★★★★☆