2003年10月12日(日)
#190 クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング「DEJA VU」(MMG/Atlantic 20P2-2355)
CSN&Y、70年リリースのアルバム。前年の「CROSBY, STILLS & NASH」に続く、ニール・ヤング正式加入後初のアルバム。
アメリカのみならず、日本でも大ヒットしたこのアルバム、筆者も中2の頃カセットで購入、テープが擦り切れるまで聴いたものだ。現在ではこうして、CDに買い換えて聴き続けている。
発表して33年もの歳月が経過したわけだが、いまだに聴く度に新鮮な感動をもたらしてくれる。これぞ、名盤中の名盤といえよう。
<筆者の私的ベスト3>
3位「TEACH YOUR CHILDREN」
某キントト映画のサントラで使われたこともあって、スマッシュ・ヒットしたシングル曲。グレアム・ナッシュの作品。
CSN&Yの大きな魅力のひとつである、カントリー、フォーキーな面を前面に押し出した曲調。
クロスビー、スティルス、ヤングの弾くアコギに、ジェリー・ガルシアの達者なペダル・スティールが絡み、いかにも陽性なサウンドに仕上がっている。
そしてもちろん、メンバー四人の強力なコーラスが、この曲の決め手。
ナッシュがほどよく甘い声で歌う主旋律、それをそれぞれ声質の異なった三人がサポート。実に見事なハーモニーだ。
筆者の所属していた、中学・高校のフォークソング・サークルでは、この曲がコンサートの締め括り、メンバー全員で歌う定番曲だったのを思い出す。
これもまた、筆者にとっての「青春の一曲」なのだったなと、いまにして思うのである。
2位「WOODSTOCK」
「TEACH~」がCSN&Yのフォーキーな面の代表曲であるなら、この「WOODSTOCK」はロックな面のそれといえるだろう。これまたシングル・カットされ、ヒットしている。
作者は女性シンガー・ソングライターのジョニ・ミッチェル。知っている人は知っているだろうが、彼女はCSN&Yのメンバーとゆかりが深く、一時はクロスビー、のちにはナッシュの恋人でもあった。
CSN&Yは、前年8月15日~17日に開催された「WOODSTOCK MUSIC & ART FAIR」に出演し(レコードにはCS&Nとしかクレジットされていないが、実はヤングも参加していた)、後日、同フェスティバルの記録映画の主題曲をレコーディングすることになる。それがこの「WOODSTOCK」というわけだ。
ジョニ・ミッチェル自身のヴァージョンが、わりとまったりとしたバラード調なのに比べて、CSN&Y版のアレンジは結構ハードで、音もライヴっぽく録れている。
スティルスとおぼしきギター・ソロも、かなりトリッキーな感じ。
その、骨太でハードなサウンドの上に、四声のハモりがバッチリ決まっているのだから、最強のひとこと。
当時、「ビートルズを超えたスーパー・グループ」という風評があったのも、十分うなずけるだろう。
だが惜しいことに、四人の人間関係がなかなかうまく行かず、数年でグループは空中分解してしまう。
その後、何度も復活しては活動休止を繰り返して、現在に至っているのだが、やはり一番の「旬」は、この第一期だったことは万人が認めるだろうね。
何より、声が若々しく、パワーに満ちあふれている。これぞ、ロックですな。
1位「CARRY ON」
このアルバム、もう、名曲揃いなので、実は全曲に満点をつけたい気分なのだが、そのなかでもよりすぐりの一曲といえば、これじゃないかな?
え、ちょっと意外だったって?
たしかに、シングル向けのキャッチーな曲とはいいがたいのだが、筆者の考える「もっともCSN&Yらしい一曲」なのである。
アコギだけで始まるあのアップテンポのイントロを、一番最初に聴いたときのショックには、物凄いものがあった。
アコースティック・ギターはある意味、エレクトリック・ギター以上の衝撃をもたらすのだなと、その時初めて感じたのである。
そして、それに続くあの見事なコーラス。もう、完全にノック・アウトされちまったものだ。
ハードなシャウト以上の「音圧」が、彼らのハモりにはあるんだよなぁ。
さて、このちょっと風変わりな組曲風のナンバーを書いたのは、スティルス。前半では、スティルスの物憂いフレーズが印象的なギターをフィーチャー。
ブレイク後は、ラテン風ビートにチェンジ、オルガンをフィーチャーしたサイケ調サウンドが続いていく。このあたりも、実に新鮮な展開だった。
アコギ・サウンドと、エレクトリック・サウンドが、違和感なく融合している音、これぞ彼らのオリジナリティだと思いますね。
他の曲にはあえてふれないが、どれをとっても超一級の出来ばえ。四人四様の強烈な個性が組み合わさることで起きた、驚異的な「化学反応」がこの一枚。
聴く者すべてを魅了するにちがいない。絶対のお薦めです。
<独断評価>★★★★★
2022年11月24日(木)(再投稿)
クロスビー、スティルス、ナッシュ・アンド・ヤングのファースト・アルバム。70年リリース。
筆者としては、中学生になって自分の小遣いで買った3枚目か4枚目かに当たるレコードだ。
こういう表現をするといささか恥ずかしいのだが、自分にとって「青春の一枚」的なアルバムなんである、これは。
なんていうか、甘酸っぱく、ひたすら愛おしい一枚。
その理由は、おそらく筆者と同世代のかたがたなら、すんなりと納得いただけるのではなかろうか。
まだ、女の子と付き合ったこともない、ウブな中坊の少年にとって、このCSNYのフレッシュなサウンドは、青春の甘さ、苦さ、期待感、失望、そして喜びといった諸要素をすべて包含しているように見えたからだ。(遠い目)
前書きが長くなった。本題に入ろう。
前年の69年に鮮烈なデビューを果たしたCSNは、サウンド面の強化、よりロック的なアプローチのため、増員を試みる。
その結果、メンバーのひとりスティルスの、過去のバンドメイトであったニール・ヤングが加入することになる。
そして、この名アルバムがリリースされることになるわけだ。
前作のアコースティック・ギター中心のサウンドから大きく変化して、ロック・バンド的な音が大きく加味され、本作によりCSNYは70年代を代表する「スーパー・グループ」としての評価を確立するに至る。
ウッドストック・フェスティバルに出演したことにより生まれた「ウッドストック」を初めとして「ティーチ・ユア・チルドレン」などのヒット曲もここから生まれた。
固定ファンだけでなく、一般リスナーにもそのグループ名が広く知られるようになったのは、本アルバムあってのことだろう。
CSNYイコール、最強のハーモニー、コーラスを誇るバンドというイメージが、一般的にも定着した。
ただ、ここでひとつ強調しておきたいことがある。
ニール・ヤングという新メンバーはあくまでもギタリスト、そしてソングライターとして呼ばれたのであって、「ハーモニー・パート要員」「コーラス要員」として招聘されたのではなかった、という事実だ。
それは、各曲のパーソネルをよくよく確認することで、はっきり判る。
ニール・ヤングが歌を担当するのは、あくまでも彼が作った曲のリード・ボーカルにおいてのみなのである。
もちろん、他の三人はバック・ボーカルに入るので、結果的には四声になるのだが、ヤング以外のメンバーがリード・ボーカルを取る曲では、ヤングは歌うことはない。三声がギリ限界なのだ。
ボーカルにおいては、CSNYは必ずしも「一枚岩」ではなかったのだと言える。
そのあたりの微妙なバランス加減、ヤングが孤立しやすい構造的問題が、結局、のちのちヤングがグループを出たり入ったりする現象につながっていったのだろう、と筆者は推測している。
ヤングの意識としてはパーマネント・グループに加入したという意識はほとんどなく、頼まれたからとりあえず助っ人として参加してみた、というのが実情なのではなかろうか。
とはいえ、ヤングの参加により、バンド・サウンドが大きく進化したという功績に変わりはない。
サウンドのバラエティはメンバー四人がそれぞれ作った曲を持ち寄り、それぞれがリード・ボーカルを取ることで生み出され、アルバムに豊穣な実りをもたらした。
「カット・マイ・ヘア」で意外とソウルフルな歌声を披露し、「デジャ・ヴ」で独自の内省的な世界を見せるクロスビー。「ティーチ・ユア・チルドレン」「僕達の家」でひたすら優しい音を奏でるナッシュ。「ヘルプレス」「カントリー・ガール」で抒情的なメランコリーな歌を聴かせるヤング。そして骨太なロック・ギター(「キャリー・オン」)と繊細なアコースティック・サウンド(「4+20」)両方で至芸を聴かせるスティルス。
四人の実力がフルに発揮された「デジャ・ヴ」こそは、当時よく聞かれた「ロックの金字塔」という呼び名に恥ずかしくない一枚だと思う。