NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#195 INAZUMA SUPER SESSION「ABSOLUTE LIVE!!」(EPIC/SONY 328・H-132)

2022-05-28 05:07:00 | Weblog

2003年11月23日(日)



#195 INAZUMA SUPER SESSION「ABSOLUTE LIVE!!」(EPIC/SONY 328・H-132)

今日もまた、「知っとるけ~?」的一枚。87年5月、インクスティック芝浦ファクトリーにてのライヴ録音。

いまはなき、バブル期日本の象徴のようなライヴハウスのステージに立ったのは、ジャック・ブルース、アントン・フィア、そして鈴木賢司の三人。

となると、60年代最強のロック・トリオ、クリームを連想しないわけにいかないよね。

で、ライヴはもちろん、その期待におこたえしてクリームのレパートリーをメインに、ばっちりキメてくれている。

クリームあるいは、ジャック・ブルースのファンならずとも興味津々な一枚のはず。でも残念ながら、現在CDは廃盤、再発の予定もない。

中古店ではけっこう、いい値がついていそうだね。

<筆者の私的ベスト4>

4位「SITTIN' ON TOP OF THE WORLD」

今回、いわばクリームにおける「クラプトン役」を引き受けることになったのが、現在は息の長い英国のロック・バンド、シンプリー・レッドにて活躍中の鈴木賢司だ。

64年生まれの彼ももちろん、クリーム、エリック・クラプトンを聴いて育ったひとりで、当然倉布団爺の完コピなどお手のものだろうが、そこは若くとも日本を代表するプロの意地、絶対倉爺の通りには弾いていない。

倉爺の予定調和的なプレイなんざまったく知らねえよとばかり、ジミヘンも顔負けのエキセントリックで破壊的な音を聴かせてくれる。ええねえ。

日本において、唯一、チャーを越えられるギタリスト(と筆者はふんでいる)、鈴木賢司ならではの快演だ。

で、4位はこの曲。筆者もライヴでは定番にしている、ハウリン・ウルフ、クリームの代表的ナンバー。

ここでの、KENJI JAMMERこと鈴木の、ストラトの派手なアーミングを多用したプレイは、実にカッコいい。

また、クリームのオリジナル・ヴァージョンではフィーチャーされなかった、ジャック・ブルースのハープ演奏がまたいい。

彼のハープも、前回のキース・レルフ同様、なかなか聴かせるものがある。ブルーズィで濃い演奏がたっぷり楽しめる一曲。

3位「CROSSROADS」

アンコールの一曲目で演奏したのは、これ。誰もが期待していたクリーム・ナンバーだ。

ちょうど44才を迎えたばかりというブルース、22才の鈴木、30才のフィア、ロックの各世代が揃った感のある三人の演奏は、けっこうクリーム・ヴァージョンに忠実な演奏。

鈴木も珍しく、クラプトンのフレーズをまんまコピーして聴かせてくれる。ま、これも余興といったところだろうが、これがクラプトン以上にカッコよかったりする。

80年代以降の、いささか気の抜けた倉爺のプレイに比べると、なんとも「熱い!」のである。

リハなんか一回くらいしかやっていないのだろうが、まるでパーマネント・グループのように息のぴったり合った演奏。

さすが!やね。

ブルース、鈴木のラウドなプレイに負けず劣らず、フィア(当時ゴールデン・パラミノスに所属)のドラミングもパワフル。

ジンジャー・ベイカーのジャズ系なドラムとはまた違って、後続の純粋ロック世代らしく、ストレートに叩き出すビートがこれまた熱い。

ブルースも、クラプトンへの「意地」をモロに見せつけるかのように、ヴォーカルも相当気合いが入っている。

「オレこそが、クリームのフロントだったんだぜ!」みたいな。

2位「SUNSHINE OF YOUR LOVE」

筆者の趣味で、どうしてもクリーム・ナンバー続きになってしまうが、このライヴ、他には鈴木賢司のオリジナル「GENERATION BREAKDOWN」「A.P.K.」、ウェスト・ブルース&レイングの「OUT INTO THE FIELD」、ゴールデン・パラミノスの「WORKING HARADER」も演っていて、そちらもハードなプレイがなかなか捨てがたいので、よろしく。

さて、場内最高潮!てな感じのときに、タイムリーに始まったのは、やはりこれ。クリームの大ヒットナンバーだ。

観客もコーラスで加わって、おなじみのサビを大合唱。みんなが知っている曲は、やはり強いやね。

鈴木も、タッピングやアーミングを交えたフリーフォーム・ギターで、クラプトンとはまったく違った個性を見せつける。

でも「精神」においては、66年~68年ころの「ギター・フロンティア」としてのクラプトンを継いで、むしろ後のクラプトン以上にロックしている、そう思う。

後半のソロでも、ワウ・ペダルを駆使したプレイが、実に「ロック」なんだよなあ。

1位「SPOONFUL」

本ライヴのラストを飾る一曲。そう、かの名盤「WHEELS OF FIRE」での熱演が全世界のロック・ファンの度肝を抜いた、クリーム・ナンバーの再演だ。

こちらはクリーム版の16分45秒に比べればコンパクトだが、それでも正味10分におよぶ長尺。

例によって、ゴリゴリ、ブリブリのベースで自己主張しまくりのブルースに対して、一歩も引かず応戦するのはわれらが鈴木賢司。

ディストーションをバリバリにきかせた、これぞロックって感じのアグレッシヴな音は、聴いててまことに快感。

一方、ブルースのベース・プレイは、音もやたら歪んでいて荒っぽいし、耳ざわりな不協和音を使い過ぎだし、さほど好きではないのだが、迫力あるヴォーカルはけっこう好きだったりする。

「とにかくラウド、とにかくヘヴィー」、これが、ブルースの、そして彼に続く世代、鈴木やフィアのロックに関する「信条」なのだろうね。

そのへんは、素直に同調出来る。やっぱり、デカい音を出さなきゃ、ロックした気にはならないってもんだ。

世代を越えて、ロックを合言葉に、ひとつにまとまった三人。とにかくHOTとしかいいようがないゴキゲンな一枚。あなたは知っているかな?

<独断評価>★★★☆