2003年10月19日(日)
#191 オールマン・ブラザーズ・バンド「EAT A PEACH」(Polydor POCP-1907)
オールマン・ブラザーズ・バンド、72年リリースのアルバム。アナログLPでは2枚組だった。
アメリカ本国の「偉大なギタリスト」投票では、ジミ・ヘンドリクスについで2位の栄誉を勝ち取った、デュアン(デュエイン)・オールマン。ジミと並ぶ「夭折の天才」といえそうだ。
その彼の死後、追悼盤として発表されたのが、この一枚。新メンバーでのスタジオ録音のほか、デュアンの生前のライヴ録音も含まれている。
彼らのアルバムには、以前このコーナーで紹介した「AT FILMORE EAST」のほか、「IDLEWILD SOUTH」「BROTHERS AND SISTERS」など名盤が多いが、本盤もそれにまさるとも劣らぬ傑作だと思う。
<筆者の私的ベスト3>
3位「MOUNTAIN JAM」
フィルモア・イーストにおけるライヴ録音。英国のシンガー、ドノヴァンの曲を、彼ら流にアレンジしたもの。
何たってすごいのが、演奏時間。33分15秒だぜ!
現在のCDなら収録も全然楽勝の長さだが、アナログLPの時代に、よくそれだけのロング・トラックをレコード化したもんだ。
それだけでも、脱帽もの。
で、中身のほうも、もちろん素晴らしい。全編インストゥルメンタルなのだが、聴く者をまったくあきさせない、緩急、変化に富んだ構成になっている。
まずは早いビートながら、わりとゆったりとした雰囲気で、デュアンとディッキーがツイン・リードでテーマを演奏。
それから、ギター→キーボード→ギターという風に各メンバーにソロを回していくのだが、いずれもスピード感があふれるプレイでなんともごキゲンだ。
それを支えるリズム隊のプレイも、またすさまじい。よくこれだけ、早いテンポの演奏をだれることなく長時間にわたって続けられるものだ。感服のひとこと。
この曲、ソロ演奏の基本はアドリブなのだが、ときにはツイン・リードを聴かせるなど、かなり入念にアレンジをしてあり、それがこの長丁場、聴き手をダレさせずに引っ張れる秘密なのだろう。
個々人のテクニック&パワー、そして、見事な楽曲構成力、このふたつのどちらが欠けても、この難曲を演奏しきることは不可能だったはず。
さすが、最強のライヴ・バンド、オールマンズである。
曲は後半、ミドル・テンポ、さらにスローへ変化。まったりとした、ソウルフルなギター・ソロが展開されていく。
ヴォーカルこそ入っていないもの、十分に「歌って」いるギター、実にいい感じだ。
最後は、ティンパ二も加わって、にぎやかに大団円。もう、おなかいっぱいになりました(笑)。
彼らの引き出しの多さ、リズム感覚の豊かさをまざまざと見せつけらた一曲でありました。
2位「TROUBLE NO MORE」
これも、フィルモア・イーストでのライヴ。曲はもちろん、マディ・ウォーターズの作品。
アップテンポで快調に飛ばすブルース・ナンバー。全編にデュアンのスライドをフィーチャー。
中間部ソロでは、ディッキーも負けじとギターを泣かせる。そして、もちろん、デュアンも。
六人のメンバーが一体となった、圧倒的なグルーヴ。3分台のコンパクトな曲なれど、実に聴かせます。
こういう、かっちりしたリフでのせる曲も、本当に上手いんだよなあ、オールマンズって。
1位「ONE WAY OUT」
さて、1位はこれ。これまた、フィルモア・イーストでのライヴ録音。
曲は、サニーボーイ・ウィリアムスンIIでおなじみのナンバー。彼のアルバム「REAL FOLK BLUES」「ONE WAY OUT」ほかに収録されている。
この演奏が最高にカッコいい。のっけから、デュアンのスライド・ギターが耳に突き刺さり、ハイ・テンションなビートにのせて、このうえなくスリリングなプレイが展開される。
グレッグのソウルフルなヴォーカルが、緊迫感あふれた曲調に見事マッチングしている。ディッキーのソロも、艶のあるのびやかなトーンがナイス。
そして、何といってもデュアンのソロ。音色といい、フレージングといい、もう、完璧のひとこと。
ま、説明するより、聴いていただくのが一番なのだが。
エンディングがまたイカしている。バンドをやるなら、一度はこんなふうにキメてみたい、そんな感じのエンディング。
…というわけで、結局、デュアンの参加した曲ばかりになってしまった(笑)。
新メンバーによる演奏も悪くはないのだが、やはり、デュアン存命時のサウンドには、いまひとつ及ばないという気がするな、筆者の個人的好みでは。
それは彼のギター・テクニックうんぬんというよりは、彼の黒人・白人を超えた独自の「音楽性」によるものが大きいと思う。
黒人のブルースを素材にしながらも、独自のロックなグルーヴを溶かし込んだサウンド。似たようなことをやるバンドはいっぱいあるが、やはり、彼らはワン・アンド・オンリーな存在だ。
稀代のロックバンド、オールマンズの魅力を約70分にわたってたっぷり楽しめる一枚。一聴の価値あり、です。
<独断評価>★★★★★