NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#197 ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ「CRUSADE」(DERAM 820 537-2)

2022-05-30 05:00:00 | Weblog

2003年12月14日(日)




#197 ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ「CRUSADE」(DERAM 820 537-2)

ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ、67年のアルバム。以前取り上げた「A HARD ROAD」に続く4枚目にあたる。

本盤の目玉は、「A HARD ROAD」一枚に参加しただけで脱退してしまったピーター・グリーンに代わって、弱冠19才のミック・テイラーがリード・ギターを弾いていることだな、なんといっても。

数年後にはローリング・ストーンズのメンバーとして迎えられることになるテイラーの、初々しく、だがなかなか完成度の高いプレイを聴ける。

こりゃあブレイカーズ・ファンならずとも、気になるでんしょ?

<筆者の私的ベスト4>

4位「OH, PRETTY WOMAN」

これはもちろん、ロイ・オービソン…じゃなくってアルバート・キングでおなじみのナンバー。

キングの名盤、「BORN UNDER A BAD SIGN」ほかに収められている。

彼らは当然そのヴァージョンを元にプレイしているのだが、テイラーは実に見事にアルバート節を再現している。

レス・ポール(推定)で泣きのチョーキングを多用したプレイは、とても十代の若造とは思えないシブさ。

ま、早熟の天才ということでは、前任のクラプトン、グリーンもそうだったけどね。

そういったとてつもない才能のある若者を何人も見出した、メイオールの慧眼には恐れ入るばかりである。

当時のテイラーのプレイ・スタイルは、前任者のどちらかといえばクラプトンの方に近い。音色もフレーズも、知らずに聴けばクラプトンかと間違えそうなくらい似ている。

おそらく、ミック少年も数年間、クラプトンのコピーを必死にやっていたのだろう。それだけ、当時の英国のロック少年たちにとって、クラプトンは神のような存在だったということがわかるね。

3位「SNOWY WOOD」

これはインスト・ナンバー。メイオール、テイラーの共作。

「WITH ERIC CLAPTON」「A HARD ROAD」と、アルバムに必ず最低一曲はインスト物を入れるのが、バンドのならわしになっていたが、本盤でも二曲が収録されている。この「SNOWY WOOD」と「DRIVING SIDEWAY」である。

後者は「HIDE AWAY」や「THE STUMBLE」同様、彼らのフェイバリット、フレディ・キングのナンバー。のっけからフレキンばりのバリバリのソロを、テイラーは聴かせてくれるのだが、筆者はあえてオリジナル曲のほうを選んでみた。

「SNOWY WOOD」はキャッチーなテーマが実にイカしている、エイトビートのナンバー。オルガンをメイオールが弾いていたりして、どことなくMG'Sっぽい。ジョン・マクヴィのベース、キーフ・ハートリーのドラムスも実にノリがいい。

テーマ演奏に引き続いて、テイラーがソロを弾きまくる。これが何とも堂々たるプレイで、とても駆け出しの少年が弾いているとは思えん。

リズム感の確かさといい、フレーズのため方、メリハリのつけ方、もうどこのバンドでもプロとして通用するレベルにある。

だからこそ、老練なメイオールも迷うことなく大抜擢したんだろうな。

2位「THE DEATH OF J.B. LENOIR」

同年4月、37才の若さでこの世を去ったアメリカのブルースマン、J・B・ルノアーへの追悼歌。

ルノアーは、メイオールと個人的な親交もあったひとで、メイオールの切々とした歌いぶりに、その死を悼む気持ちがよく表われている。

ドスを効かせた低めの声で歌うタイプのブルースマンが多い中、ルノアーはハイ・トーンのヴォーカルを得意としていた。いわば異色のブルースマン。

メイオールも声が高く、似たタイプのシンガーなので、シンパシーは非常に強かったのだろうな。

ここでメイオールはピアノを弾く一方、ハープも吹いている。テイラーはバックに廻り、リップ・カントのバリトン・サックス・ソロがフィーチャーされる。

しみじみとした哀感が漂う佳曲。一度は、聴いてほしい。

1位「I CAN'T QUIT YOU BABY」

ブルース・ファンなら知らぬ者もない、オーティス・ラッシュの名曲。

ご本家ラッシュ以外では、ZEPのカヴァーがもっとも知られているが、ZEPのファーストに先立つこと一年半も前に、このブルースブレイカーズもレコーディングしておったのだよ。

メイオールの、おなじみのうわずり気味の高い声も、この曲にはけっこうマッチしている。ブラスをフィーチャーしたバック・サウンドも、正調ブルースという感じで実にカッコいい。

でも、それだけでは終わらない。フィードバックを効かせ、ナチュラル・ディストーションばりばり、エッジの立った音色のギターが絡む。これがなんとも挑発的。

ブルースという形式は遵守しているように見せかけて、掟破りの技をかけてくる。やるねえ。

まさにブルースを破壊(かつ創造)するブルース。これぞ、彼らの真骨頂だと思う。

当然ながらZEPも、このヴァージョンに大いにインスパイアされたこと、間違いあるまい。その成果がZEPファーストの、あの衝撃的なサウンドだと思う。

その後、テイラーは数枚のアルバムに参加し、ストーンズへと旅立って行くが、才能ゆたかな彼がバンドの音楽性をより充実させたのは間違いないだろう。それは、第二期ストーンズが音楽的にピークを迎えたことから見ても、納得いただけるのではないのかな。

寡黙だが、ギターを持たせれば誰よりも雄弁なプレイを聴かせる男、ミック・テイラーの原点を知ることの出来る一枚。

彼自身のオリジナリティを、十分に表現出来るまでには至っていないものの、19才でこれだけ弾けるヤツはそうおらんぞ。アンファン・テリブルとは、彼のことだな。必聴!

<独断評価>★★★★