僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

種…②

2006年08月05日 | SF小説ハートマン
ほら、この種を腕のインターフェースに収めるともうひとつ未来が見える。

風船はワープする宇宙船ではなくて、未来からのメッセージを受け取るアンテナだった。フウセンカズラは土の力を借りて成長し、時空の「1/fゆらぎ」を媒体に未来から沢山のメッセージを受け取りメモリーする。

地球ではエサキモンツキノカメムシの姿をした特使が、未来のハートマンに的確にメッセージを配達する。もちろん地球以外の知的生命体がいる惑星では「フウセンカズラ」ではない何かがそれを受信し、普段目立たない何かの生き物がトントの役割を担っているのだろう。

宇宙は膨張を続けているように見える。ブラックホールやホワイトホールが「1/fゆらぎ」を作り出している。その研究は僕にも少し理解できるようになった。でも明快な理論はメモリーの中に見つけることが出来ない。そんな仕組みがあることを知っただけだ。
宇宙の膨張と共に進んでいる最深淵の未来研究セクションでも未だ解明されていないのかも知れない、とトントは言った。僕がハートマンになったら、その時こそ宇宙の仕組みを本当に理解する事が出来るかも知れない。

ベランダから見上げる星空がとても近く感じる。手を精一杯伸ばして言った。

「おーい、僕はここにいるよーっ」    つづく
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種はメモリー

2006年08月05日 | SF小説ハートマン
僕の頭の中は昨日の出来事がまだグルグル回っていた。

トントは全てを話してくれた。
バイオリストコンピュータのおかげで整理されたボクの頭は、それをきちんと理解する事ができた。それでもグルグル回っちゃうくらいの興奮が残った。

フウセンカズラの種はテラバイトに匹敵する情報のメモリーだった。その中に未来からのメッセージが思考回路に直接語りかけるプログラムと共に詰めこまれていた。

僕が毎日見た、と言うより体験した夢は一粒一粒の種に収まっていたものだ。
トントは必要な種を慎重に選んで僕に与えた。

ある種は、世界が地球だけではない事を教えてくれた。無量大数の星が輝く宇宙に、今もハートマンの仲間が活躍している。
僕はもうすぐその世界へ行くだろう。種がそう告げている  つづく
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