僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

救急ブース

2006年08月08日 | SF小説ハートマン
もうひとつのメッセージ、この種はサイバークラブからかろうじて脱出したハートマンだった。ちょっと怖いけどもう一度見てみるね。
かさぶたの下に種を収めた時、カチッと音がして僕はセクションの救急ブースに跳んだ。


メディカルプールに浮かぶハートマンがいる。それは羊水に満たされた子宮を思わせる柔らかで温かい医療用ドックだった。
レーザーで焼かれた上半身と足の再生手術が行われていた。クモの糸のように細い神経繊維が数百本ハートマンの体を水中で固定し、しなやかなファイバーの先に設置された医療用ナノマシーンが破壊された組織を再生すべく働いていた。
時々不規則なパルスを発生するモニターがハートマンの状態を医療チームに伝えている。

傷は思ったより深刻な状態だったが、スペースギアは敵の攻撃を振り切り意識を失った主人を最短コースでセクションの救急ブースに運び込んだ。
アラームを受信し待ち構えていた医療チームは直ちに治療を開始し、バイオリストコンピュータに残された情報から敵の分析を開始した。

モニターを監視している医師の一人が同僚に大きくうなずいて言った。応えた同僚に微笑みが広がる。

「もう大丈夫、その調子で頑張れハートマン。」

無言で作業を続けていた医療チームの緊張の糸が穏やかにゆるんでいった。  つづく


コメント (13)
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