ある日の朝の事でございます。
いつものように庭に出て池を見てみますと
大きなビロードような葉っぱに、つい先ほどまで柔らかく降っていた雨粒が上等のワインのように残っておりました。
もったいねぇなこりゃぁ、飲んじまおう
と口を近づけますと、
蓮の花びらのそのまん中にある金色の蕊からは、
何とも云えない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります。
ロゼだと思っていたのですが、
それは淡いピンクの花びらが一枚雫の中にこぼれ落ちていたからなのでございます。
白だったら辛口より少し甘めのアウスレーゼくらいがイイゼ
なぁんて葉っぱを傾けた時でございます。
葉っぱの陰から見える水面にもつれる男女の姿がちらりと見えました。
蓮池の下は丁度ラヴホテルになっておりますから、
たまぁにこんな事もございます。
屋根はないのか?などとお聞きにならないでください。
ここがどこなのかと想像なさればすぐに分かるはずではありませんか。
ここから見ると部屋の中だけでなくそこにいる人間の本心も手に取るように分かります。
ほら、そこの女、もうこれで何人目でしょうか、
また男を騙そうとしています。
男はそんなこととはつゆ知らず一生懸命に尽くしておるのでございます。
男が、うっと短い声を発して果てた時、
丁度その時一匹のセアカコケ蜘蛛がくしゃくしゃになったシーツの上を女の顔の方に這っていったのでございます。
少しずつ気温の上がっていく中、蓮の花たちは子犬が散歩に連れて行けと誘う時のような愛らしさで時折その首を振っているのでございます。
つづく
いつものように庭に出て池を見てみますと
大きなビロードような葉っぱに、つい先ほどまで柔らかく降っていた雨粒が上等のワインのように残っておりました。
もったいねぇなこりゃぁ、飲んじまおう
と口を近づけますと、
蓮の花びらのそのまん中にある金色の蕊からは、
何とも云えない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります。
ロゼだと思っていたのですが、
それは淡いピンクの花びらが一枚雫の中にこぼれ落ちていたからなのでございます。
白だったら辛口より少し甘めのアウスレーゼくらいがイイゼ
なぁんて葉っぱを傾けた時でございます。
葉っぱの陰から見える水面にもつれる男女の姿がちらりと見えました。
蓮池の下は丁度ラヴホテルになっておりますから、
たまぁにこんな事もございます。
屋根はないのか?などとお聞きにならないでください。
ここがどこなのかと想像なさればすぐに分かるはずではありませんか。
ここから見ると部屋の中だけでなくそこにいる人間の本心も手に取るように分かります。
ほら、そこの女、もうこれで何人目でしょうか、
また男を騙そうとしています。
男はそんなこととはつゆ知らず一生懸命に尽くしておるのでございます。
男が、うっと短い声を発して果てた時、
丁度その時一匹のセアカコケ蜘蛛がくしゃくしゃになったシーツの上を女の顔の方に這っていったのでございます。
少しずつ気温の上がっていく中、蓮の花たちは子犬が散歩に連れて行けと誘う時のような愛らしさで時折その首を振っているのでございます。
つづく