腹減ったよ
そうね
牛丼食べようか、ほら松屋
う~ん、牛丼はいらないかな
なんだよ、んじゃラーメン?
いつか食べたとこおいしくないんだもん
君は今何が一番食べたい?
辰雄は立ち止まり、留美子の両肩を押さえて尋ねた
何ですか、その芝居ががった聞き方は
今あんまりおなかすいてないし
んじゃあそこの高台まで上ってみようか
いこ!
イルミネーションはないけどきれいね
うん、右のあっちの方が町田のビルだね
駅の周りはきっとすごいんだろうね
辰雄、行ってみたい?
留美子は見たいの?
辰雄が見たいなら行くけど、私はここでいいわ
俺もここでいい、あっちはきっとすごい人でさ、きれいだろうけど
わたし、食べたいものが見つかった
おぉそっか、いいぞ、何が食べたくなった?
ラスク
え?らすくって?
ラ ス ク ! だってば
留美子はいたずらっぽく笑いながらそう言うと
いくよ、と走り出した
何だよ突然、ラスクって何のこと?
辰雄はカメラをポケットに入れると慌てて留美子の後を追った。
つづく