私、ちょっと酔っちゃったかも、顔、赤くなってない?
いいんじゃない、赤くなったり緑になったりしてるよ

留美子はちょっと怒ったように口をとがらせて辰雄の腕を振った
辰雄は組んだ腕に力を込めてそんな留美子を押さえ込んだ
ほら、今度は緑になった

ほら、こんどは、えーっと何色かな

それって私の顔?
ま、そうだな、留美子は何色がすき?

いいよもう何色でも、何だかみんなきれいに見えてきちゃったもん
うん、いろんな留美子がきれいだし

こら辰雄、今あのお姉さん見ながら言ったでしょう

おまえ、ほんとに酔ってるな
いいんだも~んだ

あ~ぁ、最後のソルティドッグが効いちゃったんだね
そうそう、効いちゃったんだ~

留美子は眼を閉じて辰雄の腕を抱きしめている
辰雄は柵に寄りかかったまま、回り続けるメリーゴーランドをじっと見つめている
イルミネーションはふたりを温かい光で包んでいる
時間は流れているのか、止まってしまったのか
そんなことを考える力はとっくに無くなっている
つづく