僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

湘南ボーイ…⑦

2016年09月02日 | ケータイ小説「パトスと…」

 

 

 

 

 

マドンナは戻らなかった。

その時から叔父は歌うのを止めた。

 

「ううん、手元にギターはあったし、頼めばいつでも歌ってくれたわ。

でも以前みたいにお店や舞台のコンサートみたいなことはしなくなったの。」

「マドンナのことがショックだったんだね。」

 

 

辰雄は留美子の肩をそっと抱いた。
留美子は辰雄にもたれてしばらくの間何も言わなかった。

 

「今思うんだけどね、きっと、湘南ボーイじゃなくてジミーとして歌いたかったんだと思う。」

 

その事故から1年後、叔父は海沿いでテラスのあるの小さな家を借りてスナックを始めた。

 

「今はスナックってあんまり流行らないけど、お酒や軽食も出す、そうねカフェって感じかな。」

「行ってみたいな。まだあるんだろ?お店」

 

「もう何年も行ってないから分からないけど、亡くなるちょっと前に仲間に譲ったって聞いたから、鎌倉の材木座にまだお店はあるかも知れない。」

「お店の名前は何て言うの?」

 

「Jimmy & madonna」

 

 

グリーンのペンキで塗られた狭いドアにブルーのネオンでそう書いてある。
カウンターの奥に、仲間と笑っている当時の写真が今でも飾ってあるはずだ。

 


 

 

「湘南ボーイ」 end

 

※画像はwebよりお借りしました 問題がある場合は削除します

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする