直径13メートルのパラボラアンテナは
近くで見上げると巨大な傘だ
しかし宇宙から見るとそれは
針の先の点にもならない
たまたま研修に来ていた学生が
不思議な信号を捉えたのは偶然だった
彼女はハートマンの存在などまったく知らなかったのだから
JAXAは地球を回る8台の衛星と国際宇宙ステーションを行き来するコウノトリを運営している
鳩山町のひっそりとした山間にある地球観測施設の
通常のミッションとは数百メートル離れた目立たない建物の中で
セクションの解析が行われていることは誰も知らない
学生の発見した信号は良くあるバグとして処理されたが
データを受け取ったセクションの担当者は
それがハートマンからのものだとすぐに気づいた
大型シップで銀河間航行に出発してからもう数年が経過していた
ブラックホールの内側を跳ねていく屈折航行で進んでいる間は
まったく通信はできない
セクションは全員が突然忙しくなった
だが皆その表情は明るい
ある者はモニターに向かい
ある者は耳を澄ました
それぞれが自分の持ち場に集中する中
ひとり屋上から空をじっと見つめる女性がいた
「宇宙(ひろし)君、どこにいるの?」
「星見(ほしみ)ちゃん、僕が見えるかい?」