人気ミステリー作家の伊坂幸太郎さんの新刊の「AX」を読み終えました。
この「AX」(アックス)は、2017年7月28日にKADOKAWAが発行した短編集の単行本です。価格は1500円に消費税が加わります。

この「AX」は、以前に書いた短編3本に、今回の発行に当たって書き下した中編2本で構成されています。最初の短編3本を読んだ時点では、伊坂幸太郎さんらしい内容ですが、ある程度の力量の作品との印象を持ちました。しかし、今回の単行本化に当たって書き下した中編は大傑作でした。
単行本「AX」の最初に配置された「AX」は2012年1月に文芸誌に掲載された短編です。この短編の主人公は「兜」(かぶと)というあだ名で呼ばれている殺し屋です。この殺し屋は殺人ではすご腕ですが、その妻には逆らわない恐妻家です。
この主人公の長男が「お父さんはお母さんに気を使いすぎ、遠慮しすぎだ」というほどの恐妻家です。
この殺人の腕前は凄腕だが、恐妻家である殺し屋は、以前に伊坂幸太郎さんが書いた長編の「マリアビートル」に登場した殺し屋です。
伊坂幸太郎さんは、恐妻家の殺人者という設定の面白さを利用して、2012年1月に短編「AX」を書き下しました。この「AX」は、この短編中に出てくる「蟷螂(とうろう)の斧(おの)」に由来しています。カマキリは実は弱い存在にもかかわらず、必死にカマキリの斧で相手に立ち向かうという教訓から来ています。
この短編は、設定や話の流れは適当です。でも“小話”としてはとても面白い感じです。
さらに、短編の2本目は「BEE」です。2014年3月に文芸誌に掲載された短編です。「兜」という殺し屋の自宅の庭に、スズメバチが巣をつくったので、外見が“宇宙服”のように重装備して、巣を駆除します。
スズメバチの巣をアシナガバチの巣と勘違いした妻からの頼みで、駆除します。
このスズメバチの巣を駆除している最中に、殺し屋「兜」を狙う別の殺し屋が登場しますが、これを撃退します。
そして、短編の3本目は「Crayon」です、2014年2月に文芸誌に掲載された短編です。「兜」という殺し屋にいつも仕事を依頼する黒幕の某医師は「死体を一体ほしい」という注文を出します。ある人物の死体として偽装するためです。
この「兜」という殺し屋が夜道を歩いていると、「幸せそうに生きている他人が許せない」というマスク男の暴漢が妊婦を刃物で襲います。このマスク男の暴漢を偶然、倒すと、「兜」は依頼主の医者に「死体が手に入った」と連絡します。死体の回収処理係が速やかに処理します。
ここまでの短編集は、恐妻家の凄腕の殺人者という設定の面白さを用いた“小話”です。それなりに面白い中身です。伊坂幸太郎さんの才能からすると、平均点程度です。
さて、4本目の中編「EXIT」は、今回の単行本化のために書き下ろしたものです。
この中編が、今回の単行本の中核の小説です。ある百貨店(デパート)の夜の警備員を務めている男性は、その中学生の息子から「お父さんの仕事の現場を見学してみたい」というリクエストを受けます。このため、夜の百貨店内に密かに息子を入館させます。
実は、この息子は、悪い同級生に脅かされていて、夜間の百貨店内に悪い同級生を密かに入れてしまいます・・。悪い同級生は、デパートの玩具売り場のゲームソフトを盗みだそうとします。
この百貨店に文房具を納めている文房具会社に表向きは勤務している殺し屋「兜」は、いろいろな経緯から、この盗みに入ったこの小さな犯罪者を諭します。しかし、この小さな犯罪者は夜の百貨店内を逃げ回ります。
途中を省くと、殺し屋「兜」を狙う殺し屋が登場し、「兜」に返り討ちに遭って逆に殺されます。実は、殺しの仕事の依頼主の医者に「殺し屋を辞めたい」と伝えたために、別の殺し屋にその存在を消すように依頼し、狙われます。
この殺し屋を倒した後に、殺し屋「兜」はビルから落ちて亡くなります。
5本目の中編「FINE」は、殺し屋「兜」の息子の克己が数年後に、偶然、父が亡くなった理由などを追求します。殺し屋「兜」を殺したのは、殺しの依頼主の医者でした。
この医師が息子の克己の動きを察知し、殺し屋「兜」が密かに購入していたマンションの一室に向かいます。このマンションの一室には、ある仕掛けが施されていました。自分を殺そうとする依頼主の医者に一矢報いる仕掛けでした。
今回、新刊の単行本「AX」を読み始め、以前執筆していた「AX」から「Crayon」を読んで、伊坂幸太郎さんは恐妻家の凄腕の殺人者という設定を楽しんで書いているーーでも、それだけと感じました。
ところが、この3つの短編で散りばめた、いろいろな小道具を、4本目の中編「EXIT」と5本目の中編「FINE」では、巧みに織り込んで話を展開します。特に、依頼主の医者に対して仕掛けた罠は秀逸です。
伊坂幸太郎さんは実に頭がいい小説家だと感心しました。4本目の中編「EXIT」と5本目の中編「FINE」の中身は、ほとんど種明かしをしていません(ネタばらしをしていません)。
最後に、この短編集の各編のタイトルはA、B、Cときて、Dをスキップして、E、Fと続きます。さて、Dがない理由は・・。
この「AX」(アックス)は、2017年7月28日にKADOKAWAが発行した短編集の単行本です。価格は1500円に消費税が加わります。

この「AX」は、以前に書いた短編3本に、今回の発行に当たって書き下した中編2本で構成されています。最初の短編3本を読んだ時点では、伊坂幸太郎さんらしい内容ですが、ある程度の力量の作品との印象を持ちました。しかし、今回の単行本化に当たって書き下した中編は大傑作でした。
単行本「AX」の最初に配置された「AX」は2012年1月に文芸誌に掲載された短編です。この短編の主人公は「兜」(かぶと)というあだ名で呼ばれている殺し屋です。この殺し屋は殺人ではすご腕ですが、その妻には逆らわない恐妻家です。
この主人公の長男が「お父さんはお母さんに気を使いすぎ、遠慮しすぎだ」というほどの恐妻家です。
この殺人の腕前は凄腕だが、恐妻家である殺し屋は、以前に伊坂幸太郎さんが書いた長編の「マリアビートル」に登場した殺し屋です。
伊坂幸太郎さんは、恐妻家の殺人者という設定の面白さを利用して、2012年1月に短編「AX」を書き下しました。この「AX」は、この短編中に出てくる「蟷螂(とうろう)の斧(おの)」に由来しています。カマキリは実は弱い存在にもかかわらず、必死にカマキリの斧で相手に立ち向かうという教訓から来ています。
この短編は、設定や話の流れは適当です。でも“小話”としてはとても面白い感じです。
さらに、短編の2本目は「BEE」です。2014年3月に文芸誌に掲載された短編です。「兜」という殺し屋の自宅の庭に、スズメバチが巣をつくったので、外見が“宇宙服”のように重装備して、巣を駆除します。
スズメバチの巣をアシナガバチの巣と勘違いした妻からの頼みで、駆除します。
このスズメバチの巣を駆除している最中に、殺し屋「兜」を狙う別の殺し屋が登場しますが、これを撃退します。
そして、短編の3本目は「Crayon」です、2014年2月に文芸誌に掲載された短編です。「兜」という殺し屋にいつも仕事を依頼する黒幕の某医師は「死体を一体ほしい」という注文を出します。ある人物の死体として偽装するためです。
この「兜」という殺し屋が夜道を歩いていると、「幸せそうに生きている他人が許せない」というマスク男の暴漢が妊婦を刃物で襲います。このマスク男の暴漢を偶然、倒すと、「兜」は依頼主の医者に「死体が手に入った」と連絡します。死体の回収処理係が速やかに処理します。
ここまでの短編集は、恐妻家の凄腕の殺人者という設定の面白さを用いた“小話”です。それなりに面白い中身です。伊坂幸太郎さんの才能からすると、平均点程度です。
さて、4本目の中編「EXIT」は、今回の単行本化のために書き下ろしたものです。
この中編が、今回の単行本の中核の小説です。ある百貨店(デパート)の夜の警備員を務めている男性は、その中学生の息子から「お父さんの仕事の現場を見学してみたい」というリクエストを受けます。このため、夜の百貨店内に密かに息子を入館させます。
実は、この息子は、悪い同級生に脅かされていて、夜間の百貨店内に悪い同級生を密かに入れてしまいます・・。悪い同級生は、デパートの玩具売り場のゲームソフトを盗みだそうとします。
この百貨店に文房具を納めている文房具会社に表向きは勤務している殺し屋「兜」は、いろいろな経緯から、この盗みに入ったこの小さな犯罪者を諭します。しかし、この小さな犯罪者は夜の百貨店内を逃げ回ります。
途中を省くと、殺し屋「兜」を狙う殺し屋が登場し、「兜」に返り討ちに遭って逆に殺されます。実は、殺しの仕事の依頼主の医者に「殺し屋を辞めたい」と伝えたために、別の殺し屋にその存在を消すように依頼し、狙われます。
この殺し屋を倒した後に、殺し屋「兜」はビルから落ちて亡くなります。
5本目の中編「FINE」は、殺し屋「兜」の息子の克己が数年後に、偶然、父が亡くなった理由などを追求します。殺し屋「兜」を殺したのは、殺しの依頼主の医者でした。
この医師が息子の克己の動きを察知し、殺し屋「兜」が密かに購入していたマンションの一室に向かいます。このマンションの一室には、ある仕掛けが施されていました。自分を殺そうとする依頼主の医者に一矢報いる仕掛けでした。
今回、新刊の単行本「AX」を読み始め、以前執筆していた「AX」から「Crayon」を読んで、伊坂幸太郎さんは恐妻家の凄腕の殺人者という設定を楽しんで書いているーーでも、それだけと感じました。
ところが、この3つの短編で散りばめた、いろいろな小道具を、4本目の中編「EXIT」と5本目の中編「FINE」では、巧みに織り込んで話を展開します。特に、依頼主の医者に対して仕掛けた罠は秀逸です。
伊坂幸太郎さんは実に頭がいい小説家だと感心しました。4本目の中編「EXIT」と5本目の中編「FINE」の中身は、ほとんど種明かしをしていません(ネタばらしをしていません)。
最後に、この短編集の各編のタイトルはA、B、Cときて、Dをスキップして、E、Fと続きます。さて、Dがない理由は・・。