人気小説家の阿部和重さんと伊坂幸太郎さんが合作したという、話題のミステリー小説「キャプテンサンダーボルト」を読了しました。芥川賞作家の阿部和重さんと山本周五郎賞作家の伊坂幸太郎さんが構想・執筆に4年をかけた合作書下し長編900枚という宣伝文句の話題作品です。
本書は2014年11月30日に文藝春秋が発行しました。東京都内の大型書店では、平積みしてあり、売れ行きがかなり期待されている単行本でした。
実は、一回目の読了は約一週間前でした。話の展開が破天荒すぎて、もう一回読まないと分からない部分があったからです。二回目を読むと、あれこれ布石が仕込まれていることに気がつきます。
以下は、本作品のネタばらしです。
冒頭は第二次世界大戦の末期の1945年3月10日に米軍のB29の大編隊による東京大空襲があった時に、その内の3機のB29が山形県と宮城県の県境にある蔵王に向かい、その3機が墜落したとのエピソードが示されます。
続いて、本小説の主人公である相葉時之と井ノ原悠の二人が登場します。二人は高校の同級生です。この二人の登場シーンはとんでもないことの連続です。山形市内のあるホテルに髭面男とビジネスマン数人が相次いでホテルに到着し、それぞれ目的の部屋に向かいます。
ここからが波瀾万丈の展開になります。ビジネスマン数人の一人が殺され、そのビジネスマンを殺した3人の外国人は、目的を達成できなかったとして、髭面男に痛くない注射針で密かに刺され、毒殺されます。
主人公の高校の同級生の二人は「後悔ばっかりだ。誰だって完璧な判断なんてできるわけないだろう。気がついたら我が人生、こんなありさまになっていた」と、最後の方の土壇場シーンで泣き言を語ります。二人ともに、その場の気分で判断し、あまり努力せずに次第に“蟻地獄”にはまっていきます。
この主人公二人は仙台市を舞台に、陥った難局をどうにかしようと動きます。このへんは、伊坂さんの「ゴールデンスランバー」の流れに似ています。このミステリー小説の主題は、国家はなんでもできるということです。この点も「ゴールデンスランバー」に似ています。
最後に、細菌を用いた生物兵器を処理するシーンは、途中に仕掛けられた布石が生きてきます。よく考えてあるなと感心します。
最後のハッピーエンドでは、あまりにも都合良く、すべての問題が解決され、大団円に向かいます。こうしたハッピーエンドは、作家の特権であると主張しています。
個人的には、かなり面白い破天荒な筋書きで、楽しいのですが、伊坂さんの作品としては、ある程度の出来映えと感じました。阿部さんと伊坂さんは、ストーリーづくりの擦り合わせ作業で疲れたようです。
なお、「キャプテンサンダーボルト」というタイトルは、クリント・イーストウッドが主演した映画「サンダーボルト」からのようです。
本書は2014年11月30日に文藝春秋が発行しました。東京都内の大型書店では、平積みしてあり、売れ行きがかなり期待されている単行本でした。
実は、一回目の読了は約一週間前でした。話の展開が破天荒すぎて、もう一回読まないと分からない部分があったからです。二回目を読むと、あれこれ布石が仕込まれていることに気がつきます。
以下は、本作品のネタばらしです。
冒頭は第二次世界大戦の末期の1945年3月10日に米軍のB29の大編隊による東京大空襲があった時に、その内の3機のB29が山形県と宮城県の県境にある蔵王に向かい、その3機が墜落したとのエピソードが示されます。
続いて、本小説の主人公である相葉時之と井ノ原悠の二人が登場します。二人は高校の同級生です。この二人の登場シーンはとんでもないことの連続です。山形市内のあるホテルに髭面男とビジネスマン数人が相次いでホテルに到着し、それぞれ目的の部屋に向かいます。
ここからが波瀾万丈の展開になります。ビジネスマン数人の一人が殺され、そのビジネスマンを殺した3人の外国人は、目的を達成できなかったとして、髭面男に痛くない注射針で密かに刺され、毒殺されます。
主人公の高校の同級生の二人は「後悔ばっかりだ。誰だって完璧な判断なんてできるわけないだろう。気がついたら我が人生、こんなありさまになっていた」と、最後の方の土壇場シーンで泣き言を語ります。二人ともに、その場の気分で判断し、あまり努力せずに次第に“蟻地獄”にはまっていきます。
この主人公二人は仙台市を舞台に、陥った難局をどうにかしようと動きます。このへんは、伊坂さんの「ゴールデンスランバー」の流れに似ています。このミステリー小説の主題は、国家はなんでもできるということです。この点も「ゴールデンスランバー」に似ています。
最後に、細菌を用いた生物兵器を処理するシーンは、途中に仕掛けられた布石が生きてきます。よく考えてあるなと感心します。
最後のハッピーエンドでは、あまりにも都合良く、すべての問題が解決され、大団円に向かいます。こうしたハッピーエンドは、作家の特権であると主張しています。
個人的には、かなり面白い破天荒な筋書きで、楽しいのですが、伊坂さんの作品としては、ある程度の出来映えと感じました。阿部さんと伊坂さんは、ストーリーづくりの擦り合わせ作業で疲れたようです。
なお、「キャプテンサンダーボルト」というタイトルは、クリント・イーストウッドが主演した映画「サンダーボルト」からのようです。
どちらの作家の色合いが濃く出ているのか、それぞれのファンが判定することでしょう。
伊坂さんのファンとしては、まずまずの出来と考えています。でも、不満もあります・・
合作がプラスではなく、なにかをマイナスにしたような気もします。
でも、もしこの小説が新人が書いたものだとしたら、絶賛されるでしょう。
阿部和重さんと伊坂幸太郎さんがそれぞれ、大家になっていることを感じました。
特に最初の方は、映画にすると面白いほど、その映像が浮かぶ感じでした。
阿部さんの奇妙な味が伊坂さんのテイストと予想以上に合った気がします。
こんな合作は二度とできないと感じました。
阿部さんは映画評論家という肩書きも持っています。
映画の活劇シーンを思わせる書き振りが目立つのは、二人が映画が好きだからです。
でも、この合作小説の企画は成し遂げたかったそうです。
人気ミステリー作家が4年間もかけて練り上げたので、こんなにハチャメチャな物語がそれなりにまとまるのですね。