1月23日(土)夜。世田谷パブリックシアター。
作・演出 永井愛 主演 黒木華
文学というものがなんだかわからない混沌とした時代。貧乏であった樋口一葉は生活のために職業作家を目指す。しかし士族としてのプライドを捨てられず、また若く理想の高い一葉は、通俗的な小説を好まない。人間としての尊厳を大切にしつつも、現実の厳しさに翻弄される女性を描くことになる。それは自分自身であり、自分の存在意義としての証明書でもあった。
一葉は近代文学の文体がまだ定まっていない明治の時代に、江戸文学の文体で近代の人間をえがくことに成功した稀有な作家である。奇跡的な作家といってもいい。その樋口一葉がよく描かれた作品である。
黒木華は声の通りがよくとても聞きやすい。若さゆえの軽さは感じるが、さわやかで好感が持てる。これからとても楽しみな女優だ。