とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

書評『ニッポンの文学』(佐々木敦著)

2016-03-20 02:25:58 | 読書
 私は大学で国文学を勉強しました。近代文学といえば鴎外、漱石を中心として成立したものとして学んできたわけですが、正直言って「文学」って何かよくわからないまま終わってしまったような気がします。

 この『ニッポンの文学』という本は1970年ごろから今にいたる日本の文学状況を、従来の「文学」という得体の知れないカテゴリーにとらわれず概観した本です。

 従来の「文学」の指針となっていたはずの芥川賞の検証、アメリカ文学からの影響、従来は「文学」とは遠い存在であったミステリーやSFを取り上げ位置づけようとするなど、おもしろい視点が次々と紹介されます。

 そもそも「文学」というのは一部の人たちによって勝手にカテゴライズされたものであり、それにこだわりすぎていたのは明らかです。そして「文学」という共同幻想が日本の小説の価値を決定させてきたのです。明らかにこれは不幸なことでした。この本を読んでやっと「文学」から解放される時代になったんだなという気持ちになってきました。

 筆者はたくさんの小説、評論を読んでおり、それを評価しながら現代という時代を相対化していきます。今私たちが生きている時代はどういう時代なのかを考えるきっかけともなります。とても感心させられます。また勉強にもなります。

 私にとってこれまで名前などは知っているものの全然読んだことがなかった本、名前も知らなかった本などがここでその価値を評価されています。この本で紹介されているたくさんの本を読んでみたくなりました。
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