映画『風の電話』を見ました。喪失感が映像によく描かれており、絶望からの再生が言葉によって伝わってくる、感動的な映画だった。
監督 諏訪敦彦
出演 モトーラ世理奈 西島秀俊 西田敏行 三浦友和 渡辺真起子 山本未來他
岩手県で東日本大震災に会い、家族が津波で流されてしまった一人の少女が主人公。この少女は広島県で叔母と一緒に暮らしている。叔母が病気なのか、事故なのか、倒れてしまい心が乱れ始める。少女はひとりでさまよい始める。少女はそこでたくさんの人と出会う。その人たちは多くは心に喪失感があり、少女にやさしく接してくれる。少女はその人たちの助けを得ながら、岩手の実家に向かう。
少女を助ける人たちの言葉がいい。
「生きていくためには食べなければいけない。」
「(年をとると、ふるさとにもどり)ゆっくり呼吸がしたい。」
「(あなたが死んでしまったら、家族を想いだす人がいなくなる。)
みんな、喪失感があるからこそ言える言葉である。ぽつんと出てくる言葉が耳に残る。
映像は生活感のある食事のシーンが多い。台所での食事のシーンなど、リアリティのある映像が印象に残る。だからこそ、福島で原発事故のせいで長い間、人が住んでいない家の中の、時間が止まったままに残された様子は失われた生活を見事に表している。心にささるシーンである。
無理な演技を要求しない演出で、役者はみんな自然に演技しようと戦っている。役者のやさしさが出ているように感じられる。
みんなが喪失からの再生を願っている、そんな気分にさせる「やさしい」映画だった。