シネマ歌舞伎『廓文章吉田屋』を見ました。歌舞伎ならではの芸を堪能しました。
藤屋伊左衛門:片岡 仁左衛門
扇屋夕霧:坂東 玉三郎
太鼓持豊作:坂東 巳之助
番頭清七:大谷 桂三
阿波の大尽:澤村 由次郎
吉田屋女房おきさ:片岡 秀太郎
吉田屋喜左衛門:片岡 我當
筋としてはどうということのない話です。しかし人間の描写が的確であり、とは言え演劇ならではの誇張があります。その思わず笑ってしまう誇張された描写が歌舞伎としての芸です。普段歌舞伎を見に行くことができない地方に住むものとって、加えて見に行ってもほとんど安い3階席でしかみたことのない人間にとっては、シネマ歌舞伎は表情しぐさがよくわかり、助かります。歌舞伎の良さを改めて感じることのできる映画でした。
片岡仁左衛門と坂東玉三郎は50年以上一緒に演じてきたそうです。ふたりの作り上げてきた芸のすばらしさを感じた映画でした。
この映画の冒頭で片岡仁左衛門のインタビュー映像がありました。その中で父親の十三代目片岡仁左衛門について語っていました。十三代目は普段は優しい人だったらしいのですが、芸に関しては厳しかったと語っていました。
私は50年以上前に大学で十三代目の講演を聞いたことがあります。実直で優しそうな姿に心が動かされました。公演が終わった後、笑顔でゆっくりとキャンパスを歩いている姿が今でも思い出されます。その十三代目から、厳しく、そしてしっかりと芸を継承してきて、現仁左衛門もいます。伝統のすばらしさと、それをさらに高めていこうとする「芸」の「家」の意義を感じます。
お正月らしい映画でした。