シェークスピアの『終わりよければすべてよし』を、宮城県の名取市民文化会館で見ました。新型コロナウイルスのために生の舞台を見る機会は減っていたので、本当に楽しみにしていました。シェークスピアの中では解釈しにくい作品だということですが、余計な解釈を加えずきっちりと演じていました。そのためにこの作品の不思議さもしっかり伝わり、さらに、それが人間の真実なのではないかと感じることになりました。いい舞台を見せてもらいました。
演出 吉田鋼太郎
出演 バートラム:藤原竜也
ヘレン:石原さとみ
デュメイン兄弟:溝端淳平
ラフュー:正名僕蔵
ダイアナ:山谷花純
デュメイン兄弟:河内大和
ルシヨン伯爵夫人:宮本裕子
パローレス:横田栄司
フランス王:吉田鋼太郎
この作品、普通に考えれば単なるドタバタ喜劇です。ヘレンにしてみればなんだかんだとあった上で、バートラムと結婚できたというハッピーエンドですが、バートラムにしてみれば、結婚なんかしたくなかったヘレンと無理矢理結婚させられてしまったという話です。ヘレンだって、こんなにひどい男と結婚して幸せなんだろうかと思わされます。それでも「終わりよければすべてよし」の一言で済まされるわけですから、まともな話ではありません。
しかし実はこれが人間です。時には真面目に、時には真剣であっても、その裏にはいい加減で、卑怯な本質があるのです。そんな人間たちがごちゃごちゃ生きているのが社会なんだから、この一見でたらめに見える劇は真実を言い当てていると言えるのかもしれません。
すぐれた役者のしっかりとした演技が、深く人間を描いているように感じられる舞台でした。