アンソニー・ホプキンスが今年アカデミー主演男優賞を受賞した映画『ファーザー』を見ました。意図的に視点を混乱させ、見ている観客の認知が混乱してしまう映画でした。狙いが見事に成功しています。
監督 フロリアン・ゼレール
出演 アンソニー・ホプキンス、オリビア・コールマン、マーク・ゲイティス、イモージェン・プーツ
(あらすじ)
ロンドンで独り暮らしを送るアンソニーは認知症による言動のために、娘のアンが手配した介護人を拒否してしまう。しかしアンは新しい恋人とパリで暮らすことになり、アンソニーはアンに日常的に面倒を見てもらうことはできなくなる。アンソニーの認知機能は混乱し、アンは苦しみの中、ある決断をする。
私自身、老化による記憶の低下はひどくなる一方だ。人の名前はもうほとんどとっさに出なくなった。さまざまなものが覚えていられない。認知症なのではないかという恐怖と闘っている。
アンソニーの視点による映像は、私自身の混乱のように感じられ、アンソニーの気持ちが痛いほど伝わってくる。この映画は映画でありながら映画ではない。バーチャルな体験をさせられているような作品なのだ。
その意味で本当に怖い映画だった。そしてこの怖さは悲しくて切ないものだった。
すばらしい映画でした。