SF映画『哀れなるものたち』を見ました。怪奇とシュールさが滑稽さ浪漫性を同時に生み出す不思議なバランスの映画でした。
主人公は若くて美しい女性エマ。しかしエマは言動が普通ではありません。実はエマは妊娠していながら、飛び降り自殺をした女性でした。その女性に、お腹の中の胎児の脳を移植して生き返らせたのです。ですから外見と行動がアンバランスになってしまったのです。
特にエマの言動のアンバランスさが目立つのが、性に関してです。肉体と脳のバランスが取れていたら、性に対する興味はそんなに早くは出てきません。しかし肉体が成熟しているがために、性快楽をすぐに発見してしまい、本能がそれを求めてしまいます。そのために奔放な性生活への旅に出てしまうのです。
旅で描かれる風景は遊園地のような世界です。大人のメルヘンの世界です。昔見たイギリスの映画やドラマにこういう感じの世界が描かれていたのを思い出します。イギリス的なユーモアがこの映画の根底にあり、それが奇想天外なストーリーを支えているのだと思います。
現代的な怪奇浪漫作品であり、既成のジャンルを超えた映画でした。映画の奥行きの深さを感じました。