村上春樹の『羊をめぐる冒険』を読んだ。今回が3回目である。1回目はこの本が出版されたころ、つまり30年以上前である。2回目は2年ほど前。読むうちに作者の仕掛けが見え始め、そしてテーマが見え始め、考えが深まっていく。さらに深く読んで読み解いていきたい。途中経過としていくつかの点を書き留めておく。
妻と離婚することになり、「僕」は次のように言う。
「結局のところ、それは君自身の問題なんだよ。」
このセリフは自分の問題と考えようとしない現代人のことを描いているように思われる。
この世の中で起きているあらゆることは「自分」の問題であるのだ。しかしそれを「自分」の問題とは考えようとしない。ましては離婚は夫婦ふたりの問題なのだ。離婚でさえ自分の問題であることを避ける。それが現代人なのだ。
村上春樹がこの小説を書いていた時代、世の中は「しらけ」ていた。世の中の雰囲気に流され、楽に生きていくことが「正しい」生き方だった。自分の問題を避けているような気がした。「自分」を失っているのだ。それは現代まで続いている。
『羊をめぐる冒険』は自分を取り戻す物語なのではないかという仮説を立ててみたい。
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