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『教育激変』(池上彰・佐藤優 中公新書ラクレ)を読みました

2019-05-01 16:28:10 | 高校国語改革
 現在「高大接続改革」と名付けられた大教育改革が進んでいる。その教育改革について客観的立場から、池上彰氏と佐藤優氏が対談している本である。私は二人の意見に概ね同感である。 

 まず第一に教育改革の大きな流れに対しては賛成するという点である。共通一次からセンター試験という流れは一定の成果はあったのは確かであるが、もはや時代遅れでしかない。逆に教育の名のもとに若者のブロイラー化が進んでいると思わざるを得ない。時代にあった教育に変化しなければならないのは明らかだ。

 そんな中でいくつかの懸念を示している点も賛同する点が多い

 例えば佐藤氏が次のように言っている。」

「AIをめぐる議論に、異常とも思えるほど官僚が関心を示したりするのは、直感的に『これは使える』と気づいたからではないかと思えて、仕方がないのです。」

 つまり、官僚の無為無策による失敗をAIのせいにしているというのである。今回の教育改革にもその論理が使われている。AI時代のための教育改革だというのである。この論理は現在の教育界で無批判に受け入れられている。果たしてこれは本当なのか。しっかりとした検証が必要である。

 あるいは英語のスピーキングテストは必要ないという佐藤氏の意見も賛同する。また、経済格差が教育に及ぼす影響も懸念されるという点も同感である。そして受験産業にどう対応すべきかについても、なんでもかんでも受験産業を認めるべきではないというスタンスを示したのも心強い。

 しかし両氏の意見に賛成できかねる点もある。賛成できかねる点は一部しか見ないで全体を論じてしまっている点である。

 例えば、池上氏が国語のプレテストの問題をほめている。確かにプレテストの問題は悪くない。しかしそのあとに行われた施行テストの問題はやったのだろうか。完全正解率が1パーセントに満たない問題であったのだ。これだけ時間をかけて準備したのにこういうひどい問題になっているという点は重要視しなければならない。

 また、センター試験を池上氏は擁護している。「共通一次時代の平均60点の問題へのレベルを維持するのが筋」と言っているが、つまり50点でいいということなのであろう。平均点が5割程度になってしまった国語の問題がどういう問題になっているのか、池上氏はわかっているのだろうか。あきらかに悪問でしかない。「批判の前に問題を見よ。」という言葉を池上氏にそのままお返ししたい。

 今回の教育改革の混乱の最大の要因は基本理念はいいのに、それに受験産業が無理矢理入り込み、利権がからみ、無理を押し通そうとしている点にある。もっとみんなで真剣に教育改革について知り、現状を見つめてほしい。

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