
宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』を見ました。難解な映画ですが、象徴的な意味を散りばめ、背後に大きなテーマを見通せる構造を維持しつつ、全体として主人公が成長していく姿を描く計算されつくした映画でした。一つの物語が見終わった後に大きな時空の物語として迫って来る作品です。
一度みただけでは、整理できないところが多く、内容について掘り下げていくのはここではやめたいと思います。しかし、一方では戦争や、現代文明や、社会的な差別などの現代における困難が描かれています。また一方では愛や友情、いつくしむ心、勇気、努力など、人間として大切にしていかなければならない心を描いているのがよくわかります。謎解き自体はすぐに答えが出ないように作られていますが、映画を見た後の満足は得られるようにできているのが、さすが宮崎駿だよなと思わせます。
ただしひとつ気になったのは、構造としては『千と千尋の神隠し』とよく似ていると感じたことです。その結果比べてしまいます。すると『千と千尋』の祝祭のイメージが乏しいことと、印象に残る場面が少ないこと、そして、遊びの要素があまりないために、若干物足りなく感じてしまいます。それは別の作品なので言ってはいけないことなのかもしれませんが、似ている構造だからこそ感じてしまうのです。
とは言え、やはり何度も見るべき作品です。そして見ることによって更に意味が見え始めた時に、もっと深い感動を得ることができるのではないかと期待しています。
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