東京・上野の国立西洋美術館が世界文化遺産に登録されたことを機に改装工事を行った。その期間を中心に、国立西洋美術館の職員の仕事を追ったドキュメンタリー映画『わたしたちの国立近代美術館』を見ました。美術館の仕事の実態を知ることができると同時に、日本の文化に対する予算の貧弱さを知ることができました。
美術館の職員の真剣な仕事ぶりに好感を持ちました。協力しながらも、妥協をゆるさない仕事ぶりが映像化されています。職員は国立西洋美術館で働くことにやりがいを感じており、仕事に喜びがあります。。しかし一方では税金で運営されているということに責任を感じています。どんな仕事でも責任のある仕事にはやりがいがあり、喜びがあります。その姿が伝わってきます。
しかし一方では日本の文化に対する国家の支援が少ないことが語られます。日本は文化国家でした。しかし一番大切な文化の維持・発展は民間の力がないとほとんど何もできません。
大きな展覧会も美術館だけの力では何もできやしません。新聞社などが共催してくれることによって可能だということがわかります。近年新聞社も経営が厳しくなってきました。これから大きな展覧会などはできなくなるのではないかと心配にもなります。
そもそも日本は教育・文化の予算を抑えすぎてきた国家です。西洋に追いつき追い越せだけがテーマで、その追いつき追い越せがすべて経済の分野に焦点が当てられました。ですから素晴らしい伝統文化を有していながら、文化は金にならないと捨てられ、研究者も育てられません。過去の遺産を食いつぶしているのが、今の日本の文化行政の実態です。教育も文化もどんどん衰退しています。
日本人は経済的には何とか豊かになりましたが、文化的にはどんどん貧しくなってきました。そしてその結果、何のためにいきているのかわからない国民になってしまった。そして経済も未来につけをまわすだけの方策しか思いつかない人間しかいなくなってしまったのです。
(ちょっと個人的な愚痴を書きすぎました。)
この映画でもう一つのテーマは改装です。国立西洋美術館の休館は庭の改装が目的だったのです。開館当初の形のもどそうということで行われた改装が行われました。その結果どうなったのか。三つの銅像以外の余計なものがすべてなくなったのです。ヨーロッパの美術館のような雰囲気になり、とてもかっこいい。つまり、後から誰かが日本的な余計な装飾をしてしまったということだったのです。これでは「西洋美術館」という名に恥じる。改装はもっともです。ただし、それだったら敷地を囲む金網が邪魔だよなと思ってみたりもしました。
文化の大切さ、文化を維持発展することの意義深さを改めて感じることができた映画でした。
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