原田ひ香さんの『三人屋』を読みました。原田さんの作品は『ランチ酒』シリーズ、『三千円の使い方』を読んでいます。どれもおもしろい作品です。この『三人屋』も不思議な魅力に満ちた作品でした。
三姉妹が同じ店を朝、昼、夜と別の形態で飲食店として営業しています。朝は三女がパンとコーヒーの店、昼は次女がうどんの店、夜は長女がスナック、どれもそれなりのはやっています。最初はこの三姉妹の心温まる人情ストーリーなのかなと読み始めますが、まったく違うことに気がつきます。この三人、あまり仲が良くありません。長女と次女はほとんど口も利かないような状態です。三人にはそれぞれ影の部分があり、それが現在の三人の状況を作っています。三人の微妙な関係が、不思議なリアリティを生んでいます。
最後のレコードのエピソードがとても面白い。亡くなった父親は小さなオーケストラでフルートを吹いていました。父親が演奏したオーケストラのレコードが発見されそのレコードを手に入れるために、長女は誰にも言わずに北海道に行きます。危険な思いをしながらそのレコードを手に入れます。長女はその演奏は父親の演奏だと確信します。しかし他の二人は本当に父親の演奏なのか疑問に思っています。この三人のずれが逆に三人をつなげる結果になります。この構造があまりに見事です。
軽い感じの小説だと思って読むと、意外に重く、深い小説であることに気づきます。不思議な魅力のある小説です。
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