とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

書評『たった一つを変えるだけ』(新評論社)

2018-09-17 13:47:24 | 教育
 副題「クラスも教師も自立する『質問づくり』」
 著者:ダン・ロススタイン、ルース・サンタナ
 訳者:吉田新一郎

 先日、野矢茂樹さんの小論文の講演に行った。その時野矢さんが紹介していたので、さっそく購入して読んでみた。とてもおもしろい本である。

 従来の教育は、教師が答えのある問題を質問して生徒はその答えを求めていた。それは発展性に乏しい。生徒は結局は教師の「正解」を待つことになるし、教師も指導書通りの結論に満足してしまう。教師にしてみれば答えがわからないという不安から逃げることになるのでそのほうが楽なのである。結局教師も生徒も「考える」という行為から逃げていただかなのだ。

 探究的に「考える」力を育てるためには、生徒は「質問する」ことができることが必要なのであり、「質問する力」を引き出すことが教師の行うべき仕事だということをこの本は主張している。現代の教育において重要なことを教えてくれる。

 ここ数年「探究型」という言葉が独り歩きし、授業がイベント的になってきている。もっと基礎的な部分での形の見える実践例を教師は学ぶべきであり、この本はそのヒントとなると私は感じている。私自身もさっそく実践してみたい。
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『春風亭一之輔落語会』(9月16日山形市中央公民館ホール)

2018-09-16 18:00:05 | 落語
 春風亭一之輔さんの落語会に行ってきました。一之輔さんはテレビで見たことはあったのですが、生で聞くのは初めてです。演目は「真田小僧」「粗忽の釘」「柳田格之進」。

 「真田小僧」と「粗忽の釘」は滑稽噺。テンポがあるし、一之輔師匠の独特の工夫もあり笑いが絶えません。間のとり方も絶妙です。見事です。一方「柳田格之進」は品格のある人情噺です。若いのに品格のある侍と、人情味ある商人をうまく演じ分けています。こんなにすごい噺家がまだ40歳です。末恐ろしい落語家です。

 最近の生徒たちを見ていると、集中力は3分しかもちません。少し長い話をするとすぐに横をむいてしまいます。これでは文化はすたれてしまいます。しっかりと人の話を聞く子供を育てなければならないし、人が聞いてくれる話をする大人を育てなくてはなりません。今回の落語会も客席は年配の人が多かったのですが、ぜひ若い人に聞きに来てもらいたいと思います。
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野矢茂樹氏の小論文研修会の講演に行ってきました

2018-09-14 08:06:14 | 高校国語改革
 仙台で行われた第一学習者の小論文指導研修会の講演で野矢茂樹さんの講演が行われました。共感すると同時に学ぶところのたくさんある講演でした。

 野矢茂樹さんは哲学者であり、今年の3月まで東大の教授でしたが、現在は大正大学の教授をなさっています。『論理トレーニング』や『大人のための国語ゼミ』などの著作があり、私も勉強させてもらっています。国語教師としては野矢さんを哲学者の印象よりも、基礎的な国語力の充実を提唱なさっている方という印象のほうが強くある方です。

 講演は「これから求められる国語力・論理力」と題されていました。野矢さんは国語力として3つのキーワードをあげます。

「つなげる」
「まとめる」
「たずねる」

の3つです。

 「つなげる」は文をつなげる力です。具体的には接続詞を的確に使える力です。接続詞はそんなに簡単なものではありません。基礎的なところからトレーニングしていくことが大切だと教えていただきました。

 「まとめる」は要約の力です。文章の中の幹か枝葉かを見極める力のトレーニングが大切です。

 「たずねる」は質問力です。質問力は、読む力、議論する力、考える力を育てます。

 以上の3つの力は国語の基礎力であり、そのような基礎的な日本語力を育てることが大切だと野矢さんは語ります。

 私は全面的に野矢さんの意見に賛同します。現在の高校の国語教育がゆがんだものになっているのはあきらかです。もっと基礎的な「言語技術」を大切にすべきなのです。

 その上で1つ申し上げておきます。野矢さんは新テストの記述式問題を高く評価していました。確かにモデル問題は私もいい問題だと思っています。しかし、去年の11月に行われたプレテストの問題はひどいものであったと思っています。問題の質が悪いのです。さらにマーク式の問題に関しては時間内に解答するのはとても無理なような量を出してきたので、国語力を的確に判断できるようなものにはなっていません。私は国語教育が正しい方向に向かうためにも、大学入試問題が適切なものになるように議論を深めてほしいと思っています。その中核メンバーのひとりとして野矢茂樹さんにも協力してほしいと思っています。
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『彼岸過迄』③ 漱石と探偵小説 「停留所」と「報告」

2018-09-11 07:48:02 | 夏目漱石
 『彼岸過迄』の第2章の「停留所」は敬太郎が探偵の役割をはたしている。第3章「報告」はその解決編である。いわゆる「探偵小説」のような展開をしていて、多くの人がシャーロックホームズを思い浮かべたと思われる。

 夏目漱石が英国留学したのは1900年から2年間。シャーロックホームズが英国で最初に登場したのは『緋色の研究』の1988年、最後の短編集『シャーロックホームズの事件簿』が出版されたのは1927年である。夏目漱石が英国にいたのは、シャーロックホームズ人気の絶頂期である。夏目漱石自身が実際にシャーロックホームズを読んでいたのか記録はないが、シャーロックホームズのような探偵小説の影響をうけていたと考えても不思議はない。いや、むしろ影響を受けていたと考えるほうが妥当であろう。

 その真偽はともかくとして、探偵小説的な語り手の「視点」に対する意識が明確に出てきている。敬太郎の視点は「なぞの男」を追っている。「なぞの男」を焦点化しながら、「なぞの男」を推理して正体を暴こうとしている。しかし、ひとりの「視点」から見ている限り、「なぞの男」は結局なぞのままである。それが人間と言うものだ。

 それがわかった時、新たな方法が生み出される。複数の視点での多角的な記述である。『彼岸過迄』の後半はそういう小説実験の場となる。 
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大坂なおみさん、おめでとう!

2018-09-09 07:42:04 | スポーツ
 全米オープンの女子シングルス決勝を見た。大坂なおみさん、おめでとうございます。

 大変な雰囲気の試合になってしまったが、大阪さんのほうが押していたのは確かで、何事がなく終わっても大阪さんが優勝していたであろうと思われる。堂々とした優勝である。
すばらしい優勝であった。

 ただし終わった後のすさまじいブーイングはなんだったのかがわからない。大坂さんに対するものか、セリーナ・ウィリアムズさんに向けられたものか、それとも審判に向けられたものか。私なりに分析してみた。

 セリーナ・ウィリアムズは観客席にいたコーチの指示を受けていたという理由で審判から注意を受けた。テレビで見ていた限り、試合中にコーチの指示を受けていたのかどうか私には明確にはわからない。しかし審判に注意を受けた。セリーナさんはプライドが傷つけられた。彼女が感情的になってしまったのもわからなくはない。そこで終わればよかったのだが、その後もセリーナさんは審判に執拗に抗議し続けた。そしてとうとう審判を嘘つき呼ばわりしてしまった。だから、ゲームペナルティを取られてしまったのは仕方がない。しかしセリーナの抗議の声はテレビを見ていた人にはわかったが、会場にいた観客にはわからなかった。だから観客は何がおこったかがわからず、ペナルティを理不尽に感じ、ブーイングになったのではなかろうかと推測される。

 状況が冷静に判断できるはずのない大阪さんは、観客のブーイングは自分に対してだと思ってしまって、表彰式では顔がこわばってしまった。しかし、この異様な表彰式が大阪さんの初々しさを演出してくれたようにも感じられた。

 いろいろな意味で生であるからこそスポーツなんだと感じた試合で会った。そして何より大坂さんの優勝が単純にうれしい。
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