金融庁が、年々進んでいる長寿化に伴って、退職後に95歳まで生きるのに公的年金などだけでは夫婦2人で毎月約5万円の「赤字」が続き、2000万円が不足するといった試算を出した。もちろん誰もが腹を立てるような報告書ではあるが、すでにこのままの年金制度では財政が破綻すると誰もが気づいているので、逆にありがたかったと思う意見もあろう。問題はこれを機に資産運用を促しているという点にある。
資産運用は経済が順調ならば、ある程度のリスクはあろうがうまくいく可能性が高い。しかし今後の経済状況は予断を許さないという意見も多く聞かれる。経済の先行きが不透明であるからタンス預金が増え、お金が循環しないというのが日本経済の現状なのである。さらに最近は景気が後退局面に入り、このままいけばデフレに逆戻りの危険性がある。だから批判覚悟で運用を促し、経済を循環させようとしたのではないかと推測する。わたしも運用したほうがいいのかなと考えるきっかけになった。そういう刺激を与えるという意味では成功したようにも感じられる。
しかし、これによって政府は信用を落としたのは事実である。また、麻生大臣が上から目線で語るのも嫌悪感しか抱かなかった。年金制度の維持のために、そして若い世代の人たちの未来のために国民みんなが協力していかなければならないはずだ。それを成功させるためには政府の見通しが甘かったことをまず認め、国民にあやまり、もっと具体的にわかりやすい説明をして、国民の信用を取り戻すことが必要でる。
安倍政権はなんの説明もしないで、雰囲気だけでやり過ごそうとしている。姑息な手段にしか見えない。