礼拝堂入り口上部の浮彫装飾である。何と豪華絢爛であろうか。日本で云えば日光・東照宮並であろう。正面中央は羽を広げた孔雀で蛇が好物とか・・・。左右には向き合う雌雄の孔雀。羽の部分部分に色ガラスを嵌め込んでいる。孔雀の上部にはハムサ(北タイでホンと呼ぶ)等の聖獣が浮き彫りされている。
更にその上部は交わるナーガで荘厳されている。ナーガの一般的な姿は、人頭蛇身の精霊で、男女の交合からエネルギーを発生させ、生命を創りだす。上半身を人間の姿で表し、下半身を蛇として描く構図もあるようだが、多くは龍頭蛇身のようである。写真の交合する姿を見ると、『女媧と伏羲』を思い出す。それは人頭蛇身で人類を創り、文化を与え、洪水などの厄災から人々を守るという。
交合する蛇身の背後は塔のように見える。これは須弥山頂上の善見城である。何か立体曼荼羅のように見えなくもない。
この種の浮彫というか造形物を、日本では鏝絵と呼んでいる。当該ワット・クータオの浮彫の下地は何であろうか? モルタルか漆喰か知る由もないが、日本では鏝を使って漆喰で造形するが、この鏝絵職人は絶滅に向かっている。当地では新たに建立される寺院に多様されており、後継者はたくさん存在するようである。そういえば漆芸や竹芸職人が多々存在している。それらの伝統芸で生きていける世の中が、北タイに存在していることが嬉しい。
<了>